「13連敗に不思議の負けなし」 ~野村克也『巨人軍非常事態宣言』から
「13連敗した高橋由伸監督はやめるべき」(野村) / Atelier秀樹
やっと入手できたので、野村克也『巨人軍非常事態宣言』を読んだ。内容はほぼ予想通りだが、踏み込みも見られる。ノムさんを知らない人は少ないでしょうが、念のため経歴を記せば、→
南海ホークス(現ソフトバンクホークス)捕手。首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回、MVP5回、初の三冠王。70年選手兼任監督、その後ロッテオリオンズ、西武ライオンズに移籍。90年ヤクルトスワローズ監督、4度のリーグ優勝、3度の日本一。99年から3年間阪神タイガース監督、、06年から東北楽天イーグルス監督、10年再び解説者。
野村克也氏は本書の<はじめに>で、次のように巨人軍に言及している。
「5月下旬から7月上旬には、なんと球団新記録となる13連敗を喫した。・・・巨人がこんなチームになってしまったのも、ひとえに現在、過去の首脳陣、上層部の指導不足、教育不足と言える。こういったことを長年怠ってきたツケが一気に出ている。フロントが悪いのか、首脳陣が悪いのか、選手が悪いのか。低迷の原因は何なのか。伝統のある巨人をこんなチームにしてしまった犯人は必ずいるはずだ」
本書の目次は以下の通りです。
第1章 13連敗に不思議の負けなし
第2章 由伸采配のここがダメ
第3章 岐路に立たされる巨人ナイン
第4章 名捕手が出てこないのはなぜか
第5章 ボヤかせるな12球団
第6章 日本野球に明るい未来はあるのか
このうち第1章と第2章から、主な見出しを列記します。
○13連敗した高橋由伸監督はやめるべき
○攻撃力をあてにする監督は勝てない
○4番は阿部慎之助に固定すべき
○自力優勝消滅は、阿部、長野、坂本の不甲斐なさのせい
○球団社長やGMを替えても効果はない
○優勝は金では替えない
○巨人はトレードが下手になった
○生え抜きの若手が育たない巨人
○やはり外野手出身監督はダメだった
○これぞ外野手監督の無策野球
○ヘッドコーチを重視せよ
○松井秀喜は早くユニフォームを着るべき
○謙虚で頭のいい斎藤雅樹コーチは楽しみ
○「野球とは」全員で考えよ。
註1)2リーグ制以降の巨人の歴代監督
○内野手出身・・水原茂(円裕)、川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、原辰徳
○外野手出身・・高橋由伸 *外野手出身は高橋監督が初めて
註2)主な外野手出身監督
別当薫、大沢啓二、関根潤三、高田繁、山本浩二、若松勉、秋山幸二、栗山英樹、真中満、緒方孝市、高橋由伸、金本知憲
註3)今回初めて知ったが、ノムさんは小さい頃から巨人ファンだったそうである。巨人にことさら厳しいのは、根底に「巨人愛」があるからのようで、「そうだったのか」と得心した。なぜ南海球団に入ったのかも、明らかになった。(次項参照)
第4章 名捕手が出てこないのはなぜかー
好きなチームより出られるチームを選べ
「私は小さい頃から巨人ファンだったから、最初は巨人に入りたかった。それに当時は3年間プロ野球の世界で勉強して、母校・峰山高校の野球部の監督になろうと思っていたから、そのためには日本三大監督である水原茂さん(巨人)、三原脩さん(西鉄、現西武)、鶴岡和人さん(南海、現ソフトバンク)の元で野球を勉強できたらという考えもあった」
「しかし、巨人には私よりも1歳年上の藤尾茂さんがいた。強肩、強打、俊足の球界ナンバーワン捕手で、とても勝てるとは思えなかった。内野や外野なら、他のポジションに回ることができるが、捕手は1つしかない。そこで選手名鑑を見ると、残りの11球団で30代の捕手がレギュラーだったのは南海と広島。南海は松井淳さん、広島は門前真佐人さんだった」
「プロに入ってもすぐに試合に出られるわけではない。最低でも3、4年は下積みがいる。そこで南海に絞った。ダメなら次は広島。それでも落ちたら社会人野球の強豪だったカネボウに進もうと思っていた。カネボウには峰山高校の先輩がたくさん入っていたからだ」
「ところが、私より1歳年下の森祗晶は、岐阜高校から巨人に入り、5年目に藤尾さんに勝ってレギュラーになってしまった。「お前、すごいな。よく巨人に行ったな。自信があったのか?」と聞いたら、「自信はなかったけど、なんとかポジションを奪おうと思った」と話していた。(以下略)
(秀樹杉松 85巻/2427号) 2017.9.18