前号の葉室麟『星火瞬く』に続いて、『潮騒はるか』を取り上げます。前回の主人公アレクサンダー・シーボルトは、シーボルト事件で日本を追われたシーボルトの息子でしたが、今回登場の「いね」はその姉(腹違い)です。いねの両親は、シーボルトと「たき」ですが、生まれて間もなく、国外追放となった父親と妻子が引き裂かれました。
シーボルトも「いね」も歴史上の重要人物ですが、この作品『潮騒はるか』は、葉室麟が亡くなる年に出版されています。同じ2017年の『天翔ける』が遺作とされていますが、私としてはこの『潮騒はるか』も遺作の一つに数えたいと思います。葉室麟が(結果的に)晩年にシーボルト親子3人を登場させたことに注目したいからです。
因みに、遺作といわれる『天翔ける』を図書館で借りようとしたら、私の住む区立図書館に11冊あるにも関わらず、全部貸出中。「予約」を入れたら「43人待ち」でした。大分待たされそうですが、この遺作を読むと、葉室作品を合計30冊読んだことになり、これにて終了します。葉室さん、数々の感動ありがとうございました。/ Atelier秀樹
『潮騒はるか』(幻冬社、2017) の内容は省略し、主な登場人物だけを紹介します。
菜摘(なつみ)
この小説の主人公で24歳。筑前博多で鍼灸医をしていたが、弟の渡辺誠之輔、博多の眼科医稲葉松庵の娘・千沙と共に、長崎で蘭学を学んでいる夫の佐倉亮のもとにやってきた。
渡辺半兵衛(菜摘の父)
筑前黒田藩の郡方。博多の鍼灸医。長崎で南方医学を学んでいる。
佐久間 亮(菜摘の夫)
渡辺誠之助(菜摘の弟)
千沙(博多の眼科医稲葉松庵の娘)
いね(シーボルトと滝の子)
大きくなって父の門人二宮敬作に外科を、石井宗謙に産科を教わる。石井との間に娘「ただ」をもうける。
佐奈=千紗の姉。加倉啓の妻。
加倉 啓=佐奈の夫
馬渕湖山=藩の儒学者で、和歌に造詣が深い。
松本良順
ポンペの医学伝習生の責任者となって、長崎養生所、医学所の運営に尽力。
ポンペ
オランダ海軍の軍医。長崎に医学校を開設。28歳。
幕府は海防力強化のため、長崎に海軍伝習所を開設し、幕府直参や伝習生を対象に官費でオランダ医学の教育を行った。ボンベは長崎奉行所西役所で西洋医学を伝習。
田代甚五郎=横目付
勝麟太郎(海舟)=海軍伝習所
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『秀樹杉松91巻2556号/18.2.27 #blog<hideki-sansho>196
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