秀樹杉松

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葉室 麟『はだれ雪』を読む。「忠臣蔵を独自の視点で切り取った勇気と希望の物語」(www.bookbang.jp)。いつものセリフで恐縮ですが「感動しました」。

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                                葉室麟『はだれ雪』角川書店、2015)

 

 葉室麟作品を30冊も読んだ私ですが、書名だけでは主題や内容はわかりません。この際だから正直白状しますが、魅力的な書名の『花や散るらん』を読もうかと思ってネットで調べたら、赤穂浪士事件がテーマだとわかり、「何だ、忠臣蔵か。それならやめよう」と、図書館からの貸し出しから除外したのでした。

 今回葉室小説読みも締めくくりを迎えたので、大きな遺漏があってはと調べ、『はだれ雪』も忠臣蔵関係だとわかった。忠臣蔵を敬遠して2冊も読まないのはどうかな、と思案し、もう一つは葉室さんならそれなりの内容かもしれないと期待して、読んでみました。そしたら、やはり「読んでよかった!」。

 私の下手な文章では小説の内容や感動をうまく伝えられないので、例によって、ネットに出ている書評を引用します。名作なので情報がいっぱいです。その中から、ブックバン(www.bookbang.jp)を部分引用させていただきます。大変よくまとめられていて、私の言いたいこと、書きたいことも同じです、お読みください。そして、この小説未読の方には、お読みになることをお奨めいたします。感動間違いなしです!

 

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 忠臣蔵を独自の視点で切り取った勇気と希望の物語

  ブックバン(www.bookobang.jp) より (下線や強調は引用者)

 

 葉室麟は2009年に、牢人の雨宮蔵人と妻の咲弥を主人公に、朝廷と幕府の対立として忠臣蔵をとらえた『花や散るらん』を刊行した。それから6年、著者が改めて忠臣蔵を描いた『はだれ雪』は、より深い人間ドラマと、重厚で普遍的なテーマを描いている。(略)

 

 元禄14年。江戸城内で、赤穂藩主の浅野内匠頭が、高家吉良上野介への刃傷に及んだ。側用人柳沢吉保は、原因を究明しないまま内匠頭を切腹させたが、これに反対したのが目付の永井勘解由だった。秘かに切腹前の内匠頭に会った勘解由は、刃傷の理由を聞く。それを知った将軍の綱吉は激怒し、勘解由は扇野藩に流された。扇野藩は、夫が不名誉な死を遂げた紗英に勘解由の身の回りの世話を命じる。(略)

 

 物語は、勘解由と紗英の恋の行方、吉良を狙う大石内蔵助たちの動向、扇野藩の権力抗争が複雑に絡み合っていくので、恋愛小説が好きでも、政治ドラマが好きでも楽しめる。(略)

 

 将軍の意に反して元赤穂浪士を手助けする勘解由、藩の命令に背いて勘解由と大石たちを繋ぐ沙英、天下の法を無視して吉良を討とうとする大石たちは、いずれも組織のルールを無視している。だが勘解由たちは、不正に加担するくらいなら、己の倫理観に殉じる覚悟で問題にぶつかっていく。(略)

 

 タイトルの『はだれ雪』は、まだらに残った雪のことである。潔く散って武士の「誠」を完結させた大石たちが美しく消えた雪なら、待ち構える苦難を前にしても、泥にまみれて生きる道を選んだ勘解由と紗英は、決して美しいとはいえない「はだれ雪」といえる。

 勘解由たちの生きざまは、次第に明らかになる内匠頭の刃傷の理由と響きあい、力強いメッセージをを浮かび上がらせていく。それは厳しい時代を生き抜くためのヒントとなっているので、読むと勇気と希望がもらえるはずだ。   …………………………………………………………………………………………………

 

令外官(りょうげのかん)

 主人公の一人が「永井勘解由」です。時代小説を読むと、蔵人頭や勘解由などが頻繁に出てきます。ネットで調べると、勘解由使(かげゆし=略称:勘解由)は、令外官(りょうげのかん)の一つ。令外官とは、令に定められた以外の官職・官庁という意味で、大宝律令または養老律令の制定後に設置された官

 令外官には、内大臣中納言・参議・勘解由使検非違使蔵人頭摂政・関白・按察使・征夷大将軍などが含まれます。読み方が難しいものが多く、歴史の試験や受験勉強で暗記したものですね。

 

勘解由使(かげゆし=略称:勘解由(かげゆ)

 勘解由使の和名は「とくるよしかんがふるのつかさ」。平安時代初期、地方行政を監査するために設置され、その後、監査の対象は内官(京都の各官職)へと拡大。新旧両官の事務引継ぎの際に不正や争いが絶えないため、事務引継ぎを証明する「勘解由状」(かげゆじょう)の審査に当たった。

 

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            『秀樹杉松』91巻2558号  #blog<hideki-sansho>198

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