『眠れないほど面白い空海の生涯』(由良弥生著) を読む ~ (No.1) 著作者:由良弥生さんに注目!
仏教やキリスト教、イスラム教など、宗教に超疎い私。仏教では釈迦、空海、最澄、キリスト教ではイエス・キリスト、ぐらいしか人名が思い浮かばない。空海・最澄といっても、〇〇大師、〇〇宗か直ぐには正確に答えられない。そんな私が今回、空海に関する本:
由良弥生『眠れないほど面白い空海の生涯』(三笠書房 王様文庫 2019年刊) を読み、大きな感動を覚えました。
本ブログ<秀樹杉松>の3号前(1/7)で取り上げた『眠れないほど面白い「密教」の謎』(並木伸一郎著) を読んで、空海(弘法大師・真言密教・真言宗)の生涯を知りたくなったからです。
462ページもある分厚い文庫本ですが、夢中で一気に読みきりました。宗教に関する難解な部分はともかく、全体的にはスラスラ?読めました。
................................................................................
著作者・由良弥生さんの文章は、わかりやすく無駄のない名文です。当然に漢字の多い文章ですが、こまめに仮名が振られています。普通の本は、初出の漢字に仮名をつけたら以下は省略しますが、本書はその都度仮名を振る。ですから「難しい文章を優しく読ませる」のです。
........................................................
また、例えば、菩提心(悟りを求める心)、湖姫こき(イラン系の女子)、陰陽寮おんみょうりょう(天文・暦数・時刻・占いなどに関することをつかさどった役所)、サンスクリット(梵語)、讃岐国さぬきのくに(香川県)などはもとより、能筆(文章を書くのが巧みなこと),官吏(役人・官僚)、廷臣(朝廷につかえる役人)、急使(急ぎの使い)、勅許(天皇の許可)などにも括弧の説明を付けています。
............................................................
そこで、由良弥生さんのプロフィールを見ると、(本書カバー写真のように)「日本や世界の読み物文学に興味をいだき、古典や伝承の追究を続けている。(略)大胆に描写するその巧みな筆致は多くの人に支持され、高い評価を受けている」。
書名に『眠れないほど面白い』を冠した本には、「古事記」「今昔物語」「雨月物語」もある。加えて、『大人もぞっとする・・』『読めば読むほど面白い・・』『身の毛もよだつ・・』『大人もぞっとする・・』など、”タイトルが面白い"。
................................
明治大学政治経済学部卒。出版社勤務を経て編集事務所設立。さまざまな図書の企画・編集及び編集を手がける(d.hatena.ne.jp)、、、。文章のうまさ、読ませる筆致などは、こうした経歴に照らすと「なるほど!」と納得します。
.....................................................
◉ 本書の主題・主人公の空海に先立って、最初に著作者をとりあげたのは、由良弥生さんは注目すべき語り手だと思ったからです。
本稿(No.1)では、本書の<はじめに>を取り上げます。
…………………………
…………………………
<はじめに> 千二百年前、ケタ外れの万能の天才 弘法大師空海はこの時代をどう生きたか
空海は真言密教の体系を言語化した人物。多彩な顔を持ち、前半生は無名、史料は一切なし。私生活は青年時代から入滅までほとんど伝えられていない、どこで何をしていたのかわからない空白の時期も多く、実像の見えにくい男性ひと。(本書p.3)
…………………………………………………………
空海は大学在学中に出会った自分の出会った一沙門から、密教の修法のひとつ、「虚空蔵求聞持法」のあることを教えられると大学を飛び出し、各地の山林などで修行した。一沙門あるしゃもんの名を生涯明かしませんでした。
(略)男の僧ばかりが取り沙汰されていますが、わたしの脳裏を一瞬、女性の影がかすめました。(p.5)。
…………………………………
それで、脳裏をかすめた女性の影を思い切って一沙門 あるしゃもんと想定して
「善道尼」ぜんどうに と名づけ、その女性との物語を混在させながら空海と空海の生きた時代を描いてみました。(p.6)
…………………………………
<編注> 沙門しゃもん
古代インド社会において生じた、仏教・ジャイナ教などヴェーダの宗教でない新しい思想運動における男性修行者。「つとめる人」の意。桑門、勤息、貧道ともいう。のちに仏教では比丘びくと同義になった。(Wikipedia)
………………………………………
<備考1> 天空海 翔馬
大相撲幕内下位に「天空海」という四股名の力士がいますが、ちょっと難読ですね。ネット情報によれば、天空海は「あくあ」と読み、故郷への想いを込めた四股名。
茨城県大洗町出身で、地元の「アクアワールド茨城県大洗水族館」からとった。「空」と「海」は故郷の風景をイメージしている。2010年九州場所のデビュー当時は「豊之浪」(とよのなみ)を名乗ったが、14年に変更した。(Wikipedia)
<備考2> AQUA (アクア)
水を意味するラテン語、現代の標準イタリア語ではacqua。 (Wikipedia)
.......................................
◉ 次号(No.2)は「第一部 一沙門あるしゃもんとの不思議な巡り合わせ」を取り上げます>
……………………………
写真:Atelier秀樹
……………………………
秀樹杉松』120巻3723号 2021.1.16/ hideki-sansho.hatenablog.com #763