秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

葉室麟『大獄 西郷青嵐賦』を読む。維新前夜の西郷吉之助(隆盛)、いま必読の歴史小説。

 

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            葉室 麟大獄 西郷青嵐賦』(文藝春秋 2017)

 

名作を次々に発表した葉室麟(1951-2017)は、昨年暮れの2017年12月23日に逝去されました。訃報に接した私は、直後から今日まで図書館から貸し出して既に35冊以上を読み、幾つかについてはこの『秀樹杉松』で取り上げました。3カ月で35冊読んだことに、自分でも驚いています。しかも、全部が長編でした。それだけ私は感動し、感銘を受けたのです。

 

 『大獄 西郷青嵐賦』は、葉室氏が亡くなった前月の11月15日の発行となっている。初出は「文藝春秋」2016年1月号~2017年6月号。つまり、この小説の出版日から38日後に死去されたので、遺作の一つと言って構わない。厳密な意味での「遺作」がどれなのかは不明だが、私は以下に掲げる作品がいわば「遺作グループ」だと考えます。

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黒龍賦、風のかたみ、潮騒はるか、嵯峨野花譜、大獄 西郷青嵐賦、天翔ける(2017年刊行)

玄鳥去りて、雨と詩人と落花と(2018年刊行)

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 物理的には2018年発行の2作が遺作とされるかも。だが私は、歴史小説作家・葉室麟の大作としては、没年発行の「大獄 西郷青嵐賦」と「天翔ける」に注目したい。「天翔ける」は先月2月27日に区立図書館に予約を入れた。今ネットで調べたら、予約から18日経っているのに、私の予約順位は31人となっています。区立図書館として12冊所蔵でこうですから、いつ読めるか分かりません。

 そんな状態なので、「大獄 西郷青嵐賦」は書店で購入し、今読み終わったところです。西郷隆盛を主人公とした歴史小説なので、なるたけ早く読みたかったから。

 西郷隆盛を知らない人はいないでしょうし、今年の大河ドラマでもあるので、この本の内容には触れません。一つだけ書くと、西郷吉之助(隆盛)と大久保一蔵(利通)との微妙な関係が、よく描かれているように感じました。未読の方は葉室麟『大獄 西郷青嵐賦』をぜひお読みください。

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<表紙の「帯」から>

 「この国の運命を切り開くのだ」。西郷隆盛は、薩摩藩主・島津斉彬の命を受け、東奔西走する。島津成彬は、尊王攘夷派の総本山である水戸藩主の実子・一橋慶喜を将軍に擁立して、国難に備えようとした。一方、井伊直弼らは紀州藩主・徳川慶福を擁して対抗する。条約勅許問題が浮上、幕府と朝廷の対立が激化するなか、井伊は尊王攘夷派への過酷な弾圧(安政の大獄を始める。斉彬は志半ばで死去し、西郷は生きる望みを失う.......。

 「ひとはこの世に何かをなそうと生まれてくる。どんな小さなことでも己がなさねばならんことが必ずあるとじゃ。この世の中はほっとけば、どんどん暗くなる。たとえ命を失おうとも燈明になる者がおらんといけんのじゃなかろうか」

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               『秀樹杉松』92巻2570号 18-3-17  # blog < hideki-sansho > 210

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