坂名に「坂」の字が入らない坂は、 果たして坂ではないのか? 〜 坂研究メモ No.3
前号の「坂研究メモ No.2 福島県の坂」に引き続いて、本号(No.3)では「岩手県の坂」を取り上げる予定でしたが、
坂研究・坂情報構築の基本方針についての、『秀樹杉松』の考え方を、少しまとめて認めることにしました。
”小難しい”文章だと思われるかもしれませんが、坂研究に携わる私の正直な本意、を綴ったものですので、お読みいただければ嬉しいです。
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1)調査・研究の対象
坂自体はあちこちに無数にあるが、対象が「坂名のある坂」に限られるのは、いわば自明の前提でしょう。
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2)しかしブログなどをみると、坂愛好者が自分で坂歩きした坂に、自分で「〇〇坂(仮称)」として発表しているのにお目にかかりました。実績ある坂歩行者・研究家の構築サイトと認められたので、参考資料にしました。
しかし、個人のブログ情報と判断し、今回の「坂リスト」には含めませんでした。(しかし、将来陽の目を見る可能性を秘めているのは、確かかもしれません)
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3)さて、「坂名のある坂」を対象とする場合、文字通り「〇〇坂」(すなわち「坂」の字が含まれる)のに限定するかどうか。一つの方法として文字通り「〇〇坂」に限定する、のはやり方としては了解できるが、「坂の字を含まないのは、坂ではない」という考え方は、客観的な合理性・説得性に欠けるのでは?
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4)本ブログ前号に投稿した「福島県の坂」にも、「坂」の字を含まない坂が含まれています。ネット情報の当該サイトにある坂をそのまま載せたからです。
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◉坂 (福島) ー 23. 滝の湯跡ちゃんこちゃんこ(福島市)。<注>滝の湯=飯坂温泉滝の湯「ちゃんこちゃんこ」=石段(73段)
◉ぶらり坂道 ー 4. 座頭転ばし 6. 観音さがり(時雨塚の坂)18. 道場さがり(蓮池坂)19. 藤井さがり
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5)具体例に照らせば、「坂」の字を含まない「藤井さがり」「三さがり」が入り、「観音さがり」には別名の「時雨塚の坂」が、「道場さがり」には別名の「蓮池坂」が、括弧をつけて併記されています。
「座頭転ばし」と「ちゃんこちゃんこ」(石段の意とか)も、坂として組み込まれています。つまり、「坂」の字は入らないが「〇〇坂」として扱っているのです。「坂」の字は入らないけれど「坂は坂」との考えに基づくもので、極めて当然の対処だと思います。
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6)現地の坂情報では「坂」として扱われているのに、「坂」という字が含まれないからという理由で、坂リストから除外することには、合理性が認められないと私は判断したからです。
この考えは果たして、私の”特殊な考え”でしょうか? 自己主張をあまりしたくはないのですが、現地や地元自治体の考えに沿った、ごく自然の考え方にすぎない、と信じています。
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7)我われ、少なくとも坂学会関係者にあっては、坂名リスト(坂プロフィール)の構築・充実を図る目的は奈辺にあるのか?「坂」という字を含むものに限定という基準を設けて、現地や自治体が坂リストに含めている坂を、自分たちの基準に該当しないからと排除するのは、いささかの合理性もない、と私には思えるのです。
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8)従って本ブログ『秀樹杉松』にあっては、当該現地や自治体の坂情報をそのまま掲載することにします。「坂という字が含まれていなければ、坂として扱わない」は、あまりにも客観性に乏しく、一般には受け入れ難い、身勝手な便宜主義・自縄自縛の狭隘な方針でしかないのでは?
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9)前号で引用したように、坂学会HP「全国坂のプロフィール」には、次のような趣意が謳われています。重要な宣言文なので、再度引用します。
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「数ある全国の坂道(名前のついた坂道)について,でき得る限りのデータを集積して,坂道の研究者・坂の愛好家の便に供したい」
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10)この趣意に掲げる「できる限りのデータを集積して」「坂道の研究者・坂の愛好者の便に供したい」は全く正しく、これを守り発展させるのならともかく、坂学会創設者や先人たちの意図を曖昧にして後退させることは、厳に慎まなければならないと私は考えます。
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写真:Atelier秀樹
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『秀樹杉松』123巻3781号 2021.5.17/ hideki-sansho.hatenablog.com #821