秀樹杉松

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谷戸川

      

                                        親川記: 東京の川歩き (31)  谷戸

                       歩いた日:2013年6月23日       /  Atelier秀樹

 

 

 三回に及んだ「呑川歩記」執筆もやっと終えた翌日、きょう6月23日(日)は世田谷区内を流れる「谷戸川」を歩いてきた。今日は東京都議選挙の投票日。朝のうちに投票を済ませ、その足で小田急線の千歳船橋へ。今日いちばんの関心事は、谷戸川の水源をめぐる探査である。

 下調べは済んでいる。地図の上では、砧6丁目の山野小学校小田急線の南側に隣接する城山通)付近から水流が始まり、その上流(小田急線の北側)は暗渠になっている。蓋が被さっているので谷戸川の暗渠部分だと分かる所もあるようだが、水源が何処かは未確定。ネットで調べると、水源を探査すべく何人かの人が現場を歩き、写真ものっている。大方の判断では水源はどうやら、千歳台3丁目の環八通の西側にある成城警察署付近ではないか。有志のブログを見ると、其処からの流路と思われる写真を付した説明があるが、人によって若干の相違もある。ともかく現地に行って見ないことには。

 

 

 という次第で、あらかじめ地図にペンタッチで印をつけた順に歩いて見ることになった。まず、千歳通・環八・荒玉水道道路の交差する歩道橋を渡って成城署へ。辺りを歩いてみたがさっぱり分からない。ウロウロしてると警官に怪しまれるので、思い切って玄関に立っているお巡りさんに事情を話した。谷戸川」の名前すら聞いたことがないようだ。外勤から帰ってきた警官2名に訊いても全く知らない。「ここが水源だといわれているので、何かあるかも知れないのでちょっと見せてほしい」。

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 若い頃は警官(ポリ公)は“人民の敵”みたいに思ったりしたこともあったが、3人とも物わかりのいい好漢であった。というわけで許しを得て警察署庁舎の空き地(草木が植えてある)を覗くと、大きな下水の蓋が見つかった。その下が谷戸川の水源の可能性もあるのでパチリ。撮ってきた写真をよく見ると、蓋の表面には「防火水槽」と書かれている。下に暗渠の川があってもおかしくない。空き地全体が何となくそんな雰囲気。しかしそれ以上の詮索は、何せ警察署構内でもあるので無理と判断。帰ろうとしたら例の「世田谷一家殺人事件」の情報提供お願いの立て看板と、犯人はこんな服装という大きな掲示が出ている。なるほど、此処はもしかして事件捜査の管轄署?

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 成城署付近を水源だとして、暗渠道らしき道筋を探すことになったが、もちろん矢鱈めったら手当たり次第に歩くのではなく、先輩たちのブログ情報を頼りにした探し歩き。環八を渡ったり戻ったり、一々歩道橋を渡るので楽でない。ともかく、それらしき所、道路をパチリパチリ。環八東側(桜丘5丁目)にある水道局営業所まで来ると、間違いなく暗渠の上の蓋の上を歩いているような手応え。それに続く空き地は農園みたいな感じで、植物(栗の木もある)がいっぱい。何となくその下を川が流れていた臨場感。そして駐車場。環八の真向かいに繋がっている様子。面倒な歩道橋渡り、さっきの駐車場(環八の向側)の延長線に当たる場所へ。どのブログでも、この辺りが共通して指摘されている。なる程、見るからに緑道。入ったら「笠原公園」だ。明らかに谷戸川の川筋の上だと確信。近接する荒玉水道道路を渡ると、公園から細い道が遠くまで続いており、暗渠化された川筋であることがはっきり分かる。間もなく左折して南下。小田急線の高架を潜る。

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 山野公園。城山通りを渡ると、砧6丁目にある「山野小学校」。投票所の矢印が出ているから今日の都議選の投票所だ。小学校の脇でやっと初めて谷戸川の水流に出会う。感激の瞬間だ。山野公園から城山通りを越える暗渠と、小学校脇からの開渠がつながっているようだ。此処が谷戸川開渠部のスタート点であり、実際の水流という意味で谷戸川の始まりに当たる。地図上でもはっきり川と読み取れる。ここに至るまでが非常に長かった。

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今日は全部で250枚近くの写真を撮ったが、そのうち“水源”探索を撮影したのが実に60枚に達している。出かける前は30分位かかるかと予想していたが、時計見たら歩きはじめから既に2時間を要していた。自分も水源探しに参加できたような気分。他人さまはともかく、自分の目と足で見たり確かめたりできたのは大きな収穫であった。

 さて、山野小脇の谷戸川の流れに接して感動したが、同時にびっくりもした。普通の川ではなく、被せてあった蓋を取り去ったのか、いつでも蓋ができるようにしてあるのか。両岸をコンクリートで打ち固め、その上に鉄道の線路みたいに鉄骨?が上部に取り付けられている。水面が完全に丸見えではなく、物々しい鉄橋の感じだ。小生の筆力では正確に表現できないが、撮ってきた写真を見れば一目瞭然であり、異様な雰囲気ではある。このことに関する記事は見当たらないが、何処かに「ガードレール」云々があったので、このことかも知れない。

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 川沿いの狭い道を歩きながら空腹感を急に覚えた。時計見たら13時半。近所の人に尋ねたらこの先食事できる所はないので、城山通に戻って左に行けばコンビニがあると教えてくれた。大分歩いたらセブンイレブンがあり、祖師ケ谷大蔵駅の真ん前だ。城山通と祖師ケ谷大蔵通の交差点、駅始発のバス停でもあるので賑やか。バス停のベンチに腰掛けて昼食の弁当を食べる。犬ならおそらくマーキングのオシッコするところだが、人間様なので祖師谷駅など周辺の写真をばんばん撮りまくる。

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 これからいよいよ今日の川歩き。先刻の山野小まで戻って、改めて異形の谷戸川の川筋を流れにそっての南進再開。西山野公園。砧土地区画整理委員会名の当公園を設けた趣旨(空き地の確保)の記念石碑。谷川橋。五月橋。区立大蔵保育園。荒玉水道道路。此処にも「砧区画整記念碑」。草山公園。山野橋。砧橋。中の橋。観音公園。土地区画整理組合の記念碑。児童館。塔之下橋。東山野広場。「ゴミや土石などを川に捨てると洪水の原因となりますのでやめましょう」との世田谷区土木部の大きな掲示。“洪水の原因”とは深刻感がただよう。

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 川沿いの細道が行き止まりとなったので、世田谷通に出て迂回して水路に辿り着く。相変わらず線路みたいな川が続く。水流が消えて暗渠となり、コンクリートの上を歩く。ちょっと川筋を見失ったが近くの人に訊いて直ぐ分かる。流れを左折して直ぐ右折。新しく現れた流れには被せが消え普通の水面が見られる。生産緑地地区。南大蔵保育園。美術館通。稲荷橋バス停。砧公園に到着。

 

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 北門?から砧公園に入る。地図では公園内も谷戸川が流れているが、見当たらないので人に訊く。なるほど、つり橋、美術館、西門の三つの方向板が出ている。「つり橋」へ行ったら立派な木造り?の色鮮やかな吊り橋だ。その直下の薄暗いところに、水道管で運ばれてきた谷戸川の水が流れ出ているのが確認できた。流れの復活だ。

 砧公園は広大で世田谷美術館、野球場、サイクリングコース、ファミリーパーク、子供の森、バードサンクチュアリなど何でもあり、大蔵通を隔てた西側には大蔵運動公園がある。日曜日なので区民などで賑わっている。園内を流れる谷戸川に橋が架かり、上流から順に一の橋・二の橋・三の橋・四の橋が続く。都立砧公園案内図。愛犬との散歩コース。西門から砧公園の外へ出る。

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 「四の橋」の近くに貯水池があるようだ。「見えない貯水池」の解説板(地図含む)が掲出されているので、タイトルにつられて覗き込んだ。読み出したら「この公園には、はげしい雨が降った時、たくさんの雨水がいっぺんに「谷頭川(やとうがわ)」へ流れこまないようなしくみがつくってあります。」と書いてある。後でゆっくり見ようとパチリ。 

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 もちろん素早く着目したのは「谷頭川」という川名だ。大分前にネットで調べたときに、谷戸川は谷頭川とも呼ばれる、という文章をみた記憶が蘇ったからだ。帰宅後ネットで調べたが、どうしても見つからなかったので、今この歩記執筆をしながら片っ端から調べてやっと発見した。「砧公園ガイド:きぬたの森の歩き方」の「谷戸川」の項に「公園内を小さな川が流れています。谷頭川とよばれることもあるようです」とある。この記述は当然件の「見えない貯水池」の解説文に依拠していると思われる。なおこの池とは別に、谷戸川浄化施設が地下に設置されているそうである。

 さて砧公園から出て歩きを再開するが、先ず「公園橋」を渡る。高速道路の真上なので多くの車が上下線を突っ走る車の列をパチリ。公園橋から東へ200メートルぐらい歩き、公園から流れ出る谷戸川の最初の橋「一之橋」に辿り着く。ガードレール?のない、水流がよく見える普通の川だ。子供たちが網を持ったり川の中に入って遊んでいる。写真で見たら6人もいる。

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 前記の通り、浄化施設を造ったために谷戸川の水流はきれいになり、魚などの生き物も見られるようになったとの記事があったが、それを裏付ける光景といえよう。庚申橋。二之橋。あれ?公園の中の橋にナンバーが振られていたが、出た後も順番橋のようだ。三之橋(橋名の写真撮りもらしたが橋はあった)。四之橋。五之橋。六之橋。六之橋は護岸工事中。七之橋。公園内のナンバー橋は四までだったが、ここは七までだ。

 東屋風のバス停・岡本もみじが丘。何だ、八之橋も出てきた。結局八番までか。

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 いきなり看板につきあたる。「この緑地は岡本静嘉堂緑地です」。つまりはこれから先は静嘉堂の敷地のようだ。慌ててその先を読むと、午後4時半以降と日曜日は立ち入り禁止とある。もう少し行って様子見ようと進む。二人連れの学生にきいたら正門も閉まってるから出た方がよいと教えてくれた。時計見たらボチボチ午後4時半になるところだ。ちょうど正門だろうか出口があったので急いで退出。「岡本静嘉堂緑地案内図」の看板が立っている。大蔵通に出る。「静嘉堂文庫」バス停。下山橋。

 下山橋での谷戸川と丸子川の合流は見られない。合流点を見ないことには帰れない。通行人に訊いたら 下山橋から静嘉堂緑地の左手を少し行った辺りだと親切に教えてくれた。直ぐに分かったが、合流点に橋はない直進する丸子川に左手から谷戸川がほぼ直角に合流している。合流地点を見ることができてよかった。やはり人に尋ねるのが一番よい。その方についでに新宿か渋谷に出たいがバスの乗り場はどこかもきいて、さっきのバス停「静嘉堂文庫」から二子玉川行きが出ることを知る。幸いすぐにきたバスで二子玉川駅に出て帰宅。久しぶりで二子玉川駅に行ったが、さすがにニコタマはいつ来ても豪華で賑やかな街で、活気に満ちあふれている。

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              谷戸川と丸子川の合流

 

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 今日の川歩きも楽しく面白かった。昨日歩いた「歩記」は翌日のきょう一日で書き上げた。                                                                           

                     (秀樹杉松 85巻/2440号)2017.10.2