秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を読みました。国民必読の書?

 

読み終わったばかりの

橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』を取り上げます。橋下氏の真意を知るために、私の下手な説明や要約・評論よりも、本書の文章に即して引用することを基本にします。f:id:hideki-sansho:20190126120130j:plain

     橋下徹『沖縄問題、解決策はこれだ!これで沖縄は再生する』

              (朝日出版社 2018.1刊)

 

 今回は、第1章「沖縄問題に取り組むための心得」の、8節(節分けはされておらず、⚫︎で始まっていますが)のうちの、冒頭2つ⚫︎の文章を取り上げました。橋下氏の言いたいこと、訴えたいことの基本が、わかりやすく具体的に書かれています。 / Atelier秀樹

 

 

第1章 沖縄問題に取り組むための心得

 

⚫︎言いっ放しの沖縄問題

 

 沖縄の米軍基地問題、特に、普天間基地辺野古への移設については、政府と沖縄県が激しくぶつかり合ってきました。…主張が延々とぶつかり合うだけで、巷に溢れる沖縄問題に関する本も、それぞれの立場から、自らの主張を言いっ放して終わるか、最後は「これは難しい問題である」「沖縄のことを日本全体で考えなければならない」と具体策のないお定まりの結論に終始してしまう。これでは永久に沖縄問題は解決しないですよね。

 

 いま、沖縄問題に最も必要なものは一にも二にも解決策です。社会の課題、日本の課題を解決する手段が政治。ですから、沖縄問題については、政治的な解決策を考え、それを実行することが重要なんです。…

 

⚫︎「沖縄問題」は、政治のルールに基づくケンカで解決しよう

 

 政治とは、口で言うばかりの学者やTVのコメンテータが生きている世界とは全く異なります。問題点を指摘するばかりでは意味がない世界。一言でいうと「実行してなんぼ」の世界なんです。

 本書は問題を指摘して終わる数多ある本とは異なり、こうすれば「沖縄問題」を政治的に解決することができるという具体的な提案をします。それは、「政治」「選挙」「投票」という民主主義の力を使って様々な改革を行い、諸課題を解決しながら大阪を実際に動かしてきた僕だからこそ言える、

「沖縄問題」を解決するための政治的な具体案です。

 

 具体案は当然のことながら、単なるアイデアや学者の意見とは異なり、実行するための政治プロセスを伴っていないといけない。ゆえに今回の具体的な提案は、大阪府知事大阪市長、そして国政政党日本維新の会代表も経験した僕が、もし自分が沖縄県知事だとしたら今も紛糾している沖縄問題を、どのように政治的に解決するかという視点から考えたものです。一言でいうと、「本土の国会議員や日本政府とどう政治的にケンカをするか」という視点から戦略・戦術を練りました。

 

 こうした僕の政治手法には、「ケンカ民主主義」だとか「敵を作る幼稚な手法」といった批判がいつも浴びさせられます。識者たちは「落ち着いた冷静な話し合いこそが民主主義だ」ともっともらしいことをいつも言ってきますね。そんなことを言われますけど、僕だって、知事、市長の仕事の9割方は話し合いできっちり解決してきたんです。8年間の知事、市長時代に予算案が否決されたことは一度もないんですから。僕の編成する予算案は、その辺の首長が編成する予算案とは異なり、議会と激烈に対決するような予算案ばかりでした。

 

 議会においては、与党である大阪維新の会はいつも少数派でしたから、必ず他党の賛同を得なければ予算案を通すことはできない状況でした。ですから、他党と話し合いを重ねながら、時には譲歩、妥協をするなかで、予算を成立させていったのです。もちろん予算以外の改革案件のうち1割ほどは、議会と真っ向対決しなければなりませんでした。そのうち、政治的勝利を収めて進めることができたものもあれば、政治的敗北を喫し、否決されたものもありました。敗北の最たるものが、みなさんもご存知の大阪都構想ですね。

 

 当たり前ですけど、話し合いで解決できるものは、話し合いでどんどん解決すればいいんです。しかし、どうしても話し合いでは解決できないものも現実に存在します。その一つが、沖縄問題の中核である米軍基地問題ですね。これは、話し合いで解決できずにズルズルここまできているわけです。

 話し合いで一向に解決できないものを、大人ぶって「話し合いで解決しろ!」と言うのは無責任極まりないと思いませんか。話し合いで解決できないのであれば、ルールに基づいた政治的ケンカで解決するしかない。民主主義とは話し合いで解決することを主軸としつつも、話し合いでどうしても解決できない場合には、政治的な戦いで決着することも当然含んでいます。

 

 僕は政治家時代、さまざまな形で政治的な戦いをしかけて、大阪の改革を進めてきました。その結果、この30~40年間、日本の第二の都市と言われながら衰退著しかった大阪が、今まさに動き出してきたのです。その一例が、2025年大阪万博です。大阪市が6000億円ともいわれる莫大な税金を投じて大失敗した未来都市計画の残滓である巨大な埋立地が、大阪万博の会場になり、さらにはカジノを含む巨大リゾートに生まれ変わろうとしています。政治的な戦い・ケンカには、大きな課題を解決する力があるんです。沖縄問題こそ、本土の国会議員や日本政府と政治的な戦い・ケンカを行なって解決していくべき問題だと思います。

 

 さる2018年10月26日、沖縄県議会において、普天間基地辺野古移設の賛否を問う県民投票を実施する条例が制定され、2019年2月24日に県民投票が実施されることになりました。これは、沖縄が日本政府に揺さぶりをかけるケンカ手法の一つと言ってよいでしょう。県民投票という形のケンカはかなり有効な手段と言えますが、「辺野古移設の賛否」を問うだけではおそらく喧嘩に負けてしまう。それでは、どのような形の県民投票をしかけるべきなのか。そこが肝になると僕はにらんでいます。

 

 本書は、僕が沖縄県で行なった講演会での話を基に加筆し、まとめたものですが、8年間の政治家時代において、国会議員や日本政府はもとより、あらゆる相手と政治的にケンカをしまくってきた僕の政治的ケンカのやり方がいっぱいつまった本です。沖縄問題を解決するために、沖縄は本土の国会議員や日本政府とどのようなように政治的ケンカをしていくべきか、日本の皆さんに向けてはもちろん、玉城デニー沖縄県知事率いる沖縄県庁そして沖縄県議会に向けての指南書として書いたつもりです。  

 

 民主国家においては、政治家の政治的ケンカについての最終権限者と最終責任者は有権者です。ですから、沖縄の有権者も本土の有権者も、この指南書の言わんとするところを十分に理解してもらい、沖縄問題を解決するために、うまく政治家同士をケンカさせて欲しいのです。表面的には、玉城知事や沖縄県庁への指南書のように見えながら、本質的には、玉城知事・沖縄県庁と本土の国会議員・日本政府をうまく政治的にケンカさせるための、有権者向けの指南書だと思っています。

 

 読者の皆さんには、本書を活用して、玉城知事、沖縄県庁、国会議員、日本政府をうまく転がして沖縄問題を解決することに一歩を踏み出してほしい。これまでのような、解決に向かわない言いっ放しの意見や相手への誹謗中傷、そしてそれらに基づいた政治は、いたずらに時間を浪費するばかりで、沖縄県民、ひいては日本国民のためにまったくならない。

 

 沖縄県は日本の中で最も可能性に富む地域だと僕は断言したい。玉置知事・沖縄県庁・沖縄県議会と国会議員・日本政府が一体となって、本書で示した具体的な政治的プロセスを踏むことで、素晴らしい沖縄を作り上げていってほしいです。 

 

『秀樹杉松』103巻2788号 2019-1-26/hideki-sansho.hatenablog.com #428