マーティン・ファクラー(Martin Fackler)『吠えない犬』を読む ~ 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール
『古代みちのく101の謎』(鈴木旭著)から25を選び、その「読書メモ」(1~10)を<秀樹杉松>に投稿しました。「さて、次は何を読もうかな」と、新聞の広告欄を眺めたら『吠えない犬』が目についた。「どんな犬物語かな?」とよく見たら、サブタイトルが「安倍政権7年8ヶ月とメディア・コントロール」とあり、著者は外国人。
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本書<はじめに>の冒頭にこうある。
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安倍晋三政権が7年8ヶ月にわたって続く中、「アメとムチ」を駆使したメディア管理は見事なまでに成功した。政権に友好的なメディアには、首相への独占インタビューの機会を折りを見て与える。官邸から積極的に情報を流す。(略)
朝日新聞のように政権に批判的なメディアには、距離を置いて独占取材をほとんど受けない。政権に友好的でないメディアに対しては、「ムチ」を使って痛みを思い知らせる。安倍政権において、こうした「アメとムチ」の手法でメディアをコントロールしてきた中心人物が、菅義偉新首相だ。
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<はじめに>の末尾には、
→「本書は2016年2月に刊行した『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社)に加筆、修正を加えた増補改訂版」とある。
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本書の内容には触れませんが、カバーと帯の写真を掲載し、ご一読をお勧めいたします。ちなみに、著者のFackler氏は本書p.29に「アメリカ国籍をもつ私は、永住権を取得して長らく日本で暮らしている」と書いておられます。「この著者にしてこの本が書けた!」が私の読後感です。カタコトの英語を使わせていただけるなら、本書は私にとって、interesting, exciting, suggestive, timely ,……でした。
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奥付の<著者紹介>によれば
→ 著者のマーティン・ファクラー(Martin Facklar)氏は、AP通信社ニューヨーク本社、東京支局、北京支局の記者、上海支局長。その後ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局を経て、05年ニューヨーク・タイムズ東京支局の記者となり、09年2月から15年まで東京支局長。現在も、ジャーナリストとして活動。
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本書の<終わりに>は、示唆的な文章で結ばれます。
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「メディアの重要な役割の一つに「watch dog」がある。日本では「権力を監視する番犬」とも訳されるが、権力者が不正を働いていないか、監視をする犬ということだ。おかしなことがあれば、すぐに「ワンワン」と吠えて、国民に危険を知らせる。健全な民主主義が機能するためには、この番犬の働きが重要だ」(p.340)
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菅政権の誕生は、日本のメディアの転換期になるかもしれない。それが、良い方向への転換であることを願ってやまない。私も微力ながら、一匹の犬として愛する日本で吠え続けたいと思う」(p.341)
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写真:Atelier秀樹
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秀樹杉松』118巻3681号 2020.11.2 / hideki-sansho.hatenablog.com #721