秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

善知鳥坂(うとうざか)の魅力 ~ 坂研究メモNo.14:岩手県の坂 (10)〜「うとう坂」の当て字が多く、何と26もある!

 

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『秀樹杉松』前号(6/23)「坂道散歩 奥州街道石鳥谷宿→日詰郡山宿)」で紹介した通り、岩手県にも「善知鳥坂(うとうざかがあることがわかり、嬉しくなりました。もともと「善知鳥坂」が何となく好きだったから。

 

これまでの調査では見当たらなかったが、「坂道散歩」(8tagarasu.cocolog-nifty.com)で発見できました。やはり信頼度が高い情報ですね。岩手県紫波郡紫波町観光協会」へ電話して確認。

 

ちなみに、当日たまたま件の観光協会に見えておられた方から、南部藩主の命で江戸へ出かけた南部藩士の報告書『行程記』があることを教わりました。ネットで調べたら『増補行程記(新南部叢書特装版)』が、国立国会図書館に所蔵されていることが判明、昨日同図書館で閲覧してきました。(本件については、次号の『秀樹杉松』で取り上げる予定です)

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きのう、「坂」関係の資料調査で国立国会図書館へ行ってきました。メトロ「国会議事堂前駅」下車して外へ出るといきなり「茱萸坂」(ぐみざか)。思わずパチリ。

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新潮国語辞典」によると、

→「うとう」はアイヌ語突起の意。善知鳥(うとう)は、海雀目ウミスズメ科の海鳥。翼の長さ約18cm、頭部から背部にかけて黒茶色。くちばしはだいだい色。生殖時、上くちばしの付け根から突起を生ずる

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横関栄一『江戸の坂 東京の坂』によると、

山や海辺の出崎を、陸奥の方言で「うとう」といい、くちばしが太くて、眼下の肉付きの処が高く出ている鳥を「善知鳥(うとう)」という。山や海浜の出崎を「うとう」というのは、善知鳥の「くちばし」に似た地形だからで、「烏頭」と書くのは、烏の頭の貌に似ているから。

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上掲書「うとう坂の当て字」の項によれば、近畿以東には「うとう坂」と呼ぶ坂が、数えると40もあるそうです。読み方は「うとう」「おとう」の二つだが、あて字の多いのには驚く、と.。

(私=秀樹杉松が数えたら)26通りの漢字が列記されています。(そこで私が便宜グループ分けしてみました。なるほど、いろんな当て字があるもんですね!

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「うとう坂」の当て字

   〜 『江戸の坂 東京の坂』(横関栄一著、ちくま学芸文庫) p.156〜157より。(引用者が便宜グループ分けしました)

 

1) 善知鳥坂

2) 烏頭坂、鵜頭坂、鵜取坂

3) 有東坂、有藤坂、有度坂、有問坂

4) 宇戸坂、宇土坂、宇道坂、宇頭坂、宇当坂、宇都布坂、宇通坂

5) 兎渡坂

6) 羽渡坂

7) ウト坂

8)  謡坂 (うとうざか、うたいざか)、歌坂唄坂雅楽 

9) ウツ坂

10) 御塔坂(おとうざか)

11) 尾頭坂

12) オト坂

 

<註1>

横関栄一氏「うとう坂に、こんなにたくさんの当て字があるということは、うとう坂の本当の意味が、忘れられてしまったからだと思う」(上掲書 p.157)

 

<註2>

ところで、「鳥」と「烏」は見分けが容易ではないですね。カラスは黒くて図体もでかいので、現物ならすぐ区別できますが。

図書館の「レファレンス協同データベース」 (crd.ndl.go.jp)」によると、

【質問】鳥と烏の漢字の成り立ちについて知りたい。

【回答】次の資料に、「カラスは色が黒く、目の部分が判明できないため、鳥の一画を省いてつくる」旨の記述を確認しました。

⚫︎『大漢和辞典 巻7 修正版』(諸橋轍次/著 大修館書店 1985)

⚫︎『どうぶつの漢字用語辞典』(加納喜光/著 東京堂出版2007)

*なるほど、「烏はその色黒く、遠くから見る時は目を見分けることができないから、鳥の時の一画を省いてその意を表す」ですか。

 

<註3>(からす)漢和辞典によると、火部(火篇、れっか、れんが)に属し、鳥部(とりへん)ではないですね。ちなみに、『角川漢和中辞典』の(からす)の「解字」にはこう書かれています。

(とり)から線一本を略した形。からすはからだが黒いので、目がどこにあるかわからないことを表すという。したがって鳥(とり)の部にあるべき字である。(p.663)

 

<註4>鴉 (からす) は鳥部です。鳶・鳩・鶯・鶏・鶴、、、なども。

 

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写真:Atelier秀樹

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『秀樹杉松』123巻3796号 2021.6.25/ hideki-sansho.hatenablog.com #836