秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!』を読む(11)  第3章 沖縄ビジョンX

 

 沖縄ビジョンの第3回目です。具体的な提案がなされていますが、スペースの関係上、思い切り省略・割愛していますが、どうぞお読みください。 / Atelier秀樹

 

シンガポールの観光戦略から学べること

 シンガポールは日本でいえば、兵庫県の淡路島より少し大きいくらいの面積なんです。シンガポール沖縄本島の三分の二ぐらいの面積しかありません。沖縄本島の人口は138万人ですが、シンガポールの人口は561万人で、独立した一国としてやってるんです。2017年の国民一人当たりのGDP、つまり国民一人当たりが生み出す経済的付加価値額は57700ドルで、日本の38400ドルよりかなり高く、今、東アジアでナンバーワンです。

 

 シンガポールの経済の柱の一つに、「観光」がしっかりと位置付けられ、シンガポールを訪れる外国人観光客数は、自国民の3倍強の約1800万人です。シンガポールはかねてより観光大国でありましたが、さらにそのエンジンをふかすことになったのが、2つの統合型リゾート(IR)施設が2010年に開業したことです。「リゾート・セントーサ」と「マリーナベイ・サンズ」という施設です。(略)

 

 これらすべては「観光大国」という国の方針に基づいて、政策がフル動員された結果なんですよ。明確なインパクトのある方針は、きっちりと成果が出るんです。シンガポールは資源も何もない小さな島国。国の経済をまわす中心に「観光」を据えたんです。(略)僕が言いたいことは、シンガポールがこんなに素晴らしい観光大国になることができたのであれば、沖縄もできないはずはないということです。沖縄は何よりも、日本人ならではのきめ細かなおもてなしは代えがたい。完全に沖縄の方に優位性があります。あとは実行あるのみです。

 

 沖縄が東洋一の観光リゾートを目標にするなら、シンガポールで やっていることくらいは最低限でもやらなければなりませんし、それ以上のことも当然やらなくてはなりません。そのためには、日本も大胆に一国二制度を導入して、沖縄県全体を特例地域にし、他地域、他国を圧倒するような観光関連政策をガンガン進めるべきです。

 

 このように観光関連政策を進める武器が一国二制度なんですが、重要なことは、国会や日本政府という国自身が、本土の制度と沖縄の制度というまったく異なる二つの制度を作るという手法のほかに、国が沖縄に決定権を与えて、沖縄自らに本土ではできないことをやらせる仕組みを作るという手法もあるということです。

 

 国にわざわざ沖縄の特例制度を作ってもらわなくても、沖縄が自分たちでどんどん思い切った特例制度を作ることの方が断然効果があります国が作った特例制度に乗っかる一国二制度と、沖縄が自ら特例制度を作る一国二制度。沖縄ビジョンXの実現のためには、後者を目指すべきです。

 

沖縄には統合型リゾート(IR)を誘致できるチャンスがある

 沖縄を東洋一の観光リゾートにするには、沖縄自らに特例制度を作る決定権を与えるべきです。もちろん、このやり方は憲法94条の「法律の範囲内での条例制定権」に反しないようにやる必要がありますが。

 

 そしてIRです。観光大国シンガポールの国家方針に照らすと、カジノ施設は人を集める施設としては非常に魅力的です。ギャンブル依存症対策をしっかりやりながら、カジノだけに特定せずに、カジノ施設に国際会議場国際展示場、さらには美術館、そして高級ショッピングモールなどを併設した統合型リゾート施設として、シンガポールの観光拠点にしていこうという方針に転換しました。なぜカジノが必要かといえば、やはりカジノ好きの富裕層は世界にごまんといますので、そのカジノ好きを集めることが目的の一つ。(略)

 

 カジノはギャンブル。カジノ運営はやっぱり儲かるんですよ。日本の公営ギャンブルだってそうです。ただ問題はギャンブル依存症に陥る者も一定数いますし、そこまでいなくても生活費を充てこんでしまうものもいるでしょう。また反社会勢力が介入してくるリスクもあります。ゆえにこれらのリスク対策をしっかりと講じることが大前提です。沖縄が東洋一の観光リゾートとして発展することを考えたとき、シンガポールの観光戦略は大いに参考になります。

 

 今般、日本においてもカジノ実施法が成立しました。沖縄だけにカジノを認める一国二制度ではなく、全国で3箇所、IR営業をみとめるようす。一国二制度でなくても、とにかく沖縄にIRを誘致できるチャンスが誕生しました。このカジノ実施法は、シンガポールの法律を参考にしています。

 もし沖縄にカジノを含むIRが来れば、沖縄にそれなりのお金が入ってきます。少子高齢化時代、税収は伸び悩むなかで役所の歳出は増えます。本来であれば県民に負担を求めるか、行政サービスを削減していくかの選択になりますが、カジノの儲けで財源を補うというやり方は、ある意味少子高齢化時代における自治体運営の有効なモデルとなるかもしれませんね。

………………………………………

『秀樹杉松』104巻2802号 2019.2.3/ hideki-sansho.hatenablog.com #442