秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

朝井まかて著『眩 くらら』を読む。浮世絵師:葛飾北斎「オーイ、オーイ」/ 娘:応為「オーイ、オーイ親父どの 」。

 

今日から「コロナ蔓延防止等重点措置」が東京にも適用されました。これについては、《秀樹杉松》前号(4/10)に私の考えを投稿し、小池都知事の<3つの徹底策>訴えに呼応して、都民一丸となって蔓延を防ぎましょう!と呼びかけました。

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朝井まかて『眩 くらら』 表紙カバー

 / カバー挿画「吉原格子先之図」(太田記念美術館蔵)

 

さて本号では、朝井まかて著『眩 くららを取り上げます。葉室麟『天翔ける』への朝井さんの解説と、彼女の小説『恋歌』を読んで感動し、朝井さんの作品をもう一つ読んでみたくなり、『眩 くらら』に挑戦しました。やっと読み終えましたが、けっこう”悪戦苦闘”でした。

 

私が最も苦手とするのは絵描きであり、犬や猫を描いても園児のそれより下手かもしれません。書道や音楽は大好きなのに、子供の頃から図画工作には苦労しました。絵が不得手なので、絵や絵師などへの興味はほとんどないのです。

今回読んだ朝井まかて著『眩 くらら』は、浮世絵師・葛飾応為北斎の娘)が主人公なので、私には大変でした。

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本書表紙カバー

 

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本書表紙カバー 

 

葛飾北斎は代表的な浮世絵師としてもちろん知ってますが、私の関心と知識は人並み以下の水準です。娘の応為については、さっぱり。北斎の娘さんの画号「応為」は、父親の北斎が娘を「オーイ、オーイ」と呼んだので、それをそのまま号とした、という話を思い出しますが、それ以上は何にも知りませんでした。

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今回ウイキペディアja.m.wikipedia.org)で調べたら、ほかにも次のような由来説も出てきました。

逆に、娘が父親の北斎オーイ、オーイ親父どの」と大津絵節からとって呼んだから、の説。北斎の号の一つ「為一」にあやかり、「為一に応ずる」の意を込めて応為と号した、の説。

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この小説『眩 くらら』は、直接には娘の「応為」が主人公ですが、実態は葛飾北斎・応為の親子がよく描かれています。ウィキペディア(小説でも)によれば、応為が夫婦別れして出戻り、親子は20年近く同居していたと推察されるので、応為は北斎の製作助手も努めたともされている。応為の顎が出ていたので、北斎は「アゴ」とも呼んでいたという。

 

70歳近くまで生きた彼女の作品数が少な過ぎることから、北斎作」とされる作品の中には、実際は応為の作もしくは北斎との共作が相当数ある、と考えれている。また、応為は特に美人画に優れ、北斎の肉筆美人画の代作をしたともいわれているそうで、北斎春画においても、彩色を担当した。

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葛飾応為作品の一覧

吉原格子先之図、夜桜美人図、三曲合奏図 etc.

 

応為が登場する作品

矢代静一北斎漫画』(1973 河出書房新社

○上記戯曲を原作とする映画(1981新藤兼人監督、田中裕子が応為役)

○上記戯曲を演出家宮田慶子が手がける舞台(2019  堺小春が応為役)

杉浦日向子百日紅」漫画作品

○キャサリン・ゴヴィエ『北斎と応為』

朝井まかて『眩 くらら』(2016 新潮社)

○「眩 くらら~北斎の娘~」:上記を原作とするNHKドラマ宮崎あおいが応為役)

○「おんな北斎~天才浮世絵師は、二人いた」(2010 読売テレビ。吉田羊が応為役)

○「HOKUSAI」:映画(2020 S.D.P。 河原れんが応為役)

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<備考>

応為の生没年は不明。(安政2-3年:1855-56 年 67歳。慶応年間まで生きていた可能性もあり)

 

北斎(1760~1849)の代表作 「冨嶽三十六景」「北斎漫画」。

画号:春朗、北斎宗理、北斎、可候、辰政、北斎、戴斗、為一、画狂老人、卍 etc.・・・生涯に30回、頻繁に改号。93回転居。

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以上、『眩 くらら』読書メモというよりも、北斎・応為の紹介に終わりました。(情報は,ウィキペディア ja.m.wikipedia.org何らかのご参考になれば。関心のある方は、ぜひ『眩 くらら(朝井まかて)をお読みください。

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最後に、本書の巻末掲載の「解説」(葉室麟執筆)を紹介します。

 

解説  ー もの作る者は闇を駆ける  葉室麟

 

くらっときた。なぜか、と言えば、人生の疾走感があるからだ。女がひた走る。『冨嶽三十六景』で世間をうならせた絵師、葛飾北斎の娘、お栄である。父親が絵師なら、娘も絵筆をとる。物の道理なのかもしれない。絵師としての名は、葛飾応為(中略)

ところで、言い忘れたことがひとつだけある。傑作です

(「波」2016年4月号より転載、作家)

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.葉室麟の「解説」の次ページに、次のような「謝辞」か掲載されています。

謝辞  朝井まかて

本作『眩』の解説は、2016年に単行本が刊行された際、葉室麟さんが雑誌「波」に寄せてくださった書評です。私にとって、恐縮しつつも口許が綻んでしまうような、そして胸の裡からしみじみと湧き立つものがある評でした。(中略)

やがて葉室さんは病を得られ、それでも生き尽くして、2017年12月にご逝去されました。

このたび、本作の文庫化に際しまして、葉室さんの書評の再録を私は願いました。ご家族はその申し出を、それは快く承諾してくださいました。ご理解を賜りましたことを、衷心より御礼申し上げます。

そして葉室凛さんに感謝と敬愛の念を籠めて、盃を捧げます

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『秀樹杉松』122巻3767号 2021.4.13/ hideki-sansho.hatenablog.com #807