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半藤一利『戦争というもの』(PHP研究所刊 2021年5月)
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半藤一利さんの遺作『戦争というもの』を読み、感銘しました。謹んで哀悼の誠を捧げます。
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本書は上記<まえがき>のような14章からなっていますが、8番目の「欲しがりません勝つまでは」の記述を2箇所紹介します。
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秋も深まった昭和17年(1942)11月15日、「大東亜戦争一周年記念 国民決意の標語」の大募集が行われました。朝毎読の三大新聞と大政翼賛会が主催し、情報局が後援というものものしさ。
応募総数32万人のうちから、11月27日に各新聞にいっせいに発表された入選作の、しかも最優秀作のように、大々的に伝えられた標語には、本当に地団駄を踏んで口惜しがった記憶が残っています。なぜなら、それは、
「欲しがりません、勝つまでは」
というもので、しかも麻布区(現港区)笄(こうがい)国民学校5年生の女の子がその作者である、というではありませんか。
この「欲しがりません、勝つまでは」は国民学校5年生作というので爆発的な大人気。銀座といわず、新宿、渋谷、浅草と、盛り場のあちこちらにこの標語のポスターが貼り出されました。(本書p.87〜90)
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ここでまた、さかんに歌った替え歌が思い出されてきました。童謡の「夕焼小焼」のそれです。日が暮れて今日はこれでバイバイというときに、手を振りつつ悪ガキ一同で、しきりに合唱したものでした。
♪夕焼小焼で日が暮れない
山のお寺の鐘鳴らない
戦争はなかなか終わらない
烏もおうちへ帰れない
烏が出世兵士のことであったのはいうまでもありません。兵隊さんは死ぬまで帰れなくなったのです。(本書p.94〜95)
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写真:Atelier秀樹
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『秀樹杉松』126巻3852号 2021.11.19/ hideki-sansho.hatenablog.com #892