『プーチンとロシア革命』〜百年の蹉跌(遠藤良介著)を読む
遠藤良介著『プーチンとロシア革命』〜百年の蹉跌 〜河出書房新社・2022年増補版
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○書店で『プーチンとロシア革命』という本を見つけた。書名からみて”プーチン持ち上げの本”かと思ったが、表紙のカバーや帯を見たらそうでもなさそうだ。
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著者は産経新聞・前モスクワ支局長「遠藤良介」氏で、「歴代最長連続11年半モスクワ特派員を務め、対日制裁で入国禁止リストに入った筆者が、プーチンの歪んだ歴史観とその過ちの真相に迫る!」とある。さらに「プーチンのロシアを知り尽くした遠藤良介氏にしか書けない傑作。ロシアを知るための必読書』とも。
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○本書《前書き》で、著者の遠藤良介氏は、以下のように書いています。
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「日本人記者として歴代最長の連続11年半、モスクワ特派員としてロシア・旧ソ連地域の報道に携わってきた筆者が、プーチンとその体制について、歴史の中に位置付けて究明し、解説しようと試みたものである。」
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「本書は、世界初の社会主義国家・ソ連を誕生させた1917年のロシア革命にまで遡り、読者と共に100年の歴史の旅を行うことに特色がある。……このようなアプローチを取ったのは、ロシアという『異質な国』を理解する上で、歴史と現代を行き来して検証する作業が欠かせないと考えたからである。」
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○巻末の「ウクライナにて」(p.256~263)では、次のように締めくくられています。
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「2022年2月24日、ロシア軍が隣国ウクライナの各地にミサイル攻撃を始め、十数万人といわれる大軍が三方向から一気に攻め込んだ。この一報を聞いたときの衝撃は忘れられない。……いま一つ、今回のウクライナ侵略で予想外だったのは、総合戦力で大きく劣るウクライナ軍の大善戦である。……筆者はこのタイミングをみて4月18日にキーウに入った。」
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「プーチンは、戦争ではなく”特別軍事作戦”と称してウクライナ侵攻を始めた。三、四日でキーウを攻略し、ゼレンスキー政権を転覆させられると踏んでいた。本来のウクライナ人は親露的なはずであり、米欧の傀儡政権であるゼレンスキー政権さえ排除すれば、ウクライナは自然とロシアに回帰する。当初、プーチンはこう思い込んでいたと見られている。」
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「プーチンはウクライナ人の国民性を完全に見誤った。独立と自由に賭けるその気概を理解せず、『偉大なロシア』の再興を身勝手に夢想した。独裁的な統治が長期化し、プーチンに諫言できる側近が誰一人いなくなっていた。そうして起きたのがウクライナ侵略の悲劇に他ならない。」
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「正常な政権交代が望めないロシアを待ち受けるのはクーデターか、革命か。内戦の可能性すら否定できないと筆者は考えている。この戦争が終わってウクライナが復興に歩み出すとき、ロシアは再び歴史的な激震に見舞われているのかもしれない」
〜本書の最終ページ p.263
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<編註>
○本書の副書名(サブタイトル)”百年の蹉跌”に注目。
「蹉跌」(さてつ)=①つまずくこと。②転じて、物事がうまくいかなくなること。しくじること。
~『国語大辞典』(小学館)
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写真 / Atelier秀樹
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『秀樹杉松』133巻3995号 2022.9.29/ hideki-sansho.hatenablog.com #1035