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宮部みゆき『この世の春』を読みました

                                                                   

「作家生活30周年記念作品」です      / Atelier秀樹

 

 宮部みゆきといえば、押しも押されもせぬ大女流作家。作品は多くの人に愛読され、数々の文学賞を受賞している。

→ オール讀物推理小説新人賞(1987)を皮切りに、日本推理サスペンス大賞・日本推理作家協会賞吉川英治文学新人賞山本周五郎賞日本SF大賞直木賞毎日出版文化賞特別賞・司馬遼太郎賞・芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)・吉川英治文学賞 etc.

 

 小生は、『本所深川ふしぎ草紙』『蒲生邸事件』『小暮写真館』『ソロモンの偽証』『ペテロの葬列』などの作品を夢中で読んだ。そして今回『この世の春』(上下巻、2017.8.30 新潮社刊)を熟読した。畏れ多くて読後感はとても書けないが、出版広告に「作家生活30周年記念作品」とあり、それにふさわしい内容の深い作品であることは間違いなく、一読に値する。

 

 この小説には、宮部さんへのインタビュー(別刷り栞)が載っているので、まだお読みなっていない方の参考までに、『この世の春』に関する部分を引用します。

(編集部)デビュー30周年記念作『この世の春』について伺います。この作品も時代小説ではありますが、やはり一筋縄ではいかない。舞台は江戸時代の、おそらく北関東のどこかだと思われる小藩。若き藩主がある騒動の結果、隠居させられるところから始まります。

宮部)一つ言えるのは、今回のラストはカタストロフではありません(笑)。『弧宿の人』で、一度それをやているので、同じことを二度やるのは嫌でした。なので今回は、ハッピーエンディングです。このことを週刊誌の連載担当や文芸担当の皆さんに申し上げた時、全員が「ええーっ」とのけぞった(笑)。

(編集部)主人公もヒロインも幸せになるという、普通の小説だったら当たり前の結末が、宮部作品にとっては「驚愕の結末」になるというのも、何やら趣深いですね。

宮部)先程も言いましたが、私はやっぱり、サブカル的な時代小説作家なんですよ。史実に基づいた普通の歴史小説を書けと言われても全然無理で、『この世の春』のような作品を書いている方が、ずっと楽しいんです。

  <註1>「本インタビューは「小説新潮」2017年6月号に掲載された内容を抜粋し、再編集したものです」との注記が末尾についてます。

 <註2> 小生はカタカナ語には超弱いので、ネットで確認しました。

 カタストロフ・・・劇や小説などの悲劇的な結末。

 サブカル=サブカルチャー・・・ある社会で支配的な文化の中で異なる行動をし、 しばしば独自の信条を持つ人々の独特な文化。

 

 「新潮社新刊案内 2017. 8」には、以下のように謳われています。自社出版物の宣伝文句かもしれないが、作品を完読した小生には違和感は全くありません。

 → 作家生活30年を飾る記念碑的長編小説

 →    21世紀最強のサイコ&ミステリー長編小説。 

 

                  (秀樹杉松 85巻/2424号) 2017.9.15