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橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を読む(14)第3章 沖縄ビジョンX

 

 このシリーズは、注目の政治家・橋下徹氏の著書についての私の読書メモです。橋下徹氏の主張・提案に賛否両論があるでしょうが、熟読玩味が必要な「沖縄問題の解決、沖縄の再生策」だと確信しています。 / Atelier秀樹

 

沖縄の選挙結果を受けて僕は持論を変えた

 

辺野古移設反対の玉城氏、沖縄県知事に当選

 さる2018年9月30日、普天間基地辺野古移設に反対する玉城デニー氏が安倍晋三政権と与党自民党公明党が総力をあげて応援した佐喜真淳さんを破り、沖縄県知事選挙で初当選しました。玉木さんは、亡くなられた翁長雄志沖縄県知事沖縄県政を継承すると言っています。つまり、安倍政権の普天間基地辺野古移設方針に対して徹底的に争う決意のようです。

 

僕は、普天間基地の危険性除去のため、辺野古移設に賛成

 沖縄県のみなさんには申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいですけれど、僕は、普天間基地辺野古移設には賛成の立場です。とにかく普天間基地の危険性をあの地域から除去することと、基地跡地の活用策で沖縄を活性化させることのためにです。何事も第一歩を踏み出さないと次につながりませんから、辺野古移設を進める上で、さらなる沖縄の基地負担軽減策を検討する中で、将来の県外移設を考えていくというのが現実ではないか。

 

米軍基地と沖縄> 

 現在本土にも米軍基地はありますし、自衛隊基地や、自衛隊と米軍の共同利用基地を合わせると、本土にもそれなりの基地があります。GHQが日本を占領し、日本が独立を果たすまでの歴史的経緯や日米安保条約を前提とする限り、日本から米軍基地を完全になくすことはなかなか難しいでしょう。そうであれば、日本にどれくらいの米軍基地を置くべきなのか。そして、そのうちどれほどの基地を沖縄に置くべきなのか。沖縄だけの過重な負担を避けて、日本全体で公平に負担することを考えたとしても、地政学的観点、軍事的視点に立てば、沖縄が国際政治上の要衝の地として重視されることに変わりありません。

 

日本における米軍基地の在り方> 

 そのような見地を踏まえて、日本における米軍基地のあり方の最終ゴールをしっかり見据えなければなりません。米軍基地の縮小についても、米軍専用基地、自衛隊との共同利用基地、そして完全なる自衛隊基地への移行などさまざまなパターンを考えながら、日本における米軍基地の全体量を考えなければなりません。まさにこのようなことを考えて日本における米軍基地の在り方について結論を出すのが、国会議員の仕事だと思います。

 

最終ゴール> 

 そしてその最終ゴールに向けて、次に、実行プランを考える。細かく期限設定をしなければことは動きません。先に述べた2006年に策定された「在日米軍再編実施のための日米ロードマップ」は実行プランの一つですが、これに欠けているのは、日本における米軍基地の在り方の最終ゴールが示されていないことです。このロードマップは、沖縄の負担を軽減させる策として一定有効なものだと思うのですが、とりあえず的なもので、最終ゴールが示されていないが故に、沖縄のみなさんは十分に納得できない

 

辺野古移設は暫定的> 

 辺野古移設が最終ゴールではなく、暫定的なものであるということが明示されれば、最終ゴールに向けてまず辺野古移設という第一歩を踏み出すことに、沖縄の皆さんも、ある程度理解してくださるのではないでしょうか?

 

僕の持論

 そして、「このような日本の安全保障の根幹に関わる問題は、国政選挙で日本国民全体の意思を問うて決定していくものであって、地元の首長選挙で決めるものではない。沖縄県門の皆さんには大変申し訳ないですが、日本の安全保障のためには、沖縄に基地設置を認めてほしい」……これが以前の僕の持論でした。ただし、このように言えるのは、自分の家の近くに基地が設置されるわけではないからだ思います。無責任な言い分であることは承知の上での持論でした。

 

辺野古移設を強硬に進めることには反対

 ところが、前回の翁長雄志さんが当選した知事選に続いて、今回の知事選においても、普天間基地辺野古移設に反対である沖縄県民の意思が明確に示されました。国の安全保障政策が、地方の首長選挙の結果によって左右されることは避けなければなりませんが、しかし、米軍基地問題は、日本の国全体の安全保障政策の問題であるあるにもかかわらず、その現実的な不利益は地元のみに大きく覆いかぶさります。したがって地元の意思を完全に無視するわけにもいきません。僕は、普天間基地辺野古移設には賛成と言いましたけど、後で詳しく述べますが、辺野古移設を強硬に進めることに対しては反対の考えに至りました

 

選挙結果を重視、民主主義を尊重> 

 なぜなら、僕は選挙結果を重視するからです。選挙至上主義だと散々批判を受けましたけども、選挙を否定したら民主主義は成り立ちません。国民の教育レベルが高い成熟した民主国家においては、政治家や官僚などの一部のエリートが考えていることが絶対的に正しいというわけでは決してありません。最後は国民全体の判断に任せた方が落ち着くところは落ち着くし、何と言っても失敗した時に国民全体の納得感につながります。ゆえに複雑かつ困難な課題になればなるほど、どちらの選択肢を選ぶのかは、選挙などを通じて国民に任せそれに従うべきだと思います。

 

選挙結果の尊重こそが民主主義

 

 これだけ複雑化した現代社会において、何が正解かはわからないから、できる限り正解に近づけるようにプロセスを踏んでいく。このプロセスの一つが選挙だと思います。ゆえに選挙で出た結果は、一応正解であるものと位置づけ、次の選挙まではそれに従わなければ選挙の意味がありません。もし選挙結果をひっくり返したいのであれば、次の選挙できっちりとひっくり返さなければならない。これが民主主義の基本だと思います。選挙結果というものは、自分の望むもの望まないものにかかわらず、それを最大限尊重するというのが、民主主義のイロハのイなんです。

 

 では選挙結果にきちんと配慮する立場からは、今回の玉城さん勝利の選挙結果を受けて、普天間基地辺野古移設問題をどのように解決していくべきでしょうか安倍政権が沖縄県知事選は県政の方針を決めるべきであり、国政には関係ない」と、沖縄知事選挙の結果を無視して突っ走ることは控えるべきです。米軍基地などの安全保障政策は国政で決めるものという理屈は確かにその通りですが、二度の沖縄知事選挙の結果を完全に無視するわけにはいきません。この点、二階俊博幹事長は「沖縄県民の審判を厳粛に受け止める」とコメントしました。

 

 他方、僕は、普天間基地辺野古移設に執念を燃やしてきた官房長官の、沖縄基地問題への取り組みには賛成でした。菅官房長官は、メディアや自称インテリたちから強い批判を浴びても、沖縄県と法的に徹底的に争うことも辞さず、ルールに基づいて移設を進めてきました。それはとにかく普天間界隈の危険を取り除くことを第一に考えての政治的行動だったと思います。

 

 しかし、やはり沖縄県知事選挙の結果を受けて、ここは日本政府は一旦立ち止まるべきだと思います。ただしそのことは、普天間基地辺野古移設を直ちに諦めるということではありません。普天間基地辺野古移設問題はなぜこのようにいつも紛糾するのか。この根源的な原因を考えて、それに対する対応策を考えるべきだと思います。単純な辺野古YES、辺野古NOを超えて、沖縄問題の根本を解決すべき手法を考えるべきです。

 

『秀樹杉松』104巻2805号 2019.2.5/ hideki-sansho.hatenablog.com #445