葉室 麟『この君なくば』を読む。ーこの君なくば一日もあらじ。懸命に生きる男女の清冽な想い。勤皇佐幕で揺れ動く幕末が舞台。
葉室 麟『この君なくば』(朝日新聞出版、2012)
私は特定の作家の作品を集中的に読むことが多い。その際はできるだけ、発行年順に読むようにしている。最初から全冊読むつもりなら機械的になるが、面白そうなものを選ぶとなれば、やはり書名が気になる。『この君なくば』は、当初読書リストから外した。何となく通俗的な書名に思えたからである。それでも結局、35番目に読んでみることにした。
ところが、まさに「残り物に福あり」で、面白くて一気に読み終えた。そして、いつもの如く「感動しました」。
これだけの内容の長編小説を短文にまとめるのは、とても私の手には負えない。しかし、何か書きたい気持ちを抑えることはできないのです。そこで、ネットにはどういう風に書かれているか、参考までに検索してみた。いっぱいありますが、その中から四つを引用させていただくことにしました。お読みください。そして、小説をも!
こういう整った文章を「コピー」とか「キャッチコピー」ということが、最近ようやくわかりました。漢字で「惹句」ともいうようです。そういえば「コピーライター」という言葉もありますが、文章が得意なので?作家になる方もいるんですね。
流石に名文句ぞろいです。こういう才能がない自分は、羨ましく思います。/ Atelier 秀樹
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⓵密かに慕い続ける乙女、自由奔放に生きる娘。藩命に忠実な高潔の士…。激動の幕末維新を背景に、懸命に生きる男女の清冽な思いを描く長編時代小説。(honto.jp)
⓶伍代藩士の楠瀬譲と栞は互いに惹かれ合う仲だが、譲は藩主の密命を帯びて京の政情を探ることになる。やがて、栞の前には譲に思いを寄せる気丈な女性、五十鈴が現れるーー。激動の幕末維新を背景に、己の思いに忠実に生きた男女の清冽な姿を描く長編時代小説。(publications.asahi.com)
⓷幕末の動乱期、勤王佐幕で時世が沸騰する最中の九州日向にある伍代藩(七万石)が舞台となる作品だ。「この君なくば一日もあらじ」という章句が本書のテーマである。この言葉は、竹林の中に建てられた茅葺の家、此君堂(しくんどう)と称された家に住む民間国学者・檜垣鉄斎の娘・栞が生涯胸中に抱き続けた言葉なのだ。栞は和歌の才能を顕し、晩年の鉄斎の自慢の種であった。その栞の秘めた思いの相手が楠瀬謙、本書の中心人物の一人でもある。(blog.goo.ne.jp)
⓸勤皇佐幕で揺れ動く九州・日向の伍代藩―。軽格の家に生まれた楠瀬譲は、恩師・桧垣鉄斎の娘・栞と互いに惹かれあう仲であった。蘭学に秀でた譲は、藩主・忠継の密命で京の政情を探ることとなる。やがて栞の前には譲に想いを寄せる気丈な娘・五十鈴が現れるが―。激動の幕末維新を背景に、懸命に生きる男女の清冽な想いを描く傑作長篇時代小説。(kinokuniya.co.jp)(books.google.com)
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<Atelier秀樹の眼>
ネット情報の紹介だけだと「他人の褌で相撲」といわれそうなので、私の感想も少し加えます。
◉書名『この君なくば』について
通俗っぽい書名なので当初の読書リストから外した、と書きましたが、それは私の皮相な見方であったのです。主人公の一人、檜垣栞(ひがきしおり)の父・檜垣鉄斎の住む茅葺の家は「此君堂」(しくんどう)と呼ばれ、竹林の中に建てられている。
此君堂の名は、『晋書』王徽之伝にある、竹を愛でた言葉の「なんぞ一日も此の君無かるべけんや」からとったもので、<此君>とは竹の異称だ、とp.9に書かれている。p.28には「この君なくば一日もあらじ」と解かれている。
◉此の小説の最後の文章
竹の葉がそよぐ音にまじって、静かに竹の落ち葉を踏む音が聞こえてきた。栞(しおり)がいつも待ちわびてきた足音だ。
やがて竹林を抜けて譲が近づいてくるのが見えた。引き締まった体に洋服がよく似合っていた。
栞は微笑み、胸の中でつぶやいた。
ーこの君なくば一日もあらじ <完>
◉波乱万丈の展開
この小説は、単純な恋物語では全くありません。幕末、勤皇佐幕の大動乱のなかで、主人公たちは大きな激動に見舞われます。お読みいただければわかりますが、とてつもない展開が見られます。(内容を明かせないのは残念ですが)
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『秀樹杉松』92巻2563号 18-3-9 #blog<hideki-sansho>203
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