○われわれの学生時代は、マルクスの『資本論』を読んだり語る者が多かったが、彼らの目は輝いていた。一方で当時は、学生運動の混乱期でもあり、いい思い出ばかりではない。また、いわゆる「ノン・ポリ」学生もいた。
○最近の学生や若者で、『資本論』を読む人はどれく位いるでしょうか? 学生時代に読んだ私でも、今は遠い過去の思い出になっている。時代の変遷といえばそれまでだが、本書『ゼロからの資本論』の新聞広告を見て、正直ビックリしたのです。
○今の時代は、マルクスや『資本論』に関する書籍は、書店や新聞広告でもあまり(いや、殆ど?)見かけない。人々の関心もその程度なのでしょうか、と、いろんな思いに駆られながら、やっと読み切りました。
○私の読後感は省略し、本書の「はじめに」を引用します。
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◉ はじめに『資本論と赤いインク』
○「資本主義を批判する者がいなくなり、新自由主義という名の市場原理主義が世界を席巻して、格差が急拡大したのみならず、グローバル資本主義はこの惑星をボロボロにしたのです。……
にもかかわらず、資本主義を正面から批判し、資本主義を乗り越えようと主張する人は、日本には相変わらずほとんどいません。なぜでしょうか?」(p.6)
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○「今、私たちに必要なのは、赤いインクです。そして、私たちが一度は捨ててしまった『資本論』こそが、赤いインクなのです。なぜか?それは『資本論』を読むことで私達はこの社会の不自由を的確に表現できるようになるからです。さらにそれは、失われた自由を回復するための第一歩になるでしょう。」( p,8)
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○『資本論』を読破するのは、かなりの難行です。…でも心配はご無用。本書を”ゼロから”入門書として役立てていただきたい。…近年の研究成果も踏まえて『資本論』を全く新しい視点で―”ゼロから”―読み直し、マルクスの思想を21世紀に生かす道を、一緒に考えていきましょう。そうすることで、資本主義ではない別の社会を想像する力を取り戻すことができるようになるはずです。( p.8~9)
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◉著者の「斎藤幸平」さん
○本書の内容だけではなく、私は著者に注目しています。年齢差は半世紀も離れているが、この若い著者は、私から見れば「秀才」にとどまらず「天才」の学者さんです! 奥付の著者プロフィールによれば、1987年生まれので35歳。現職は東京大学准教授。
「ウィキペディア」によれば、
斎藤幸平氏は日本の哲学者、経済思想家、マルクス主義者。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。フンボルト大学哲学博士。
○本書『ゼロからの資本論』は、「NHK出版新書」として1月10日に発刊されたばかりです。巻末の「NHK出版新書好評既刊」には次のように書かれています。
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あの難解な『資本論』が誰にでもわかるようになる! 話題の俊英がマルクスと共に”資本主義後”の世界を展望する。究極の『資本論』入門書。
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多くの方にお勧めしたい本です。新書版の237ページ、定価は1023円(税込)。
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文と写真=Atelier秀樹
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『秀樹杉松』136巻4059号 2023.1.18/hideki-sansho.hatenablog.com #1099