秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

津田左右吉『古事記及び日本書紀の研究[完全版] 〜 ”不敬罪"で発禁処分、”皇室の尊厳冒涜”"出版法違反"で禁固刑 〜 を読みました。

 

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人間誰しも「必ず読みたい本」がいくつかあるでしょう。私においては津田左右吉古事記及び日本書紀の研究』でした。先日新聞広告でこの本を発見し、繰り返し読んで理解しました。まさに、歴史的な歴史書ですね!

 

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津田左右吉(つだそうきち)先生(1890~1961)は名前が面白い(失礼)だけでなく、父と祖父の中間ぐらいの年代なので、親近感を持っていました。私の大学入学は1955年ですし、学部も違ったので先生の授業は受けていません。

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津田左右吉は、歴史学者、思想史家。早稲田大学文学部教授記紀古事記日本書紀)を史料批判の観点から研究したことで知られ、日本における実証史学の発展に大きく貢献

ウィキペディア ja.wikipedia.org

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研究業績ー古代史研究

古事記』や『日本書紀』、特に神話関係の部分は後世の潤色が著しいとして史料批判を行なった。その方法は津田の創始ではなく、明治以降の近代実証主義を日本古代史に当てはめ、記紀の成立過程について一つの相当程度合理的な説明を行なった側面が大きい。

 

ただし、同様の原則を古代史に適用することは、直接皇室の歴史を疑うことにつながるゆえに禁忌とされてきた。それを初めて破って、著書の中で近代的な史料批判を全面的に記紀に適用したのが津田だった。(ウィキペディア ja.wikipedia.org

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津田事件 

1939年昭和14年)、津田が『日本書紀』に於ける聖徳太子関連記述についてその実在性を含めて批判的に考察したことについて蓑田胸喜や三井甲之らが、「日本精神東洋文化抹殺論に帰着する悪魔的虚無主義の無比凶悪な思想家」として不敬罪に当たるとして攻撃

 

政府はこれを受けて、1940年(昭和15年)2月に、

古事記及び日本書紀の研究』『神代史の研究』『日本上代史研究』『上代日本の社会及び思想』の4冊を発禁処分とした。津田は同年1月に文部省の要求で早稲田大学教授も辞職させられた。

 

津田と出版元の岩波茂雄は同年3月に「皇室の尊厳を冒涜した」として出版法(第26条)違反で起訴され、1942年昭和17年)5月に  3ヶ月、岩波は2ヶ月、ともに執行猶予2年の判決を受けた。津田は控訴したが、1944年昭和19年)に時効により免訴となった。津田事件また津田左右吉事件ともいう。

 

戦後、津田自身の戦前における弾圧の経験とあいまって学界に迎えられ、皇国史観否定する「津田史観」第二次世界大戦後の日本史学界の政治的主流となり、敗戦による価値観の転換を体現するものとなった。

(以上、ウィキペディア ja.wikipedia.org

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古事記及び日本書紀の研究』[完全版]の構成

 

南原繁(元東京大学総長)は、冒頭序<津田左右吉博士のこと>に、次のように書いています。

博士の研究は、そもそも出版法などに触れるものではない。その研究方法は古典の本文批判である。文献を分析批判し、合理的解釈を与えるという立場である。

裁判になった博士の古典研究にしても、古事記』『日本書紀』は歴史的事実として曖昧であり、物語や神話にすぎないという主張であった。その結果、天皇の神聖性も否定せざるを得ないし、仲哀天皇以前の記述も不確かであるという結論がなされたのである。

右翼や検察側は片言隻句をとらえて攻撃したが、全体を読めば、国を思い、皇室を敬愛する情に満ちているのである。

戦後、博士が早大総長に選ばれた際、東大総長室に訪ねてこられ、「自分はその任でないと思うがどうか」と意見を聴かれた。そのとき私も研究を続けられるほうをお勧めし、博士のご意見と全く一致したことがあった。事実、博士はその後も学究の道一筋に歩まれた。

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総論

 

<第一章>新羅に関する物語 

<第二章>クマソ征討の物語 

<第三章>東国及びエミシに関する物語

 

<第四章>皇子分封の物語

<第五章>崇神天皇垂仁天皇二朝の物語

<第六章>神武天皇東征の物語

 

結論

付録

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写真:Atelier秀樹

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『秀樹杉松』126巻3846号 2021.11.8/ hideki-sansho.hatenablog.com #886