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橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を読む(16)第3章 沖縄ビジョンX

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                 橋下 徹『沖縄問題、解決はこれだ!これで沖縄は再生する』
                    朝日出版社 2019年1 月刊

 

 橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を読む のブログ掲載は本号をもって終了とします。難しい政治問題を読んでいただき、ありがとうございました。重要な参考資料になることを願いつつ、擱筆します。

 橋下さん、(全く面識はございませんが) ご著書を勝手にブログに引用したことをお許しください。おかげさまでいろいろ勉強しました。そして、私の読書メモをブログに投稿したのは、少しでも多くの人に橋下さんの名著を知ってほしいとの気持ちからで、他意はございません。今後のご活躍を期待しています。 / Atelier秀樹

 

 

手続法は基地を含む「NIMBY」問題を解決する切り札にもなる

 

 沖縄県以外の本土の国会議員をとことん悩まさなければなりません。脳みそから血の汗をかいてもらわまければなりません。沖縄県民は日々苦悩を強いられているのだから、本土の国会議員に能天気に「日本のためには沖縄に基地を設置すべきだ!」と語らせてはなりません。

 

 沖縄県民の声をどこまで重視すべきか。その度合いによっては、自分の地元にも米軍基地が設置されるリスクを国会議員に背負わせて、米軍設置手続き法における地元住民の声の扱いを決めさせるのです。沖縄県民の声を軽視して沖縄に押しつけるのであれば、自分の地元住民の声も同等に軽視され、自分の地元にも沖縄と同等に米軍基地を押し付けられる可能性が出てくる。

 

 逆に、自分の地元住民の声を重視して、自分の地元は米軍基地の設置を拒否するのであれば、沖縄県民の声も地元住民と同等に重視して、沖縄でも米軍基地の設置を拒否することを認めなければならなくなる。この手続法の考え方は、非常に応用が利きます。すなわち社会的には必要だが自分の地元には来てほしくないニンビー(NIMBY: Not In My Back Yard)施設の設置問題の解決に非常に有効です。(詳細略)

 

 このような手続き法がなければ、いつまでたっても、沖縄における県知事選や市町村長選挙によって、日本の国策である安全保障政策が止まってしまいます。基地反対派の主張が当選するたびに、沖縄県民の声を聞け!」というフレーズが永久に飛び交うでしょう。だからといって、地元沖縄の声を全く無視していいわけではありません。だからこそ、地元の声をどこまで聞くかについて、沖縄県民と本土の都道府県民が同じ立場、同じリスクを背負う「米軍基地設置手続き法」の制定が必要になるのです。

 

 先の大戦では、日本の本土を守るためという大義名分で沖縄は捨て石にされたんです。沖縄での本土決戦において県民が犠牲になった悲惨、壮絶な事実は筆舌に尽くしがたい。沖縄選で自決した大田司令官が残した「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜コトヲ」という言葉を胸に刻んで、国会議員には米軍設置手続き法をしっかりと定めてもらいたいのです。これこそはが僕が提案する沖縄問題解決の切り札であり、沖縄ビジョンXの最も重要な柱です。

 

日米地位協定」改定以前に改革しなければならないこと

 

 沖縄問題、基地問題には、米兵が引き起こす犯罪問題も含まれますね。これは本当に腹が立ちます。ここでお大きな問題は米兵の犯罪について、日本の警察権、裁判権が及ばない場合があるということです。これは日本人にとって屈辱的なことですね。これがに地名地位協定問題の大きな柱の一つです。

 

 現在、米兵が日本の女性に対して性的暴行を加えても、日本政府や政治家、そしてメディアは皆、口で抗議するばっかりです。僕は政治家になってから米軍基地を視察した際、米軍の司令官に、米兵の婦女暴行問題について詰問したんです(詳細略)。日本の政治家もメディアも、この日米地位協定の不平等を正せ!と威勢よく言うんです。しかし日米地位協定の改定を本気で行うためのプロセスを全く考えていない。いつもの「口だけ」なんです。本気で改定しようとするならなぜこれまで改定できなかったのか、ここの根本理由とそれへの対応策を検討しなければならないんです。

 

 日本の刑事司法制度アメリカの視点で見ると、アメリカに比べて人権保障、被疑者・被告人の権利の保障が弱いと映るんですよね。アメリカの捜査機関は、日本の捜査機関のような被疑者の取り調べはできません、録音・録画が行われるか、弁護士の立会いの下で行われるかして、被疑者取り調べの可視化が進んでいます。日本では被疑者を長期間拘束し、密室で取り調べが行われ、自白させようとします。これは人質司法なんて批判されていますが、アメリカでは考えられない人権侵害的取り調べなんです。

 

 日米地位協定を本気で改定し、米軍・米兵に対して、より日本の警察権、日本の裁判権を及ぼしていきたいと思うなら、まずは自分たちの刑事司法制度を国際標準にしていく必要があります。少なくてもアメリカと同じくらいの被疑者・被告人の権利保障をしなければなりません。日本国内の感覚・視点で刑事司法制度を考えてしまうと、国際的な日米地位協定問題を解決することができなくなってシマノです。今の日本は、まだまだ国内的な感覚・視点のみで刑事司法制度を議論してしまっていますね。

 

 日米地位協定のもう一つの問題は、日本政府や各自治体の行政権が米軍にまったく及ばないということです。米軍基地への立ち入りもできませんし、米軍の訓練にも何も口を出せません。米軍の航空機やヘリコプターが事故を起こしても、日本政府は抗議をするだけです。事故機についても機密事項ということで日本政府に十分な報告はありません。

 

 最近、日米地位協定の問題点がクローズアップされてから、日米地位協定の内容と、他国とアメリカの間における地位協定の内容との比較が行われ始めました。特に、日本と同じ敗戦国であるドイツアメリカ間の地位協定イタリアアメリカ間の地位許定との比較です。一般的に言われているのは、ドイツやイタリアは、米軍基地の管理権を持っているということです。訓練についても口を出せるらしい。本気で地位協定の改定を目指すのであれば、なぜドイツ、イタリアに比べて日本は不利な地位に立たされているのか、そしてアメリカはなんて言ってくるのかを考えなければなりません。

 

 おそらくアメリカからすると、「ドイツ、イタリアに対するのと比べて、アメリカは日本に対して全面的な安全保障を担っているではないか」という意識があるだろうと想像できます。歴史的経緯を見ても、敗戦後の占領期からサンフランシスコ平和条約が締結されて日本が独立を回復する過程において、日本における米軍基地の将来のあり方は、アメリカ政府にとって最も重要なテーマでした。日本における米軍基地は、歴史的にも地政学的にも完全にアメリカの自由にしておかなければならないという強い意識を持っているのでしょう。(以下大幅に省略します)

 

 日米地位協定を改定するために、まず日本がやらなければならないことにしっかり取り組むことも沖縄ビジョンXの柱の一つです。口だけで日米地位協定の改定を叫ぶことは最もダメなことです。

 

<編注>

 橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を読む  第3章「沖縄ビジョンX」は、以上の(9)~(16)の8回、①~⑱の18項目で終わりにします。なお、最終の第4章「沖縄ビジョンXを実現するためのケンカ道」は、スペースの関係等から全面割愛させていただきますので、ご了承ください。

 

『秀樹杉松』104巻2807号 2019.2.6/ hideki-sansho.hatenablog.com #447