


<秀樹杉松>前々号(9/17)で、菅新内閣メンバーの年齢 ~閣僚21人のうち50代・60代合わせると17人(8割)~ は、「意外に若い」とも言えるが、40代ゼロなので「若いとはいえない」と、ボカしました。あなたはどうお考えでしょうか?
今日は「敬老の日」でもあるので、高齢者を取り上げます。
今日の朝刊1面には「70歳以上 女性の4人に1人」の見出しが踊っています。記事によれば、
◉65歳以上の高齢者 最多の3,617万人、
◉高齢化率(対総人口比)28.7%。(第2次ベビーブーム世代が高齢者になる2040年代には35%を超える見込み)
◉70歳以上 22.1%、女性は25.1%(初めて4人に1人)
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「シルバー」という言葉は、最近あちこちで耳にします。たいがいは「高齢者」の意味で使われます。「年寄・老人・年配者」などはあまり聞かれません。高齢者は、前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳以上)に分けられます。75歳になった知人が、「俺もやっと ”一人前の高齢者”になった」と嘯くほど、高齢化が急速に進んでいます。
「シルバー人材センター」という言葉をご存知でしょうか? このシルバー人材センターは「シルバー」とも略称されます。また、同センター会員として仕事(就業)する高齢者を「シルバー」と呼ぶこともあります。私自身そのシルバーなんですが、時には「シルバーさん」と敬称されることもあり、敬老精神に恐縮したりします。
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「一億総活躍社会」とか「女性活躍社会」などの、大袈裟なスローガン、掛け声の好きな内閣が消え去りました。「高齢化時代」と言われて久しい。私は「高齢者/シルバー活躍社会」到来を提唱・宣言します。
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ちなみに、英和辞典でsilverをひくと、「銀・銀貨、銀色の・銀製」などと出ますが、「高齢者」は出てきません。ウィキペディアja.m.wikipedia.orgなどでしらべると、高齢者の意味で使われるシルバーは和製英語で、シルバーシート、シルバー料金、などに由来するとあります。「いぶし銀」(高齢者が熟達した様相の形容)から、とも書かれています。私は「白髪」も関係ありそうだと思っています。
おなじ『小学館英和中辞典』で silver ageをひくと、1. [ギリシャ神話〕(黄金時代に次ぐ)歴史上の時代 2. (ラテン文学史上の)白銀時代、とあります。
silver ageは、黄金時代ではなく、それに次ぐ白銀時代、を指しているようです。
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人間に例えれば、若い人・現役・第一線・表舞台・日の当たる世代を「金」とすれば、高齢者/シルバー・定年退職者・第二線・舞台裏・日の当たらない世代は「銀」。シルバー就業者は、若い人が敬遠するような、早朝、夜、土曜・日曜・休日の就業も厭わず、元気に働いています。「働く喜び」「働かせてもらう幸せ」を噛み締め、「多少なりとも地域社会へ貢献したい」の気持ちで。
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<金・銀・銅>
ところで、オリンピックの1位・2位・3位には、金・銀・銅メダルが授与されます。この三つのメダルは、どれも最高の名誉です。しかし現実問題として、金メダルは高く評価され、大きく騒がれますが、銀メダル・銅メダルは、ともすれば低く評価されがちです。優勝ではなく、2位・3位なのだから、と言われればそれまででしょうが、嫌な思い出もあります。
過去のオリンピック女子水泳で日本のある選手が、前回の「銀メダル」に続いて「銅メダル」に輝きました。メダルを取ること自体が容易でないのに、連続してメダルを獲得したのだから、大いに讃えられてしかるべきでした。「今度こそ金メダルを!」は国を挙げての期待でしたが、期待が大きすぎたばっかりに、「なんだ、金を逸しただけでなく、前回より下の銅か」の雰囲気が生まれたのでした。
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当時の日本の女子水泳陣は、国民の大きな期待を受けながら、メダルを取れないのが普通でした(もちろん金メダルの選手も出ましたが)。そういった裡にあって、あの選手は一生懸命に頑張って、2大会連続でメダリストに輝いたのですから、国を挙げて祝福すべきだったのです。
それがおかしな雰囲気が醸し出されたのです。ゴール直後の「初めて自分で自分をほめたいと思います」には、大きな衝撃と感動を覚えました。
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それほどに、「金」と「銀・銅」は差別されるのです。念のため、金と銀を比較してみましょう。
通俗的にみても、金(キン)に濁点をつけると銀(ギン)となり、「金の濁ったのが銀」の感じです。黄金(こがね)と白金・白銀(しろがね)と差をつけられ、銀は金に敵いません。
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『学研漢和大字典』によれば、銀は金偏に「艮」です。
「艮」の字義(解字)は、匕(小刀)で目のまわりに、いつまでもとれない入れ墨をすること。一定のところにとどまっていつまでもとれない「痕」(きずあと)や、動かない「根」などは同系の言葉。そこから、「銀」はいつまでもあとをとどめる、腐食しにくい金属。
「銅」は同じく金偏に「同」。「同」の字義・解字は、「四角い板+口(あな)」の会意文字で、板に穴をあけて突き通すことを示す。突き抜ければ通じ、通じれば一つになる。転じて、同一、共同、共通の意となる。そこから、「銅」は穴を開けやすい、柔らかい金属。
*なお、「銅」の字形から「銅は金に同じ」と洒落ますが、そうだとしたら3位入賞者も優勝!
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<ぎんぎんぎらぎら>
本稿を執筆しながら、「金に濁点つけたのが銀」から、童謡♪「ぎんぎんぎらぎら夕日が沈む」 を連想しました。調べたら曲名は「夕日」(葛原しげる作詞、室崎琴月作曲)。夕日はなぜ「ぎんぎんぎらぎら沈むんだろう、と思ってさらに調べました。
「うたことば歳時記」(blog.goo.ne.jp)によると、作詞者の葛原しげる氏は雑誌『月刊教育』で、歌詞の「ぎんぎんぎらぎら」について、次のように回想しています。
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詩は最初「きんきんきらきら」だったのですが、小学二年の長女の「きらきらは澄んでいて、ぎらぎらは濁っている。きらきらは朝日で、夕日はぎらぎら、、、」と教えられ、「ぎんぎんぎらぎら」に変えた。(池田小百合HP「なっとく童謡・唱歌(童謡・唱歌事典)」w.w.w.ne.jp)
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正直びっくりしました。小学2年生の長女が指摘したとされる「きらきらは澄んでいて、ぎらぎらは濁っている」は、私が上記で指摘した「金の濁ったのが銀」と符合したのです。「きらきらは朝日、ぎらぎらは夕日」はすごいですね!「朝日は金、夕日は銀」と表現しています。夕日よりは朝日。朝日は金賞、夕日は銀賞、、、。
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<老>
手許の『学研漢和大字典』によれば、漢字「老」の解字は、「年寄りが腰を曲げて杖をついた様を描いた象形文字」で、体が硬くこわばった年寄り、と出てきます。
なるほど、「腰を曲げて杖をつく」は老人の典型的な特徴でしょうが、これは昔の「老人」に当てはまるとしても、現代の「高齢者/シルバー」には当てはまらないようです。ちゃんとした姿勢で杖もつかずに歩いている人が圧倒的に多いからです。「腰を曲げて杖をついている人」は、あまり見かけないですね。時代は大変化を見せています。
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写真:Atelier秀樹
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『秀樹杉松』116巻3053号 2020.9.21/ hideki-sansho.hatenablog.com #693