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橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!』を読む(6) 「東京で沖縄問題を考えよう」

 

 今は橋下徹『』沖縄問題、解決策はこれだ!」(6) 「東京で沖縄問題を考えよう」です。

 その前に、ちょっと弁解させてください。前号で私は、1951年(昭和26年)の平和条約と安保条約の締結に関して、私などは、「独立できてよかった」と思った程度で、沖縄問題には無関心でしたと書きましたが、不正確でしたので補足しす。

 当時私は中学生でしたが、政治問題には関心を持っていました。「単独講和」か「全面講和」かで、国内はもとより国際的にも紛糾していたのを思い出しました。ソ連や中国などを除外して、対日講和条約(当時はそう呼んでました)を結び、日米安保条約を結ぶのは将来に禍根を残す、と野党などが叫んでいたのです。当時の私にはよく分からなかったのですが、いまにして思えば、沖縄を日本から切り離して米軍基地にする、ということも含まれていたわけですね。/ Atelier秀樹

 

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(橋下氏の著書に入ります)

 こうして、沖縄問題の中心である基地負担の軽減をどうするかという課題を、沖縄は抱え続けて今にいたっています。それに対して日本政府は、抜本的な解決策を示せているかといえば、そうとは言えません。もちろん沖縄の基地負担軽減のために、日本政府が何もやってこなかったわけではありませんが。

 例えば、2006年(平成18年)5月1日に公表され「再編実現のための日米のロードマップ」はその一つでしょう。日米両国政府が発表したこの計画は、在日米軍自衛隊の再編計画ですが、米軍だけでなく自衛隊の部隊・基地も再編し、両者の連携を高めようという試み(.....)は、日米の防衛協力の向上に資するものでしう……ゆえに、沖縄の基地負担軽減は一定進んでいるとも言えます。

 

 しかしながら、このロードマップの柱である普天間基地辺野古移設に関しては、常に激しく政治問題化し、沖縄県内の選挙においては賛成、反対が激しくぶつかり合い、賛成派の勝利、反対派の勝利が入れ替わります。基地問題の中核部分の解決が全く見通せません。そんな中で、今回と前回の2回にわたる沖縄県知事背選挙では、反対派が勝利しました。

 

 もちろん民主政治において、ある政治の案について住民が100%賛成となることはありません。賛否が割れる案について、とりあえず前に進めるための手法が多数決、すなわち選挙です。

 現在の日本政府の考えは「米軍基地問題は日本全体の安全保障にかかわる中核的な国政課題であり、地方の課題ではない。故に国政選挙の結果で判断すべきもので、地方の首長選挙によって左右されるものではない。そうであれば、普天間基地辺野古移設の方針を掲げる現政権が、幾度となく国政選挙で勝利している以上、この方針を進めていくことに問題はない。沖縄県知事選挙では反対派の方が多いことが示されたが、日本全体ではそうではない」というものでしょう。

 

 しかし、これまで述べてきたような、沖縄の歴史や沖縄戦そして沖縄の基地問題の経緯を振り返れば、沖縄県知事選挙における沖縄県民の意思を全く無視するわけにはいかないでしょう。これが沖縄県以外の基地問題であれば、国政選挙の結果を基に進めることができるかもしれません。

 

 でも、ここで思い出して欲しいのは、大田實司令官の辞世の電報

「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」なんです。このメッセージを思い起こせば、今回の沖縄県知事選挙の結果を受けて、日本政府は辺野古移設についていったん立ち止まらなければならないし、それこそ普段から「戦争で散った先人に尊崇の念を表すべき」といって威勢よく靖国参拝を叫んでいる自民党国会議員は、この大田司令官のメッセージを重く受け止めなければならない。

 

 繰り返しますが、沖縄県民全員を100%納得させることは不可能です。しかし、現在の納得度をさらに上げることはできるし、そこに政治的エネルギーを注ぎ込み、死に物狂いでその努力をすることが、今の政権や日本政府、そして本土の国会議員に求められていることだと思います。それこそが「県民ニ対シ後世特別ノ御高配」ではないでしょうか。しかし今の日本政府や本土の国会議員は、大田實司令官のこの辞世の電報を知らないのか、反応が薄い。

 

 そうであれば、沖縄県知事を筆頭に、沖縄の政治家や沖縄県民は、日本政府や本土の国会議員相手に政治的なケンカをしかけて、沖縄の主張を政治的に押し通していくしかない

 沖縄県知事選挙は、あくまでも沖縄県内での政治決戦です。この選挙結果が日本政府や国会にある程度の影響を与えることはあっても、沖縄の主張を押し通すまでの政治的エネルギーは持っていない。現に安倍晋三政権は、粛々と辺野古移設の工事を進めています。

 

 本土にある日本政府や国会を動かすにためには、その政治決戦の舞台を県内の知事選挙から、東京の政治の場に移さなければならない

 そうなんです。沖縄は、東京で政治的なケンカをするべきなんです。東京での政治的ケンカと言っても、これはもちろん、昔の戦争のように沖縄県知事や沖縄の政治家が、東京に殴り込んでいくという話ではありません。東京の政治の舞台で、沖縄問題がしっかりと取り上げられるようにして、日本政府や国会が、今の沖縄県民の納得度をさらに引き上げる努力をせざるを得ない状況を作っていく、何らかの抜本的解決策を講じなければならないような状況を作っていく。これが、東京での政治的ケンカの意味です。

 

 今のままでは、日本政府は法的な手続きをとりながら、粛々と辺野古移設の工事を進めていくでしょう。翁長雄志沖縄県知事も日本政府に対して必死に抵抗していましたが、法治国家である日本にあっては、法の力を止めることはなかなかできません。法の力に対抗するためには、それは政治の力しかありません。法を作る大元が政治ですからね。コメンテーターや学者やインテリたちがよく言う「話し合いでの解決」などはクソの役にも立たない。この場合には、政治的なケンカで勝負するしかないんです。民主主義のルールの中での「戦」ですよ

 

 この「戦」に勝つためには「沖縄県知事選挙の結果を尊重せよ!」「沖縄県民の声を聞け!」「沖縄のことを考えろ!」と声を発するだけではダメなんです。これだと、保守を自称する威勢のいい国会議員が「竹島を返せ!」「北方領土を返せ!」と叫ぶだけで、何の解決もできなかった無能さと同じになってしまいます。 

 

『秀樹杉松』103巻2794号 2019.1.29/ hideki-sansho.hatenablog.com #434