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橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!』を読む(9) 国際都市形成構想、沖縄を東洋一の観光リゾートに

 

 前号では第3章「沖縄ビジョンX」項目だけを列記しましたが、少し内容を紹介します。なにせ長大な著書ですので、思い切って短縮・省略します。 / Atelier秀樹

 

⚫︎残念だった1996年沖縄「国際都市形成構想」

 沖縄県が1996年に正式な将来計画として具体化した沖縄「国際都市形成構想」は、ビジョンXになりうるものでした。これは、大田昌秀沖縄県元知事が打ち出した「国際都市形成構想―21世紀のグランドデザイン」を具体化したものですが、太田さんが知事選に敗れ、その後推進されなくなってしまいました。しかし、この構想の不十分なところをさらにブラッシュアップし、実行していくことこそが、沖縄の潜在的な力を引き出し、沖縄を活性化することにつながると確信しています。それくらい、この構想は独自の可能性を秘めているのです。

 

 1995年9月米兵3名が12歳の小学生を拉致強姦する、という忌まわしい「沖縄米兵少女暴行事件」が起きました。同年11月大田知事は当時の村山首相と会談し、「国際都市形成構想」の枠組みと、その前提としての「基地返還アクションプログラム」を明確に提示したのです。このアクションプログラムとは、計画的、段階的な米軍基地の撤去を求める計画です。日本政府・米国政府はこれを飲まざるを得なくなったのです。

 

 県から正式に発表されたこの構想は、島ぐるみ運動という沖縄県民の政治力を背景に国に要求した計画であるという点で、これまでの抽象的理念的な沖縄の都市自立構想とはひと味もふた味も違う、具体的なものとなっていました。とりわけ、地域活性化計画として経済政策が中心に据えられ、以下のような、まさに一国二制度と言っていいような規制緩和や経済制度の特例を中心に展開しようとしたことは、特筆すべき点でしょう。

 

 1 自由貿易地域制度の拡充・強化

 2 税制上の優遇措置

 3 運輸関係の規制緩和等の推進

 4 入国手続きの簡素・合理化

 

 「国際都市形成構想」は、人・モノ・カネの流れが国境を越えて拡大化していくグローバリズムが今ほど叫ばれていなかった時代に、グローバリズムを先取りした先見の明があります。そしてその根底には、沖縄の自立への強い思いがあります。

<編注>これから本格的展開になるのですが、長くなるので、残念ですが以下は省略します。以後、こんな感じで超短くします。ご了承ください。

 

⚫︎沖縄を東洋一の観光リゾートにする

 いま、お蔵入りとなってしまっている沖縄「国際都市形成構想」の中に、「東洋一の観光リゾート」という柱をしっかり位置づけると、沖縄県庁の優秀な役人集団はフル稼働して、政策・制度を具体的に練り上げていくでしょう。そして官民一体の動きも次々と生まれてくるでしょう。沖縄の特徴を前面に打ち出し、ナンバーワン、オンリーワンを目指していくこれこそが沖縄ビジョンXです。

 

 先ほども述べましたが、観光客の消費額というのはバカにならないんです。その地域の経済活性化にダイレクトに繋がるんです。沖縄県は、外国人観光客だけでなく、本土の日本人観光客も呼び寄せることをターゲットにしたほうがいい。日本人ですら、沖縄には独特のお空気感を感じますからね。

 

 2017年は沖縄にやってきた国内外の観光客が1000万人近くにのぼり、ついにハワイの観光客を超えたとの報道がありました。あのハワイよりも、沖縄の方が観光客を集めているんですよ! もちろん沖縄を訪れる観光客は、ハワイの観光客よりも滞在日数は少ないし、消費額も少ないということですが、そこは数でカバーするなり、滞在日数や消費額を増やすなりの政策を打ち込めばいいのです。これこそが、ビジョンXに基づく政策フル動員です。

 

 このような政策で有効なのは税制です。税減税や免税政策ですね。この減税策、免税策は「国際都市形成構想」にも掲げられていましたが、それは沖縄を自由貿易地域にすることを目標としていたもので、東洋一の観光リゾートを目標とするものではありませんでした。

 

 自由貿易地域を実現するための減税策、免税策を実行すればいいことですが、それよりも東洋一の観光リゾートを実現するための減税策、免税策を強烈に打ち出すべきです。詳細な制度設計は役人に任せればいいですが、やはり消費税の減税・免税政策は観光リゾート地として成功させるには必須の政策でしょう。観光リゾート地は、観光客の消費がすべてです。ゆえに消費を促すためには、消費税の減税・免税政策は外せません。(以下詳細は割愛)

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『秀樹杉松』103巻2799号 2019.2.1/ hideki-sansho.hatenablog.com #439