三好昌子『空蝉の夢』『縁見屋の娘』 /Atelier秀樹
『京の絵草紙屋 満天堂 空蝉の夢』 三好昌子
デビュー作がいきなり20万部突破!! 『このミス』大賞優秀賞『縁見屋の娘』の著者 最新刊
新聞広告欄に大きく出た。「このミス」ってどんな間違いか、どこの大学の美女かと一瞬思ったが、調べたら『このミステリーがすごい!』大賞のこと。2002年に宝島社、NEC、メモリーテックの3社が創設したノベル・コンテストなそうですが、略称『このミス!』大賞は全く知らなかった。
閑話休題。新聞広告の『京の絵草紙屋 満天堂 空蝉の夢』は、『京の縁結び 縁見屋の娘』で件の大賞優秀賞を受賞した三好昌子(みよしあきこ)さんの第2作である。舞台が京都であること、新人女流作家の作品であること、に注目して早速購読した。宝島社文庫で9月20日刊、まさに出たばかり。
三好昌子さんは、小説家としては全くの新人のようである。Wikipediaによれば、三好昌子(みよしまさこ、1958 - )は、日本の小説家、推理作家とある。だが、新聞広告では三好昌子(みよしあきこ)とあり、現物のカバーにも Akiko Miyoshi とある。当然アキコが正しいだろう。なお、ネット検索で出てくる第2回WOWWOWシナリオ大賞受賞(『蛇のひと』)の三好昌子氏は、経歴等から見て、同一人物のようである。
文庫本カバーの著者紹介欄には、1958年、岡山県生まれ。大阪府在住。嵯峨美術短期大学(現、京都嵯峨芸術大学短期大学部)洋画専攻科卒。第15回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞し、本作にてデビュー、とある。
『京の絵草紙屋 縁見屋 満天堂 空蝉の夢』(三好昌子第2作)
さて本来ならデビュー作(大賞優秀賞受賞作)の『縁見屋の娘』を先に読むべきかもしれないが、先に買った第2作の『空蝉の夢』をまず読みました。新刊のミステリーでもあり、文章化も苦手なので、私の読後感は省略し、現物のカバーに書かれている文章を引用します。
→ 侍としての名前と過去を捨て、京都で暮らす戯作者・月夜乃行馬(つきよのいくま)。懇意にする板元の満天堂書林で京都の名所図会を執筆する行馬は、女絵師の冬芽(とうが)が描く、哀しき想いを秘めた美しい絵に惹かれて行く。(以下略)
文章読んだだけでも、とても新人とは思えない。1958年生まれというから59歳の働き盛り。これからもどんどん書いてもらいたい。待望の大型女流作家の出現だ!
『京の絵草紙屋 縁見屋 満天堂 空蝉の夢』(三好昌子デビュー作/大賞優秀賞)
さて次は『このミス!』大賞の優秀賞をもらった『京の絵草紙屋 満天堂 空蝉の夢』であるが、巻末に「圧倒的な筆力で胸を打つ時代伝奇スペクタル」と題する解説(宇田川拓也ときわ書房本店員執筆)が載っているので、一部引用します。
→京都が舞台の人情時代小説に伝奇スペクタルを融合させた本作は、端的にいうと、ミステリー愛好者をうならせるよりも、より広範の読者に暖かく響く訴求力こそが最大の美点と言える。つまり、大賞を射止められなかったのはミステリー新人賞に投じられてしまったがためであり、それでも優秀賞を獲得できたのはミステリーかどうかなど二の次と思わせてしまうほどの出来が “優秀”だったからにほかならない。
→最終選考委員の選評を一部引くと、大森望氏は「ストーリーテリング、キャラクター、文章力は申し分ない。(略)荒木則雄氏は「小説的な完成度は今応募作中、随一であった。登場人物一人ひとりへの目配り、展開の説得力、伏線の見事な回収、活き活きとした会話 ー どれを取っても文句の、つけようがない」と賛辞を惜しまない。(略)恐々としつつも、作家・三好昌子の活躍を楽しみに見守りたいと思う。
私の読後感もこの<解説>に同感です。そこで紹介されている、最終選考委員の選評・賛辞にも全く共感します。
(秀樹杉松 85巻2429号)2017.9.23