秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

森村誠一『老いる意味』を読み、安心したり、共感したり、、、。

 

 

「畑違いの文学部へ入学」してまで?芥川賞直木賞などの文学論稿を書きました。一段落したので、昨日久しぶりで書店に寄ったら、森村誠一さんの新刊本が見つかりました。最近は新聞広告や書店で森村さんの新刊本を見かけないので、「どうしたんだろう?」と気になっていたので、「ああよかった、お元気なんだ!」とうれしくなり、買って帰りました。

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森村誠一さんは、松本清張と並んで大好きな文豪です。夢中で読んでいたので、森村さんの年齢には特に関心はなく、こんな名作を量産するんだから、「俺より十歳ぐらい先輩」だろうと思っていました。

 ところが、本書冒頭の<はじめに 長く生きて思うこと>(p.4)の次の文章に接して、ギクッとしました。

「八十八歳。長く生きればいろいろな病気もした。

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◉「88歳というと、85歳の俺とは3歳違いに過ぎない」。兄貴と同じ昭和8年生まれ。それなのに、どうしてあんなスゴイ作品が書けるんだろう?改めて、心からの感嘆と敬服度を強くした次第です。昭和8年1月生まれのようなので、学年は私の4年先輩に当たるとしても。

<はじめに>の、次の文章も素晴らしい。

定年退職を迎えたあと、それなりの延長戦を過ごして七十歳、八十歳となったときにようやくシニア時代となっていく。その時点で立っているのは、終着駅ではなく「第二の始発駅」である

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中公新書ラクレ」の新刊本老いる意味 うつ、勇気、夢で、表紙カバーには次のようなキャッチコピーが踊っている。

元の私に戻れますか?老人性うつ病を克服した著者の老いの生き方私は百歳まで 現役を続けるつもりだ森村誠一。ベストセラー 15万部突破!

 

この宣伝文句(キャッチコピー)は流石ですね!本の内容をズバリ的確に表現しています。<森村さん最近どうしたんだろう?>との私の疑問が「老人性うつ病を克服した著者」で解明されたのです。また、「百歳まで現役を続けるつもり」も知って、嬉しくなったのです。

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<註>上掲の4写真のうち、最上段は本書・森村誠一『老いる意味』(中公新書ラクレ)の表紙とカバーから、最下段は本書の巻末から、他の2つは表紙カバーからです。

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待望の森村さんの本で、しかも237ページの新書版なので、あっという間に読み切りました。流石は文豪にふさわしい、簡潔・明快な文章でとてもわかりやすい!

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各章は多くの細かい節(100ぐらい)に分かれているが、見出しが大きくて短いので、とても読みやすく、分かりやすい。たくさんの「節」の中から、面白そうな?見出しを少し掲載します。

 

<第1章:私の老人性うつ病との闘い>

うつによって生活のすべてが暗くなった ○書けなくなった作家は「化石」である ○社会から置き去りにされた長い時間 ○私は「元の人間」に戻れるのでしょうか

 

<第2章:老人は、余生に寄り添う>

余生は長い、「余った人生」ではなくなった ○未来に目を向ければ、今の自分が「いちばん若い」 ○人生とは天気のようなものである ○老いに入ることと、老化したかは別問題 ○「人生百年時代」の老人 ○老人たちよ、大志をいだけ

 

<第3章:老人は、死に寄り添う>

女房なしでは「男はつらいよ ○「離婚」を切り出されてもおかしくない ○「仕事の定年」と「人生の定年」は違う ○曲がり角になる七十代 ○八十歳になれば、身辺整理

 

<第4章:老人は、健康に寄り添う>

一日の予定はアバウトなところから始める ○楽しみながらボケを防止する ○「老い」をプラスに考えることも大切

 

<第5章:老人は、明日に向かって夢を見る>

人生をリセットするチャンス ○シニア世代になってこそ「自由な読書」が楽しめる

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森村誠一さんの、うつと認知症との壮絶な闘い(抄)

○八十歳も過ぎれば、自然なことだといわれるかもしれないが、私は作家である。言葉が出てこないことは作家としては致命的だ

 

○老人性うつ病によって、以前のように執筆はできなくなったといっても、創作活動を諦めていたわけではなかった。作家には定年がない。たとえ休筆期間があっても、書く気になれば、いつでも執筆は再開できる。現に私は死ぬまで書き続けるつもりでいたのだ。

 

○頭から言葉が消失していくことなどあってはならない。書けなくなった作家は「化石」である作家にとって、言葉を忘れることは、「死」を意味する。簡単には死ねないのである。(以上、本書p28~29)

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○うつがひどかったときにはとにかく何も食べれなくなり、体重は三十キロ代にまで落ちてしまった。(略)私自身は、死を意識するというよりは、ひたすらもがき苦しんでいた感覚だったが、家族などにはずいぶん心配をかけた。(略)

 

○この頃の記憶にはぼんやりしている部分が多いので、私は三年近い時間を失ったと言えるかもしれない。うつや認知症と闘い、言葉を取り戻そうとはしていたはずだが、それを続けるだけの力を失っていた時期もある。三年のうちの決して短い時間ではなかったのだと思う。(以上、本書p.32-33)

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森村誠一さんの、「百歳まで生き続ける」決意(抄)

 

作家という仕事には定年がない。引退を宣言しないで執筆を続けていれば現役である。(略)私は百歳まで現役を続けるつもりである。(略)生涯現役を貫くつもりだ。百歳まで生き続ける、とうことも決意している

 

もちろん、百歳まで生きると決めたからと言って実際に生きられるかはわからない。しかし、心構えだけはあらかじめ持っておく必要がある。そうでなければ、動揺することもなく百歳を迎えられるはずがないからだ。(以上、本書p.80–81)

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◉本書は間違いなく。高齢者はもとより若い方にも参考になる名著だと思います。

 

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写真:Atelier 秀樹

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『秀樹杉松』125巻3838号 2021.10.24/ hideki-sansho.hatenablog.com #878