秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

読書

<桃栗三年、柿八年。柚子は九年で花が咲く> ~葉室麟『柚子の花咲く』を読む〜「われらは先生が丹精こめて育ててくださった柚子の花でございます」

葉室麟『柚子の花咲く』(ゆずのはなさく。朝日文庫版,2013)を読みました。柚子は九年で花が咲く。葉室麟の小説には珍しく、殺人事件の発生から始まる推理小説でもある。巻末の江上剛氏の「解説」を引用します。「主人公の筒井恭平のまっすぐな生き方が魅力で…

『山月庵茶会記』(葉室麟著)を読みました。~牀前月光を看る(李白) / 少年老い易く学成り難し(池塘春草の夢) / 色よりも香こそあはれ(古今集) / 百花春至為誰開(碧眼録) / 空蝉の世にも似たるか花桜(古今集) / 巨勢山のつらつら椿(万葉集) / 照りもせず曇りもはてぬ春の世の朧月夜(源氏物語)、、、

葉室麟の小説の書名は、私には抽象的・簡潔・華麗に思われますが、今回の書名『山月庵茶会記』(講談社,2015)は、具体的で字数も6字。葉室作品のもう一つの特徴は、小説の中に和歌や漢詩などの挿入が多いことでしょう。小説のストーリーの面白さだけでなく、…

葉室麟『峠しぐれ』 『春雷』『秋霜』を読む。「革命」をもって「王道」をまもる ~『孟子』の<湯武放伐>。経世済民、惻隠の情、忍びざるの心……。

葉室麟の『峠しぐれ』『春雷』『秋霜』 の3冊を読みました。これで計14冊を読んだことになります。今回の3冊も名作で、感動しました。『蜩之記』『潮鳴り』『春雷』『秋霜』の4冊は、豊後・羽根藩を舞台とする「羽根藩シリーズ」と呼ぶそうです。小説の内…

続・安岡章太郎『流離譚』。「安岡覚之助正義」(章太郎の曽祖父) の人物像と功績。

冠雪の庭木 (今日東京に雪が降りました。東北生まれの私(Atelier秀樹)は、「♪ 犬は喜び庭駆け回る...」心持ちです。急遽、写真を載せました。) 前号で、作家安岡章太郎の曽祖父「安岡覚之助正義」を取り上げ、戊辰戦争時に棚倉で一人で泣いていた少女を…

安岡章太郎『流離譚』を読む。主人公の一人で、戊辰戦争で板垣退助総督率いる「東山道先鋒迅衝隊」の軍監を務めた「安岡覚之助正義」(安岡章太郎の曽祖父)に注目。現地で少女を助けた人物は誰か?

<安岡章太郎> 安岡章太郎は有名な小説家なので知っているが、その作品はあまり読んだことはなかった。今回ちょっと調べたいことがあり、『流離譚』(上下二冊、講談社文芸文庫)を読んだ。 安岡章太郎(1920~2013)は、吉行淳之介、遠藤周作らと「第三の新…

葉室麟『蛍草』を読む。 月草の仮なる命にある人をいかに知りてか後も逢はむと言ふ(万葉集)

葉室麟『蛍草』(2012双葉社)を読みました。その美しい書名:蛍草(ほたるぐさ)に惹かれて。魅力的なのはきれいな書名だけではない、小説の内容も素晴らしい。風早家の女中「奈々」が主人公で、奥方「佐知」、嫡男「正助」、娘「とよ」、当主の「風早市之進」…

葉室麟『おもかげ橋』を読む。高田村、姿見橋=俤の橋=面影橋、於戸姫、南蔵院、氷川神社、太田道灌、山吹の里、高田馬場、堀部安兵衛の仇討ち、赤穂義士、穴八幡宮、流鏑馬

葉室麟『おもかげ橋』を読んだ。葉室氏の作品の特徴の一つが「美しい書名」にあることは以前にも書いた。『蜩ノ記』『さわらびの譜』『辛夷の花』『風のかたみ』『柚子の花咲く」『蛍草』『峠しぐれ』『橘花抄』『恋しぐれ』『風渡る』『陽炎の門』『霖雨』…

葉室麟『さわらびの譜』『辛夷の花』『風のかたみ』を読む

葉室麟氏は昨年12月23日に逝去された。悲報を知った直後から葉室氏の作品を読み始め、これまで乾山晩愁・いのちなりけり・秋月記・蜩ノ記・散り椿 の5冊を読み、さらに今回、さわらびの譜・辛夷の花・風のかたみ という美しい書名の最近作3冊を読みました…

葉室麟『散り椿』は名作ですね。映画化され、9月公開。岡田准一・西島秀俊の共演で!

前々号で葉室麟『蜩ノ記』の感動を書きました。さすがは直木賞受賞作品でした。今回取り上げる葉室麟『散り椿』は『蜩ノ記』の翌年に書かれたものですが、私はまたまた「感動しました」。どちらも甲乙つけがたい卓越した作品ですが、わたし的には『散り椿』…

葉室麟『蜩ノ記』(ひぐらしのき) を読んで感動しました!

本ブログ『秀樹杉松』2521,2522号 (17年12月) で、葉室麟『銀漢の賦』(松本清張賞)を取り上げ、その後『いのちなりけり』(直木賞候補)と『蜩ノ記』(直木賞受賞)を読みました。今回は、葉室氏が5度目でついに直木賞を受賞した『蜩ノ記』を取り上げます。私は…

白川悠紀『白河大戦争』を読む。待望の歴史小説、期待の大型新人。

昨年(2017)11月25日に『白河大戦争』(栄光出版社) が出版された。著者は白川悠紀氏。新聞広告に気づいてすぐに買って読んだ。しかし、昨年12月の私は連日のように坂めぐりに出かけ、その結果を写真付きでブログに投稿するのに「忙しく」、今やっとこの…

島内景二「 友情の味は、恋に似て」 ~葉室麟『銀漢の賦』の解説~

前号で葉室麟『銀漢の賦』をとりあげ、文春文庫版巻末の島内景二氏の「解説」の冒頭部分を紹介しました。この作品を感動の裡に読み終えた私ですが、とても感想など書けません。しかし、島内景二氏の名解説はまことに素晴らしく、どうしても紹介したいのです…

葉室麟氏の逝去を悼み、作品を読む

遅ればせながら読んで、感動しています。 / Atelier秀樹 ◉葉室麟氏の訃報に接しました。1951年生まれなのでまだまだお若い。ご冥福をお祈りします。実は私は人並みに本は読んでいるつもりですが、恥ずかしながら、葉室氏の作品を1冊も読んでいませんでした…

作家・佐伯一麦と作品『二十六夜待ち」

映画化され、12月上映されるそうです。 / Atelier秀樹 Wikipediaによれば、佐伯一麦(さえきかずみ)は1951年宮城県生まれ、仙台一高卒。私小説の書き手として知られるそうですが、私は初めて知りました。歴史小説、時代小説愛好者の自分には手が届かなかっ…

 大川周明 『日本二千六百年史』 を読む (補遺No.2)

削除箇所の「全貌」を明らかにしました。/ Atelier秀樹 『日本二千六百年史』(大川周明著)が削除を余儀なくされた文章。上・下・補遺の3号にほぼ全部収めたつもりでしたが、遺漏があったので、この号に補遺No.2として収録します。これを含む4号で、削除箇…

大川周明 『日本二千六百年史』 を読む (補遺)

天皇と幕府に関する文章の削除が多いですね。 / Atelier秀樹 『日本二千六百年史』(大川周明著 )が削除を余儀なくされた箇所と文章。これは歴史的な資料価値があると思います。なるたけ「全容」が明らかになるよう、前2号(上・下)に本号を追加することにし…

 大川周明 『日本二千六百年史』 を読む(下)

「東亜新秩序の建設」「世界維新の実現」を訴えた / Atelier秀樹 <『日本二千六百年史』について> 戦前戦時を思想的にリードした本で、非常に難しい専門書であり、新書版で293ページという大著作である。数10万冊のベストセラーとなったそうだが、当時の国…

 大川周明 『日本二千六百年史』 を読む (上)

一緒に裁判中の東条英機の頭を叩いた大川 / Atelier秀樹 戦争教育と平和教育の両方を受けた「戦争と国民学校を知る世代」です。先日の新聞広告で大川周明『日本二千六百年史』を見て、是非読んでみたく早速購入した。著者の名前は有名なので知っているが、正…

「日本プロ野球界に革命を!」~広岡達朗『広岡イズム』を読む

広岡さんを 巨人監督 &「副コミッショナー」にしたかったですね / Atelier秀樹 私の好きな監督は、三原脩・広岡達朗・落合博満・栗山英樹の4氏です。その広岡達郎氏が『広岡イズム』という本をつい先日出しました(ワニブックスPLUS新書)。サブタイトルは…

藤沢周平『風の果て』を読みました

軽輩の部屋住み次男坊から首席家老へ / Atelier秀樹 藤沢周平の小説に惚れ込んで、『用心棒日月抄』『孤剣ー用心棒日月抄』『刺客ー用心棒日月抄』『凶刃ー用心棒日月抄』『橋ものがたり』『本所しぐれ物語』『三谷清左衛門残日録』『蝉しぐれ』『秘太刀馬の…

藤沢周平『秘太刀 馬の骨』

6年前の家老暗殺事件に使われた 秘太刀「馬の骨」/ Atelier秀樹 藤沢周平の難しそうな書名『秘太刀馬の骨』(ひだち うまのほね)」を読みました。この小説もNHKテレビドラマ化されているので、作品の概略は、以下の「NHKアーカイブス」から引用させてもらいま…

藤沢周平『蝉しぐれ』

主人公は牧文四郎。幼なじみおふくとの悲恋も。 / Atelier秀樹 『三谷清左衛門残日録』に続いて、同じく海坂藩を舞台とする武家物語『蟬しぐれ』を読みました。残日録、蟬しぐれ、風の果て、など藤沢作品の書名が大好きです。今回は本文の文章の一部と、おな…

藤沢周平『三谷清左衛門残日録』

用人引退、隠居後の「新しい暮らしと習慣」 / Atelier秀樹 NHKで見た記憶があるので調べたら、1993年の金曜時代劇「清左衛門残日録」であることがわかり、主演の清左衛門役:仲代達矢の好演を思い出した。原作は藤沢周平『三谷清左衛門残日録』。先日図書館…

藤沢周平『本所しぐれ町物語』

架空の町「しぐれ町」の叙情 / Atelier秀樹 まずは専門家の解説を聞きます。→ …………………………………………………………………………………………………………… 『橋ものがたり』を書き終えてのち、10年近く経ってから、藤沢周平は『本所しぐれ町物語』の総題のもとに、ふたたび市井ものの短編連…

藤沢周平『橋ものがたり』

「橋」が出るシーンの文章を読む / Atelier秀樹 今年生誕90年、没後20年を迎えた藤沢周平を記念して、短編連作『橋ものがたり』から3編が映像化されるそうです。藤沢の短編連作については、『藤沢周平全集』(文藝春秋)第14巻収載の「下町叙情 解説 向 敏…

春夏秋冬、朝昼夜、雨風霧雲  ~藤沢周平作品の書名の特徴~

しぐれ、霧、風、たそがれ、冬、橋、・・・ / Atelier秀樹 藤沢周平の小説を読んでます。読み進むごとに、心爽やかになる。時代小説の作家だから当然、怖い書名もある。前号に紹介した、小生が真っ先に読んだ「用心棒日月抄」シリーズの書名は、刺客・孤刀・…

藤沢周平を読む

藤沢周平『用心棒日月抄』シリーズなど / Atelier秀樹 折にふれて明らかにしてきましたが、小生は時代小説・歴史小説が大好きで、その理由は「面白くて為になる」からです。先日ネットを開いたら、「おすすめの時代小説・歴史小説作家」として司馬遼太郎・池…

ノーベル賞作家カズオ・イシグロの『遠い山なみの光』を読む

「会話」と「薄明」 / Atelier秀樹 全く名前を知らなかったカズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞に輝いた。日本人が毎年期待して騒いでいる人ではなく、しかも日本出身のイギリス人が受賞したことを知り、「読んでみようかな」との気持ちになりかけていた。 …

「代官山蔦屋書店細見図」から

蔦屋重三郎「吉原細見」&「代官山蔦屋書店細見図」 / Atelier秀樹 「秀樹杉松」の前々号で、目黒~代官山ミニウォークを写真入りで取り上げました。その中で、コースの途中の「蔦屋書店」で、ノーベル賞作家カズオ・イシグロ氏の著作を入手したことを紹介し…

新進女流作家「三好昌子」の作品を読む

三好昌子『空蝉の夢』『縁見屋の娘』 /Atelier秀樹 『京の絵草紙屋 満天堂 空蝉の夢』 三好昌子 デビュー作がいきなり20万部突破!! 『このミス』大賞優秀賞『縁見屋の娘』の著者 最新刊 新聞広告欄に大きく出た。「このミス」ってどんな間違いか、どこの大学…