秀樹杉松

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「火眼」「鳴動」 /『チンギス紀』一、二 (北方謙三著)を読む。壮大な歴史長編の開幕!

 

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   北方謙三『チンギス紀』(一) 火眼、(二) 鳴動

            集英社 2018年5月30日 刊 

 

 2週間ばかり前 (8/7) のブログ『秀樹杉松』で、北方謙三著『チンギス紀』(一)「火眼」を読んだことを書きました。

 もっとも内容は、幼児の頃「あ、モーコが来たぞ!」=「アモコ!」は、泣く子を黙らせるキーワードであり、「モーコ(蒙古)」は怖いものの象徴語であった。学校に上がってからは「日本は蒙古襲来を二度も受けた」「蒙古は恐ろしく強い」「だが“神風”が吹いて蒙古を逐い払った」、などの想い出を紹介しました。そして「蒙古襲来」「元寇」について紹介しました。

 

 坂めぐりで捗らなかった第二巻「鳴動」もやっと読み終えたので、2冊分まとめて少し内容の紹介をすることにします。北方謙三ファンはさておき、一般の人で未読の方には一読をお薦めいたします。これまでの『水滸伝』(全19巻)、『楊令伝』(全15巻)、『岳飛』(全17巻)に照らしても、この新シリーズも長編になるはずですから。 /Atelier秀樹

 

 先ずは、出版社(集英社)が販売宣伝用に作成した、現物のカバーの「帯」の惹句にはこうあります。

 

 →  一、 火眼(かがん)

 壮大な歴史長編、開幕! 

 ユーラシア大陸に拡がる大帝国の礎を築いた英雄チンギス・カン。大草原の小さな氏族に生まれた男は、初めに何を見たのか? 世界を一変させた激動の生涯、すべてはここから始まった――。

 父を討たれたテムジン(のちのチンギス・カンは、独り南を目指す――。

 テムジンの父イェスゲイは、モンゴル族キャト氏の長であり、モンゴルをひとつにまとめるはずだったが、不意をつかれたタタル族に殺害されてしまう。その時テムジンはわずか10歳だった。モンゴルの主導権をめぐって同族のタイチウト氏が台頭し、弱体化したキャト氏に敵対するようになる。ある事情から異母弟を討ったテムジンは独り、タイチウト氏を避けていったん南の地へむかうのだが――。

 

 →  二、鳴動(めいどう)

 大草原に掲ぐ、白きテムジンの旗

 南へと逃れたテムジンは 人と書に出会い、ついに父祖の地へ。長として、モンゴル族キャト氏の再興を図るため、少数の有能な麾下を率い、危地の草原を疾駆す――。

 父の地に戻ったテムジンは、命を狙うタイチウト氏と対峙する――。

 同じモンゴル族のタイチウト氏がテムジンを狙っていた。それを知りつつ父祖の地に戻ったテムジンは旗を掲げ、旅先で出会ったボオルチュ、槍の名人ジェルメ、弟のカサルらを連れて草原を疾駆する。父の死で弱体化したキャト氏の威を示し、モンゴル族を一つにするために、一方、モンゴル族ジャンダラン氏の長の息子ジャムカも、その名声を高めつつあった。怒涛の展開が続く第二巻。

 

<編注>

 1)大長編をうかがわせる登場人物の多彩。既刊の2巻だけでも、テムジンの父イェスゲイ・母ホエルン・妻ボルテの他に、長男テムジン(後のチンギス・カンとテムジンの弟が、次子・三子・四子・末子、異母弟の6人いる。この他、テムジン家に代々仕える老家臣、槍の達人、弓の達人、百人隊長、南へ向かったテムジンと出会い麾下となった人物、鍛冶など。モンゴル族キャト氏とその麾下だけでも、一・二巻で既に19人が登場している。覚えるのが大変です。

 

 2)この他、モンゴル族タイチウト氏と麾下が、タルグダイトドエン・ギルテなど11人、同じくモンゴル族ジャンダラン氏と麾下が、ジャムカなど6人、登場します。これらモンゴル族とは別に周辺のメルキト族のトクトアなど6人、ケレイト王国のトオリル・カンなど4人が登場し、その他の領域からも蕭源基、山師など、複雑な人物構成です。

 

 3)この他、巻頭の「関係地図」には、いくつかの氏族や王国が載っています。おそらくテムジンがキャト氏を再興し、中心になってモンゴル族を一つにまとめ、さらに周辺の諸族や王国も巻き込んで大帝国が作られることになるでしょう。これからの展開が楽しみです。なお、第三巻は10月発売予定。

 

 4)「坂めぐり」などで随分と時間がかかりましたが、『チンギス記』一、二の読了にやっとこぎつけました。著者北方謙三氏の筆運び、壮大勇壮な物語展開にも慣れ、独特の表現や描写は第一級であることを確認しました。そして、歴史長編はこういう形で書き進められるんだなとの得心も。これ以上内容に立ち入るのは適当ではないので、この辺で筆を擱きます。

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『秀樹杉松』96巻2654号 2018-8-20  /  hideki-sansho.hatenablog.com #294

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