秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

子母澤寛『父子鷹』を読む ~ 勝海舟(麟太郎)の父:勝小吉を中心とした小説

 三週間ばかり前に「歴史動かした超弩級時代劇2018年6月12日』」のタイトルで、トラさんとキンさんの歴史的会談を取り上げました。キンさん坂田金時=金太郎)とトラさん(虎ことふうてんの寅)。私のいつもの手法で、本名は伏せ、両人を“父子鷹”に仕立てました。

 一般名詞の意味もありますが、父子鷹といえばやはり、やはり子母澤寛の小説『父子鷹』を連想するでしょう。そこで今回、図書館から借り出して読みました。この小説の新聞連載は1955年5月から1956年8月までで、出版は1956年文藝春秋新社刊です。その後いくつか文庫本が出てますが、私が今回読んだのは2006年刊の講談社文庫・新装版です。

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 子母澤寛(しもざわかん)(1982-1968)は、『新選組始末記』『勝海舟』などで知られ、菊池寛賞も受賞している大作家です。映像化された作品が多く、「座頭市」シリーズ・弥太郎笠花の三度笠父子鷹新選組始末記勝海舟、などでお馴染みです。

 実は、『父子鷹』にはもっと子鷹の勝麟太郎のことが出てくるかと思いきや、文字通り主役は父鷹の「勝小六」でした。自分の筆で下手に書くよりは、やはり信頼抜群のウィキペディアさんの説明に譲ります。

 

→『父子鷹』(おやこだか)は、子母澤寛小説1955年5月から1956年8月まで『読売新聞』夕刊に連載された。勝海舟(麟太郎)の父で型破りな無頼漢として知られた勝小吉を中心として、江戸時代後期旗本や市井の人々の生活を描く。この小説の中で小吉は、酒・女は苦手で博打もやらないが、庶民に人気があり、喧嘩剣法が強く、正義感が強く貧しい「江戸っ子が惚れぼれするお侍」として描かれている。

   <あらすじ>

 小吉は旗本の男谷(おたに)家に生まれたが、三男だったために、小普請役(無役の御家人)の勝家に養子に出された。若い頃、勝家を嫌って養祖母の金を持ち出して出奔、伊勢路で乞食をしていたが、家に連れ戻された。実父・平蔵の運動で就職(お番入)しようとするが、小吉は上役への賄賂を拒み、自ら小普請に甘んじる。実兄・彦四郎もまた小吉を仕官させるために尽力したが、小吉は世話役の雑言に腹を立て殺してしまい、座敷牢に監禁される。

 この頃、子の麟太郎が誕生し、やがて同族の阿茶の局らの運動の甲斐あって、麟太郎は一橋家の嫡男の遊び相手として江戸城に召し出される。

 小吉は本所深川界隈で市井の巾着切りや女行者、女軽業師、大家の旗本やごろつきたちのもめごとに巻き込まれつつも、道具市で刀剣の古物商を始めて徐々に勝家の借金を返していく。

 麒太郎は一橋家嫡男急死のため、城から戻ってくるが、剣術や蘭学などの修行に励む。

(ja.m.wikipedia.org)

 

 次に、この文庫本の出版社(講談社)のカバーに印刷されている解説も紹介します。

上巻)旗本・男谷平蔵の妾腹として、江戸深川に生まれた小吉、微禄の旗本・勝家の養子になった。剣術が強く、根っからの江戸っ子気質で、豪放な性格と面倒見のよさから、周囲の人々に慕われていた。この小吉と妻・お信の間に男の子が生まれた。名付けて麟太郎。幕末から明治の武家政治家・勝海舟である。

下巻)旗本とはいえ、お役にもつかず、市井の庶民のような気楽な暮らしを送る小吉だが、父とは違い向上心の強い麟太郎は、長ずるにつれ文武に才能を示すようになった………。自らが果たし得なかった青雲の志を子に託す父と、その期待に応えようと不断の努力を続ける子。下町を舞台に清冽な親子愛を描く傑作長編。(講談社文庫本新装版カバー)

 

 <編註勝麟太郎の生い立ちと、当時の本所・深川界隈の庶民の生活を知る上で、大変勉強になりました。小説の内容は痛快そのものです。一読の価値あり。

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   『秀樹杉松』95巻2629号 2018-7-5 / hideki-sansho.hatenablog.com #269

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