秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

「女遊坂」やっと見つかりました!『南部叢書』第1冊「奥々風土記」巻五:閉伊郡 p.131に、ちゃんとありました。~坂研究メモNo.16:岩手県の坂(12)

 

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”ネット情報検索で見つかったはず”の「女遊坂」が、いくら検索しても出てこない。どこに隠れてしまったかと、ここ数日ひとり大騒ぎしました。今日から7月、7月は私の誕生月。「なんとしても今日は見つけよう!」と早朝から記憶をたぐったり、ネット検索をしたり。そして午後になって、やっと発見しました。

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さまざまなネット検索繰り返しても、出てこなかったのは当り前でした。岩手県の坂情報を求めて”苦闘”(実際は楽しんでいる)の毎日。当然ながら、国立国会図書館(NDL)の資料も調べています(同館には何でもあるから)。ちなみに、NDL所蔵の古い資料はデジタル化されており、同館へ出かけなくても自宅でonline利用(閲覧はもとより、コピーも可)できるからです。

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デジタル化されたNDL所蔵図書『南部叢書』(全11冊)を、自宅に居ながらPCで読んでいるわけです。PCで見ているうちに「女遊坂」を見つけたのにネット検索でアクセスしたと勘違いしていたのでした。ちなみに、この『南部叢書』は同刊行会編で昭和2年~4年に発行されています。代表者は太田幸太郎氏ですが、メンバーの一人に金田一京介氏のお名前も見えます。

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それでは、『南部叢書』第1冊「奥々風土記」巻五:閉伊郡 を見てみましょう。「峠」や「坂」が以下のように出てきます。

五輪峠、仙人峠、石塚峠、鳥谷坂、御廟坂、四十八坂、掬峠、石峠、大峠、小峠、級坂、有藝峠、待敷坂、女遊坂、橡木坂、乙部坂、二段野坂、早坂峠、松前坂、、、。

 

有藝峠、待敷坂、女遊坂、橡木坂の後には、「宮古ノ里の西北にあり。みな海辺の道次にて、往還の人、いたく苦む斗の坂路なり」の解説文が続きます。件の「女遊坂」のカナふりが超小さいので、私には虫眼鏡かけても正確な判読ができないので、女房に助けを乞いました。

 

ふりガナは「ヲナツヘ」でした。前号で紹介したアイヌ語の「オナッペ」「オナツィぺ」などとピタリ一致しました。「ツヘ」は詰まると「ッペ」となるのは、前号で考察の通りです。冒頭のカナがア行のオではなく、ワ行のヲになっている。昭和初期の文献の面目躍如ですね。そういえば、学校では女をヲンナ (男はヲトコ)と習いました。

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お騒がせした(一人騒いだ?)「女遊坂」は、以上で幕にします。お読みいただいた方々、ありがとうございました。今でも東北に多く残る、アイヌ語の発音に似せた漢字の意味は、一致しないので注意が必要ですね。「女遊坂」といっても、「女遊び」と関係があるわけではない、のです。

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写真:Atelier秀樹

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『秀樹杉松』123巻3798号 2021.7.1/ hideki-sansho.hatenablog.com #838