秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

『眠れないほど面白い「古事記」』(由良弥生、三笠書房)を読みました ~ ブログ<秀樹杉松>777号記念特集

 

<編注>

本号は<秀樹杉松>の通算3737号に当たります。37ー37と語呂もいいですが、2013年創刊から8年が経過し、いつの間にかこんな号に達したのに感慨を覚えます。また、紙印刷をやめてブログ投稿に切り替え(2017年)から4年で、本号がブログ777号に当たります。

 

7が三つ並んだのはめでたいので、このブログ777号を特集号に仕立て、今回読んだ『眠れないほど面白い「古事記」』(由良弥生著)読書ノートの一部を投稿することにしました。お読みいただければ嬉しい限りです。

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子供の頃、イザナギイザナミ、アマテラス、スサノオ、アマノイワヤト、ヤマトタケルヤマタノオロチオオクニヌシ、イナバノシロウサギ、、、などを学校で教わりました。あれは国民学校初等科(今の小学校)の「修身」の時間だったかな?

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戦争に負けたのが、国民学校3年生の夏。それまでの戦争教育・神話教育がストップし、平和・民主教育に切り替わったので、私の世代は「神話」についても詳しくは知らず、いわば入門編で終わったのでした。第一、「神話」だとは知らず、日本の本当の歴史だと思って、”神妙に” 勉強したのでした。

 

高校に進学して、修身で習ったのは日本の「神話」であることを詳しく知った。大人になってから、『古事記』『日本書紀』関係の本を少し読みましたが、今回改めて、由良弥生『眠れないほど面白い「古事記」』を読みました。1ヶ月前に読んだ『眠れないほど面白い空海の生涯』と同じ著者による、「眠れないほど面白い」シリーズだから。実際 ”面白かった” です。

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<本書の構成>

 

以下の上・中・下巻が収容されています。

 

上巻】1~10 (p.19~150)

1 イザナキととイザナミの誕生 ー 国生みと神生み 

2 黄泉の国への旅立ち ー 妻の変貌と夫の決意

3 アマテラスとスサノオ ー 姉と弟の確執

4 天の岩屋戸の騒動 ー 神々のお祭り騒ぎ

5 ヤマタノオロチ退治スサノオクシナダヒメ

6~10 <略>

中巻】1~6 (p.151~258) <略>

下巻】1~5 (p.259~357) <略>

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上巻から下巻まで全部読みましたが、私の強い関心は上巻に集中しており、特に上記掲載の1~5です。はっきり言えば、スサノオ=タケハヤスサノオノミコト建速須佐之男命中心です。国民学校で習ったスサノオノミコトは、私にとってはヒーローで、今にして思えば私はスサノオ」ファンだったようです。

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本書p.68掲載のイラスト(ヤマタノオロチ

 

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本書p.75掲載のイラスト(イナバノシロウサギ

 

修身で習った中でも、八岐大蛇ヤマタノオロチ退治、因幡イナバ白ウサギ

それになんと言っても天岩屋戸アマノイワヤトの騒動(アマテラスが弟スサノオの非道にたまりかねて隠れてしまった)が、記憶に残っています。

そこで、天の岩屋戸騒動の部分の読書メモを公開します。

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古事記』にはけっこう詳しく書かれているんですね。ご存知の方はレビューに、若い方はお読みいただければ幸いです。80歳未満の方(戦時中の修身教育を受けていない世代)は、参考までお読みください!)

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アマテラスとスサノオ ー 姉と弟の確執

 

<アマテラスの誕生>

イザナキは水から上がると、最後に目と鼻を洗った。左の目を洗うと、まばゆい光に包まれたアマテラスオオミカミ天照大御神が、右の目を洗うとツクヨミノミコト月読命が、鼻を洗うとタケハヤスサノオノミコト(建速須佐男命)が生まれた。タケハヤとは、勇猛迅速の意。

アマテラスは太陽の神、女神。ツクヨミは月の神、男神スサノオは荒々しい性格の神、男神

 

<編注>私は子供の頃は、天照大御神アマテラスオオミカミ)は男だと思っていました。

 

 

スサノオの追放>

スサノオノ命は、自らに委ねられた海原を治めず、いつも泣いていた。「私は寂しいのです。母のいる根の堅洲国へ行きたいのです」。

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本書p.45のイラスト(母を慕って、母のいる根の堅洲国かたすくにを目指すスサノオ

 

<編注>

  1)「スサノオ男神のイザナキから生まれています。それなのにイザナミを母と思って慕うのは、母のない子が母という存在に恋こがれるのと同じと考えられます」(本書p.45)

  2) 「イザナキは男神であるのに一人で次々と子を生んでいますが、黄泉の国よみのくにという異界に行って戻ってきたことで、両性具有の能力を身につけたからだと言う説があります。また日本書紀では、スサノオイザナミの交合で生まれていますので、そうした設定が『古事記』に残ったともいわれます」(本書p.42)

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イザナキ「ならばお前の好きにすればいい。この国に住んではならぬッ」。ただちに天つ神の身分を剥奪し、追放

スサノオ姉の天照にひとこと挨拶してから根の堅洲国に立ち去ろうと、高天原に上っていった。

 

<男装する姉>

アマテラス大御神は、弟のスサノオが自分の元に向かっているのは「よからぬ魂胆があるのでは」と訝り、ただちに武装に取りかかり、男のように髪を結って男装し、背には千本、脇腹には五百本の矢を入れる武具を備えた。

姉上ッ、私は決して姉上に背く心を隠し持っているわけではありませんッ。母上のところに行きたいと言ったら「出て行け」と言われたので、立ち去る前に姉上に伝えたくて、ここにきただけですー。

 

誓約うけいの勝負

スサノオノ命は誓約 (うけい=うらない) で、自分に異心(謀反の心)がないことを明かそうとしたが、あらかじめ掟を決めなかった。アマテラスの息から3人の女神を、弟のスサノオは5人の男神を産んだが、姉弟の同意に至らず、アマテラスは勝った勝ったと引き揚げた。

 

 

天の岩屋戸の騒動 ー 神々のお祭り騒ぎ

 

スサノオの非道>

スサノオ(クソッ)とばかりに勢いに任せて、猛り出した。天照が高天原につくった田の畔を壊し、灌漑用の溝を埋めた、稲穂を馬で踏み荒らした。アマテラスが新嘗祭の新穀を食べる神殿のそこら中に脱糞し、まさに目にあまる振る舞い

 

ある日のこと、スサノオはアマテラスが機織女たちに高天原の神々の衣装を折らせていることを知ると、機織場の屋根に上がって穴をあけ、そこから皮を剥いだ血だらけの馬を投げ込んだ。一人の機織女は驚きのあまり理性を失い、機織り用具の一つ梭(緯=横糸を通す用具)を隠部に突き刺し、それが元で死んでしまった。

 

は弟の荒々しい仕業を見て、すっかり恐ろしくなり、ついに天の岩屋戸(岩穴の戸口)を開くと、その中に身を隠した。そして戸を閉ざし、決して姿を表そうとはしなかった。

 

<知恵者の深謀>

日の神であるアマテラス大御神が姿を隠したので、高天原(天上界)も葦原の中つ国(地上界)も暗闇に包まれ、日の光のない夜だけが続くことになった。その闇に乗じて、悪神や悪霊が大はしゃぎを始め、ありとあらゆる禍が起こり始めた。

 

一人の神が、タカムスヒノ神(高御産巣日神)の子、オモイカネノ神(思金神)に判断を仰いだ。オモイカネは、長鳴鳥(鶏を数多く集めて「コケコッコー」と鳴かせた。日の光を呼ぶ鶏の鳴き声は悪神や悪霊を追い払うからだ。神事に用いる賢木(榊)を天の香具山で掘り出し、賢木の上枝に八尺瓊勾やさかにのまがたまの飾りを吊るし、中枝には八咫鏡やたのかがみ(大きい鏡)をかけ、下枝には白と青とのぬさ飾りを垂らした。

 

この美しく派手に飾った榊の木を、天照の閉じこもった岩屋戸に捧げると、長鳴鳥が泣き、榊の木に飾りつけた鏡がキラキラと輝き、勾玉はサラサラと美しい音を出したアメノコヤネノ命(天児屋命)は天照が岩屋戸の中からお出ましになるよう、祝詞を声高に唱え出した。このとき、神々の中で一番の強力であるタヂカラオノ神(手力男神を陰にひそませた。

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<女神の裸踊り>

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 本書p.57のイラスト(女神の裸踊り

 

天の岩屋戸の前で出番を待っていた女神のアメノウズメノ命(天宇受売命)に、オモイカネノ神「さあ、アメノウズメよ、踊るがいいッ」。アメノウズメ「あいよ」。天の香具山のつる草をタスキにしてかけ、正木の鬘で髪を飾り、手に天香具山の笹の葉を束ねて持って、岩屋戸の前に伏せた桶を、ととん、ととんと足拍子面白く、踊り出した

 

しだいにアメノウズメの心は浮かれていき、しまいには神がかりして狂喜乱舞の有り様。着衣がはだけて、胸乳(乳房)があらわになった。腰に結んだ裳の紐が陰部まで押し下がり、隠部が丸見えになった。このとき、(おおッ・・・)八百万やおよろずの神々は女神の裸踊りの卑猥さにたまげて息を呑んだが、すぐに高天原が揺れ動くほどの大きな笑い声を上げていた。

 

オモイカネ「さあ、もっと囃し立てて、アマテラス大御神にお出まし願おうではないか」。女神の裸踊りに盛り上がった神々は、「いいぞ、いいぞッ。もっといけッ」と囃しだす。長鳴鳥はいっそう騒がしく鳴き、榊の木の勾玉飾りは激しく揺れて美しい音をまき散らす。祭りは最高潮に達した。この光景に、知恵者のオモイカネはにんまりほくそ笑んだ。度を過ごして騒ぐことこそ、アマテラスの興味を引くと考えていたからだ。

 

<アマテラスの勘違い>

自分が閉じこもったことで日の光が消え、真っ暗になったことを皆は悲しんでいるだろうにー。案に相違して、岩屋戸の外は大はしゃぎである。(いったい、何がそんなに面白くて騒いでいるのかしら)不思議に思い、岩屋戸を細めに開けて尋ねた。「これ、アメノウズメ。何がうれしくて暗闇の中でそんなに踊っているの。ほかの神々も、何がそんなに面白くて笑っているの・・・」。「あなた様よりもっと貴い神様がいらしたから、うれしくて遊んでいるのですよ」

 

(なんですって・・・)驚くアマテラスに、別の神が榊の木につけた大きな鏡を差し出した。その鏡に、アマテラス自身の姿が映る。天照は鏡に映る自分の姿をちらっと見て、(この方が、私より貴い神様なの・・・)もう少しよく見てみたいー。そう思って岩屋戸を少し開いて、外へ身を乗り出した、そのときである。陰に潜んでいた強力のタヂカラオノ神がぐいと岩屋戸をこじ開け、アマテラスの手を取って外へ引き出した

 

すっかりアマテラスが岩屋戸の前に姿を現すと、「おおッ」八百万やおよろずの神々からいっせいに歓声が上がった。天上界はむろん、地上界もまばゆいばかりの日の光を取り戻したからだ。こうしてオモイカネノ神の目論見は成功する。八百万の神々は頷き合い、めいめい喜びを口にした。

 

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写真:Atelier秀樹

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『秀樹杉松』120巻3737号 2021.2.17/ hideki-sansho.hatenablog.com #777