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橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ! これで沖縄は再生する』を読む(13)  第3章 沖縄ビジョンX

 

 沖縄問題の解決、沖縄の再生にかける橋下徹氏の熱い提案に耳を傾けましょう。 /  Atelier秀樹

 

10. 東洋一の観光リゾート地に重要なのは「空気感」

 

 もちろん、普天間基地跡地にIRを誘致したり、南北鉄道を敷設したりするだけで、一気に沖縄が東洋一の観光リゾートになるわけではないでしょう。それらが起爆剤となることは間違いありませんが、しかし観光リゾートとして最も重要な要素は、雰囲気というか、全体の空気感というか、その空間で直感的に感じるものなんですよね。これ、言葉では表現しにくいんです。(大阪府知事時代の経験、省略)

 

 やっぱりこのような街の空気感というのがほんとに重要ですよね。パリならパリ、ロンドンならロンドン、ローマならローマの空気感がある。ヴェネツィアなんて空気感の塊のような街ですよね。沖縄が東洋一の観光リゾートになるというのであれば、沖縄の空気感を前面に押し出していかなければならない。これを醸成するのは本当難しいんですが、ここが勝負どころです。空気感とは街の雰囲気です。そしてその重要な要素は、やっぱり「景観」ですよね。

 

 北谷(ちゃたん)や天久(あめく)の危機返還跡地がありきたりの商業地やショッピングモールになってしまっていませんか? 沖縄の人にとっては便利な施設かもしれませんが、沖縄の人たちが、あそこに沖縄の空気感を感じることは少ないでしょう。これは沖縄の空気感を考えた開発になっていない証です。沖縄の残念なところは、街並みの景観、雰囲気、空気感が悪い。特に建物の雰囲気がですね。街並みというのは豪華絢爛でなくてもいいんです。古くても味わいがあれば、それが魅力的な空気感になります。

 

 沖縄の景観、建物の雰囲気。コンクリート製でもいいんですが、もう少し何とかならないでしょうか(笑)。沖縄の建物にそのままカラフルな色を塗るだけでも、チンクエ・テッレの空気感にそこそこ近づけそうです。沖縄も数千億円レベルのお金をかけて、東洋一の観光リゾートの空気感を出すべきです。これが沖縄ビジョンXの柱の一つです。

 

 北部、中部はリゾート地の雰囲気が満載ですが、もっと徹底してほしい。那覇中心部の牧志公設市場の界隈もいい雰囲気です。その裏の「やちむん通り」界隈なんてザ沖縄じゃないですか! もっともっと徹底して島全体に空気感を出してほしい。シンガポールなんて、島全体が空気感に満ちています。

 

経済活性化は、民間事業者に任せるのが肝だ

 

 沖縄ビジョンXは、大胆な一国二制度によって沖縄に特例を用いて、東洋一の観光リゾートにするというものです。もちろん国の補助金も活用します。しかしそれは、人・モノ・カネを沖縄の中で動かすことを目的とするもので、ハコモノ施設をつくることが目的ではありません。これまでの沖縄振興策は、公共工事をやることが目的となってしまい、いわゆるハコモノ行政が中心となっていたと思います。

 

 施設やインフラを作るにしても、人・モノ・カネを「動かす」ことを目的としなければなりません。そして人・モノ・カネを動かす主体は民間であって、行政の役割は民間が活動しやすくするための環境整備に徹することです。行政みずからが経済活動の主体になろうと思ってはなりません。IRについても、もちろん役所が運営するわけではありません。役所は、民間事業社がIRを運営するための環境整備、規制の制定、許認可の付与、ルール違反のチェックに徹するべきです。

 

 行政は民間の経済活動の環境、すなわち民間に儲けてもらうための環境を整えるところまでです。あとは民間に思いっきり経済活動をしてもらい、儲けてもらう。そして税を納めてもらい、その税でまた民間にも受けてもらうための環境を整えていけばよい。行政が環境を整えたら、あとはその環境をフルに活用してもらって、民間に頑張ってもらわなければなりません。これが経済政策の基本です。

 

 行政が鉄道インフラを整えたら、民間企業に魅力ある観光拠点を作ってもらい、この鉄道インフラをフルに活用してもらい、人を集めたり、人を動かしたりしてもらわなければなりません。行政がビザ緩和などで日本を訪れる外国人観光客全体の人数を増やしていけば、今度は各地域の民間企業がその外国人観光客を自分たちの地域に引き寄せるための努力をしてもらわなければなりません。そして市の外国人観光客を相手にガンガン商売をしてもらわなければなりません。そこは民間の力です。(大阪の経験、実績、省略)

 

補助金を切れば知恵が生まれる

 

 (商店街や銭湯に対する補助金の削減、関西国際空港への補助金をゼロにするよう財務省のお願い、伊丹空港の民営化、、、省略)

 

 商店街だって銭湯だって関空だって、補助金がなくなれば自分たちの知恵で創意工夫するしかありません。全国どこでも同じだと思いますが、商店街振興策といえば、年末の餅つき大会、夏の夜店、福引セールにカラオケ大会などの一過性のイベントへの補助金ばかりです。それも毎年同じイベント。そんなことで商店街は活性化するわけがありません。ほんと補助金って麻薬みたいなものです。これに一旦浸かってしまうと、もうあとは補助金の増額しか言わなくなります。補助金に頼らない民間経営が活性化の肝ですね。

 

『秀樹杉松』104巻2804号 2019.2.4/ hideki-sansho.hatenablog.com #444