本ブログ前々号(10/6)に続き、
佐伯泰英さんの『照降町四季』(てりふりちょうのしき)を取り上げます。全4巻(初詣で・己丑の大火・梅花下駄・一夜の夢)を読了しました。小説の内容紹介は省略し、巻末の<あとがき>に注目しました。
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表紙カバーの<著者紹介>によれば、佐伯泰英さんは1942年生まれの79歳。高齢に達した?佐伯さんの心境が<あとがき>に綴られています。80α歳の私も共鳴するところがあるので、佐伯さんの<あとがき>から抜粋引用します。
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「時代小説に転じて二十一年余、文庫書き下ろしというスタイルでいくつシリーズを書いてきたろうか。ともかく冊数を稼ぐため、ただ次作のことばかりを念頭に読み直すこともなしに書き継いできた。むろんそれは食わんがための手段だ、物語の展開とか構成を考えてのことではない。その結果、シリーズが長くなった。
いちばんの長編シリーズは言わずもがな、
『居眠り磐音』五十一巻だ」(本書p.358)
佐伯泰英『居眠り磐音 江戸双紙』一覧
『居眠り磐音』第1巻「陽炎の辻」と最終第51巻「旅立ちの朝」
『居眠り磐音』18「捨雛」の表紙帯(著者の佐伯泰英さん)
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「ともかく現代物で売れない作家だった私は、時代小説に転じてひたすら長編シリーズを書き飛ばしてきた。
とはいえ来春は八十歳だ。もはやかつての体力、集中力、想像力はない。文庫書き下ろしの最盛期、「二十日で一作」と恥ずかしながら「豪語」して、一年に十六、七作を書いていた力はない」(本書p.359)
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「(略)頭のなかからいったん坂崎磐音を追い出して白紙にしたく、四巻の短い新シリーズ(編注=『照降町四季』のこと)をと考えた。女の職人が主人公の短いシリーズへの挑戦は、私にとって初めての試みと思う。書いてみて私の現在の思考力、体力に見合った四巻であったと思っている」(本書p.360)
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「あちらこちらに書き飛ばし、しゃべり散らしているが、筆者はどんな長編シリーズでも一作作品(『異風者』)でも構成を立てて書き始めることはない。冒頭の光景が浮かんだ瞬間、筆者の活動は始まり、なんとなく落ち着くところで終わる。『照降町四季』の第一巻「初詣で」の始まりが典型的だ」(本書p.360)
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「作者はそれなりに面白いというか、これまでの作風とは異なると思っているが、成果は読者諸氏が厳しく評価をお下しください」(本書p.361)。
(編注=とても面白かったですよ!)
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「令和三年(二〇二一)五月
熱海にて 佐伯泰英」 (本書p.361)
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◉手頃な4巻シリーズです。ご一読をお薦め致します。
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写真:Atelier 秀樹
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『秀樹杉松』125巻3833号 2021.10.11/ hideki-sansho.hatenablog.com #873