秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

牧野富太郎『なぜ花は匂うか』(平凡社)を読みました。

 

 

”元植物少年”だったので、牧野富太郎博士の本書を夢中で読みました(何回も!)。

○なぜ花は匂うか、○植物と心中する男、○植物に感謝せよ、○世界的の稀品ムジナモを日本で発見す、○若き日の思い出○松竹梅、○ツバキ、サザンカ、トウツバキ、○仰向け椿、スミレ講釈、○桜、、、、

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「なぜ花は匂うか」(p.9~p.13)から

 

「花は黙っています。それなのに花はなぜあんなに綺麗なのでしょう? なぜあんなに快く匂っているのでしょう?、、、」

 

「美しい花をつけている植物では、花粉の運搬を昆虫に頼んでおきます。美しく咲きそろった大きな花を見、快い香りを訪ねて、昆虫たちはいそいそとお客様になって飛ん来ます。花の御殿の奥座敷には美味しい蜜がたくさん用意してあって、この大切なお客をもてなします」

 

「昆虫は他の花からの花粉をお土産に置いて、また帰りには雄蕊からの花粉を身体中に浴びて別の花へと飛んでゆきます」

 

「松や杉にも花は咲くのです。ただ松や杉の花粉は昆虫の助けをかりないで、風に流れて他の花へ到達します。それゆえ他の花のように、きれいな色や匂いで花の存在を広告する必要がないのです。それで花は咲いても、あなた方の目にはほとんど触れないのです」

 

「同じ一つの花に雌蕊と雄蕊がありながら、なぜ別の花からの花粉を貰わなければならないのでしょうか。花の世界にも道徳があります。雄蕊と雌蕊との間にはちゃんと成熟の時期に遅速があって、人間の世界におけるが如く、近親結婚がほとんど不可能なようになっています」

 

「植物の世界は研究すればするほど面白いことだらけです。もしこの世界に植物がなかったら、山も野原も坊主になり、どんなにか淋しいでしょうし、、、」

 

「好晴の日郊外に出ていろいろな植物を採集し、美しい花の中に隠された複雑な神秘の姿を研究していただきいたと思います。そこには幾多の歓喜と、珍しい発見とがあって、あなた方の若い日の生活に数々の美しい夢を贈物とすることでありましょう」(1944年 82歳)

 

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<写真=Atelier 秀樹>

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『秀樹杉松』141巻4145号2023.5.28

/ hideki-sansho.hatenablog.com.No.1185