「秀樹杉松」前号で、津田左右吉『古事記及び日本書紀の研究』を取り上げました。続いて『明治維新の研究』を読んでいるところです。私は明治維新には格別関心が高く、これまでも関係の本を何冊も読み、ブログ等にも書いてきました。明治維新といえば、戊辰戦争・薩長・東北・白河以北一山三文、が出てきますが、私はその「東北」出身なんです!
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「白河以北一山三文」(しらかわいほくひとやまさんもん) という言葉、ご存知でしょうか?(短く「一山三文」とも言います)。「一山三文」をネット検索したら、トップに河北新報HP(社長メッセージ)、二番目に図書館の「レファレンス協同データベース」、三番目に「白河以一山三文」の由来と河北新報(4)が出てきました。以下順次取り上げます。
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1)河北新報社 採用情報 ~社長からのメッセージ (河北新報 HP:kahoku.co.jpより)
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「学生のみなさんは、東北地方に根ざした新聞、河北新報にどんなイメージをお持ちでしょうか。
明治維新以来、東北地方は「白河以北一山三文(福島県白河地方から北は、一山に三文の値打ちしかない)」と蔑視されていました。河北新報はあえて「白河以北」から「河北」の字を取って題号とし、「東北振興」と「不羈独立(誰の援助も受けず独立の立場で言論の自由を守る)」を社是に、1897(明治30)年1月17日に創刊されました」(以下略)
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<編注>
私は就職して「新聞係長」を務めたときに、「河北新報」を知りました。もし大学時代に知っていたら、きっと河北新報社を受験したでしょう。なお、宮城県仙台市の『河北新報』は、東北を代表する新聞(いわゆる「東北ブロック紙」)です。
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2)レファレンス協同データベース
図書館の「レファレンスサービス」をご存知でしょうか? ネット検索すると、次のような「ウィキペディア」の説明が出てきます。
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「図書館利用者が学習・研究・調査を目的として、必要な情報・資料などを求めた際に、図書館員が情報そのものあるいはそのために必要とされる資料を検索・提供・回答することによって、これを助ける業務である。(ja.m.wikipedia.org)
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このレファレレンス事例を有効に蓄積・活用するための、「レファレンス協同データベース」
があります。
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レファレンス協同データベース(レファ協)
国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築する調べ物のための検索サービスです。
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明治維新に関係するキーワードの一つ「一山三文」を検索したら、トップの「河北新報」に続いて二番目に出てきたのが、以下にに掲げる <レファレンス協同データベース>の実例です。
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(質問)
「元は蔑視表現である「白河以北一山三文」という言葉が、東北人の反骨精神を表すフレーズとして使用されることがあるという記述を、インターネット上で見かけた。そのような使用法があることを裏付ける資料はあるか」
(回答)(提供館 宮城県図書館)
「下記資料に記載がありました。
資料1 河西秀通「続 東北」中央公論社 2007
白河以北一山三文という言葉がある。(中略)この蔑称に抵抗する意味を込めて、宮城県仙台では『河北新報』が創刊され、旧盛岡藩出身で平民宰相といわれた原敬は「一山」と号したという。(以下省略)」
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「一山三文」をネット検索したら、三番目に出てきたのが次の「白河以北一山三文」の由来と河北新報(4)(plaza.rakuten.co.jp)です。
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「東北を蔑視する言葉。河北新報の題号の由来でもある。旧盛岡藩出身の平民宰相原敬は、自らを「一山」と号した。(略)東北を蔑視する言葉だが、自らその表現を伝える我が東北人には、中央中心の見方に対する明確な外交意識を想起させる言葉でもある」。
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「この蔑称はどのようにして生まれたのか、戊辰戦争で官軍が発したとも言われるが、実証されていない。今のところ「近事評論」の記事「白河以北一山三文」(1878年8月23日)を起源と見るのが最も信頼できる説だ」。
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「往来で日本地図を開き各地の土人形を並べて、「白河以北一山三文」と泣き叫ぶ売り子。聞けば、西南の人形は飛ぶように売れるが、東北地方はたたき売りでもしないと売れない。それが悲しくて泣いているという」。
「そこで、こう諭した。治乱盛衰は天の道、今は人気がある西南もいつ廃れるかわからない。やがて東北の人形が大いに売れる日も来るだろう。すると、売り子は納得したと見え、泣くのをやめて、再び大声で叫んだ。「白河以北一山三文」と」
▪️出典 河西英通『続・東北 異境と原境のあいだ』中央公論新社(中公新書 2007年)
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<編注>
津田左右吉『明治維新の研究』については、次号で取り上げる予定です。
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写真:Atelier秀樹
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『秀樹杉松』126巻3847号 2021.11.9/ hideki-sansho.hatenablog.com #887