秀樹杉松

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真藤順丈『宝島』を読む ~米占領下時代の沖縄に繰り広げられた「戦果アギヤー」

 

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真藤順丈『宝島 HERO's ISLAND 講談社 2018年刊

書店の新刊書コーナーで分厚い小説・真藤順丈『宝島』を見つけました。直木賞受賞作品で沖縄が舞台。ちょうど橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』の読書メモを、本誌『秀樹杉松』に連載中であったので、「沖縄」と「直木賞」のキーワードに惹かれて、早速買い求めて読み始めましたた。ですが、今年は正月から何かと多忙だったので、断続的に時々読む格好となり、1ヶ月以上かけてやっと読みきりました。何しろ、本の厚さが3cm、541ページという大作なのです。

 

正直言って、自分がいかに沖縄(特に本書の舞台となるアメリカ占領統治下)に無知であるかを知らされました。最初のページに“戦果”、3ページ目に“戦果アギヤー”という言葉、が出てきた。先ずはこれでまごついた。全く聞いたことがない。

実際にそんな言葉があるのか、それともこの小説の“造語”なのか?読み進むと、登場人物らの会話から、どうやら、米軍基地から物資を奪って貧しい人や困っている人たちに分け与えること、「戦果をあげる者」という意味らしいことがわかったのです。

<註>

戦果アギヤー(せんかアギヤー)とは、アメリカ統治下時代の沖縄県で発生した略奪行為。「戦果をあげる者」という意味である。 元来は沖縄戦のときに、敵のアメリカ軍陣地から食料等を奪取することを指していた。(Wikipedia

 

登場人物が多い小説は名前を覚えるのに大変ですが、真藤順丈さん(初めて知りました)作の本書は少数の主役たちなので、その点ホッとしました。戦果アギヤーのリーダーわれらがオンちゃん、親友のグスク、弟のレイ、そしてヤマコの4人が主役

 

小説の構成は、

第一部 リューキューの青   1952 ― 1954

第二部 悪霊の踊るシマ    1958 ― 1963

第三部 センカアギヤーの帰還 1965 ― 1972

 

本書の幕開けは敗戦7年後の1952年の沖縄で、主人公たちは若い。オンちゃん20歳、グスク19歳、レイは17歳になったばかりの夏の夜。嘉手納空軍基地(キャンプ・カデナが “戦果”の対象。ここから物語は始まり、沖縄の本土復帰の1972年で終わります。これ以上は書きません。長編小説としても面白いし、何よりも「沖縄問題」を知り・考える恰好の教材にもなります。未読の方にはお勧めします。

 

<註>

R.L.Stevenson『宝島 TREASURE ISLAND』と紛らわしい書名ですが、真藤順丈作の小説の書名は宝島 HERO’s ISLAND』となっています。

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『秀樹杉松』105巻2821号 2019.3.14/ hideki-sansho.hatenablog.com #461