秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

澤田瞳子『星落ちて、なお』(第165回直木賞受賞)を、感動の裡に読み切りました。~著者の澤田瞳子さんは「今最も注目の歴史作家」で、「紫式部の再来」の期待もかかる女流作家です、

 

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直木賞受賞の澤田瞳子『星落ちて、なお』(2021文藝春秋刊)

を読みました。

 

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流石は直木賞他の作品も読みたくなり、『孤鷹の天』(デビュー作。中山義秀文学賞受賞)、『火定』(天平パンデミックを舞台)、『輝山』(直木賞受賞第一作)を早速取り寄せて、読み始めました。

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作品『星落ちて、なお』

 

○『星落ちて、なお』の帯紙には、次のようなキャッチコピーが記されています。

画鬼・河鍋暁斎を父に持った娘・とよの数奇な人生とは ---- 偉大すぎる父親を持ってしまった河鍋とよの一代記

 

 Google Books(books.google.co.jp)にはこうあります。

鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・河鍋暁翠の数奇な人生、、、。父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記

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さて、おそらくどなたにも ”不得手な学科や分野” があろうかと思いますが、私は”図画”が不得意で、人の顔や犬・猫・鶏などを描くのが苦手です。今でも。園児の方がはるかに上手です。人の描いた絵画を見て、どうしてこんなに上手く描けるのか、不思議に思うのです。

 

絵画や芸術に無案内な私にとって、本書の芸術的な側面への理解は不十分ですが、文学作品として高く評価されるのは当然でしょう。文章が素晴らしく、精細かつ分かりやすい。語彙が豊富で表現が巧み。漢字がふんだんに使われている。本書の内容から当然でしょうが、大歓迎です。(漢字の仮名表記が多すぎる、近年の風潮が気になっています)

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本書において、娘・とよ(河鍋晩翠)父・河鍋暁斎ついて、次のように述懐しています。

「とよは全てを知っている。自堕落で気ままだった暁斎が、絵にどれほど真剣に打ち込んでいたか、その絵がかつてどれほど多くの人の目を輝かせ、また喜ばせたのか。彼の絵が移ろいやすい世人から侮られ、謗られ、忘れ去られた今でも、河鍋暁斎という画鬼の恐ろしさ素晴らしさを、自分だけは何もかも承知している。」(本書p.317)

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著者の澤田瞳子さん

 ~「今最も注目の歴史作家」「現代の紫式部になってほしい」

 

それと、著者の「澤田瞳子」さん」を今回初めて知りましたが、すごい作家が出現したものですね!中山義秀文学賞新田次郎文学賞船橋聖一文学賞などを受賞し、直木賞に3回もノミネートされていたんですね(知らぬは私のみ?)。ですから今回は、満を持しての堂々たる直木賞受賞でしょう。おめでとうございます!

 

○本書記載のプロフィールによれば、1977年生まれとあるので、大変お若いですね!文学素人の私には「すごい作家の出現!」としか言えません。因みに、澤田瞳子さんは、時代小説を中心に数々の作品を発表している作家「澤田ふじ子」さんの娘さんなそうです。すごい母娘ですね!

 

直木賞受賞第一作の『輝山』(徳間書店 2021) の帯には「今最も注目の歴史作家」とあります。

 

中山義秀文学賞を受賞したデビュー作『孤鷹の天』(徳間文庫版)「解説」(末國善己)で、同賞選考委員・安倍龍太郎氏の澤田瞳子が紹介されています。、

現代に紫式部が現れた、という感じ。文章もよく、キャラクターも描き分けられ、話の掘り下げかたも上手い」

○『火定』の「解説」にも、安倍龍太郎氏による、澤田瞳子への賛辞・期待コメントが引用されてています。

歴史学や古典文学に造詣が深く、歴史と対峙できる物語を書こうという気概を持った女性作家は、澤田瞳子以外にはいないように思われる。現代の紫式部になってほしいと、満腔の期待を寄せる由縁である」

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『星落ちて、なお』で使われている語彙

 

素晴らしい本書の内容とは別に、豊富な語彙に感動を覚えたので列記します。随分と手間暇かかけましたが、約500語をセレクトできたので、五十音順に発表します。「何でそんな事を」と思われでしょうが、それだけこの小説に ”惚れた” という事でしょうか。

 

著者の語彙活用の調査だけでなく、私自身の漢字スタディも兼ねたものです。できたらお目通しを。『秀樹杉松』本号は奇しくも、ブログ投稿900号に当たりました。紙印刷(ブログ投稿以前)の号数を含めると、3860号に達しました、

 

こうした記念号に澤田瞳子さんの『星落ちて、なお』の語彙調査を披露できるのを、嬉しく思います。では、ご覧ください。

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藍染 あいぞめ、雑種 あいのこ、 あかぎれ足掻く あがく、購う あがなう、崇める あがめる、欠・欠伸 あくび、胡座 あぐら、悪辣 あくらつ、 あご、朝餉 あさげ、嘲笑い あざわらい、与る あずかる、褪せる あせる、綽名 あだな、水黽 あめんぼ(う)、抗う あらがう、 あわい あわせ、安堵 あんど、行燈 あんどん、厭う いとう、暇乞い いとまごい、 いにしえ、位牌 いはい、忌々しい いまいましい、戒め いましめ、応え いらえ、隠居 いんきょ、窺う うかがう、

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迂闊 うかつ、請負 うけおい、蠢く うごめく、堆く うずたかく嘯く うそぶく、袿姿 うちきすがた、団扇 うちわ、疎々しい うとうとしい、宜なう うべなう、倦む うむ呻き うめき、 うるし、狼狽 うろたえ・ろうばい、雲霞 うんか、 えら、襟髪 えりがみ、遠近法 えんきんほう、怨嗟 えんさ、閻魔 えんま、嘔吐 おうと、 懊悩 おうのう 、鷹揚 おうよう、嗚咽 おえつ、晩稲 おくて、熾す おこす/熾る おこる、 おこらせる白粉 おしろい、 おとがい、訪う おとなう、

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覚束ない おぼつかない、阿る おもねる、母屋 おもや、慮る おもんばかる、疎か おろそか、音吐 おんと 魁偉 かいい、懐紙 かいし、掻巻 かいまき、界隈 かいわい、 かえで、 かがみ、餓鬼 がき、覚悟 かくご、匿う かくまう、香しい かぐわしい、翳り かげり、陽炎 かげろう、加減 かげん、瘡蓋 かさぶた、姦しい かしましい、傾ぐ かしぐ、 かすり、 かせ、 かたり、恰好・格好 かっこう、葛藤 かっとう、庇う かばう、 かび、 がまち、喧しい かまびすしい、

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下命 かめい、我慢 がまん、蚊遣り かやり、空筥 からばこ、瓦礫 がれき、 かわや、 かん、癇に障る(かんにさわる)、勘案 かんあん、 かんざし、鑑賞 かんしょう、頑張る がんばる、緩慢 かんまん、観覧 かんらん、奇遇 きぐう、軋む きしむ、気性 きしょう、畸人 きじん、煙管 きせる、気風 きっぷ、 きびす、気儘 きまま、伽羅 きゃら、窮する きゅうする、驚愕 きょうがく、胸襟 きょうきん、恐懼 きょうく、矜持 きょうじ、教鞭 きょうべん、胸裡 きょうり、

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歔欷 きょき=啜り(すすり)泣き・咽び(むせび)泣き雲母 きら、際立つ きわだつ、謹厳 きんげん、銀鼠 ぎんねず、葛蔓 くずかずら、糞真面目 くそまじめ、梔子 くちなし、苦衷 くちゅう、沓脱 くつぬぎ、寛ぎ くつろぎ、 くびき、鞍替え くらがえ、庫裏 くり、鯨飲 げいいん、軽佻 けいちょう、軽佻浮薄 けいちょうふはく、怪訝 けげん、戯作者 げさくしゃ、芥子 けし、牙彫 げちょう、月琴 げっきん、結構 けっこう、激昂 げっこう、潔斎 けっさい、貶す けなす、

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眷骨 けんこつ、見所 けんじょ、剣突 けんつく、 こうがい、交誼 こうぎ、香華 こうげ、煌々 こうこう、巧拙 こうせつ、傲然 ごうぜん、古参 こさん、拗れる こじれる、故人 こじん、 こずえ、骨灰 こっかい・こっぱい、孤独 こどく、託け ことづけ、拒む こばむ、独楽 こま、籠る こもる、御用 ごよう、紙縒 こより、狐狸 こり、狐狸妖怪 こりようかい、凝る こる、強ばる こわばる、権妻 ごんさい、魂魄 こんぱく、棍棒 こんぼう、金輪際 こんりんざい,

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細工 さいく、苛まれる さいなまれる、 さい、裁縫 さいほう、遮る さえぎる、 さえずり、 さお、 さかな、山茶花 サザンカ挿絵 さしえ、雑踏 ざっとう、雑駁 ざっぱく、 ざる、障る さわる、産婆 さんば、叱る しかる、敷居 しきい、師匠 ししょう、地団駄 じだんだ、疾駆 しっく、昵懇 じっこん、嫉妬 しっと、櫛比 しっぴ、執拗 しつよう、設る しつらえる、使丁 してい、老舗 しにせ、篠突く しのつく、飛沫 しぶき、 しま,

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蛇籠 じゃかご、祝儀 しゅうぎ、蒐集 しゅうしゅう、修練 しゅうれん、趣向 しゅこう、襦袢 じゅばん、鍾馗 しょうき、床几 しょうぎ、衝撃 しょうげき、称賛 しょうさん、瀟洒 しょうしゃ、承服 しょうふく、嘱望 しょくぼう、書肆 しょし、所詮 しょせん、世帯 しょたい、汝窯 じょよう、焦れる じれる、 しわ、呻吟 しんぎん、眇める すがめる、逗子 ずし、図書寮 ずしょりょう、 すす、 すすき、濯ぐ すすぐ、 すずり、啜り泣き すすりなき すね、擂る する、狡い ずるい,

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静謐 せいひつ、 せがれ、石鹸 せっけん、刹那 せつな、台詞 せりふ、世話 せわ、詮議 せんぎ、染色 せんしょく、尖塔 せんとう、銭湯・洗湯 せんとう、象嵌 ぞうがん、葬儀 そうぎ、痩躯 そうく、象牙 ぞうげ、相好 そうごう、雑言 ぞうごん、双眸 そうぼう、痩羸 そうるい、束脩 そくしゅう、仄聞 そくぶん、粗忽・楚忽 そこつ、素知らぬ そしらぬ、謗る・譏る そしる、卒塔婆  そとば、素描 そびょう、素振り そぶり、算盤 そろばん、

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体躯 たいく、嫋やか たおやか、 たけなわ、闌ける たける胼胝 たこ・たこずれ、 たすき、三和土 たたき、祟る たたる、奪衣婆 だつえば、塔頭 たっちゅう、閉てる たてる(障子を)、撓める ためる、矯める ためる、*矯(た)めつ眇(すが)めつ躊躇い ためらい、たもと、容易い たやすい、 たらい、旦夕 たんせき、 ちまた、卓袱台 ちゃぶだい、紐帯 ちゅうたい、躊躇  ちゅうちょ、打擲 ちょうちゃく、提灯 ちょうちん、 ちょう、凋落 ちょうらく、猪口 ちょこ、

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縮緬 ちりめん、枕頭 ちんとう、頭蓋 づがい、費え ついえ、 つがい、支える つかえる、閊える つかえる、掴む つかむ、噤む つぐむ、繕う つくろう、旋風 つむじ、釣瓶 つるべ、丁寧 ていねい、泥濘 でいねい、手柄 てがら、手絡 てがら、木偶 でく、恬淡 てんたん、顛末 てんまつ、倒壊 とうかい、憧憬 どうけい、蕩尽 とうじん、動顚 どうてん、滔々たる とうとうたる、道理 どうり、燈籠 とうろう、 とが、禿頭 とくとう、 とぐろ、髑髏 どくろ、 とげ、

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斗酒 としゅ、途端 とたん、咄嗟 とっさ、訥々 とつとつ、轟く とどろく、駑馬 どば、 とりこ、午砲 どん、内緒 ないしょ、等閑 なおざり = 疎か おろそか、長押 なげし、馴染み なじみ、準える なぞらえる、雪崩 なだれ、撫でる なでる、鈍る なまる、生業 なりわい、 にかわ、担う になう、拭う ぬぐう、 ぬめ、労う ねぎらう、寝待月 ねまちづき、脳裏 のうり、熨斗 のし、野面 のずら、長閑 のどか、 のみ、暖簾 のれん、野分 のわき、

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盃洗 はいせん、廃嫡 はいちゃく、配慮 はいりょ、馬鹿 ばか、 はかま、 はな、憚る はばかる、脛巾 はばき、破風 はふ、破門 はもん、孕む はらむ、 はらわた、 はり、罵詈 ばり、罵詈雑言 ばりぞうごん、半纏 はんてん、番頭 ばんとう、般若 はんにゃ、煩悶 はんもん、贔屓 ひいき、檜扇 ひおうぎ、落籍す ひかす、僻目 ひがめ、曳く ひく、 ひげ、美形 びけい、緋鯉 ひごい、鬻ぐ ひさぐ/春を鬻ぐ・売る。柄杓 ひしゃく、美髯 びぜん、肥瘦 ひそう、

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肥立 ひだち、直向 ひたむき、畢竟 ひっきょう、 ひとや、 ひな、被布 ひふ、檜皮葺 ひわだぶき、病臥 びょうが、剽軽 ひょうきん、屏風 びょうぶ、標榜 ひょうぼう、昼餉 ひるげ、 びん、顰蹙 ひんしゅく敏捷 びんしょう、不羈 ふき、馥郁 ふくいく、袱紗 ふくさ、無精 ぶしょう、布施 ふせ、払暁 ふつぎょう、不逞 ふてい、浮薄 ふはく、 ふんどし、偏屈 へんくつ、暮藹 ぼあい、咆哮 ほうこう、呆然 ぼうぜん、放蕩 ほうとう鳳輦 ほうれん、吼える ほえる

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頬骨 ほおぼね、 ほこ、反故 ほご、慕情 ぼじょう、布袋 ほてい、解く ほどく 迸る ほとばしる、 ほのお、褒める ほめる、奔流 ほんりゅう、蒔絵 まきえ、撒く まく、枉げる まげる、 まだら、間違 まちがい、祀り まつり、眼裏 まなうら、 まゆ、眉根 まゆね、 まり、饅頭 まんじゅう、幔幕 まんまく、蜜柑 みかん、微塵 みじん、身形 みなり、瞠る みはる、 むくろ、蝕む むしばむ、霧鐘 むしょう、 むしろ、寧ろ むしろ、咽び泣き むせびなき、無駄 むだ、棟木 むなぎ

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酩酊 めいてい、捲る めくる、滅多 めった、娶る めとる、眩暈 めまい、女郎 めろう、毛氈 もうせん、朦朧 もうろう、耄碌 もうろく、土竜 もぐら、没骨 もっこつ、弄ぶ もてあそぶ、悶着 もんちゃく、薬餌 やくじ、 やから、自棄 やけ、優男 やさおとこ、痩せる やせる、矢筈 やはず、夕餉 ゆうげ、勇猛果敢 ゆうもうかかん、忽せ ゆるがせ、弛み ゆるみ、妖怪 ようかい、羊羹 ようかん、過ぎる よぎる、寄越す よこす、蘇る よみがえる、 よわい

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落魄 らくはく、 らち、落款 らっかん、辣腕 らつわん、螺鈿 らでん、乱暴 らんぼう、乱離 らんり、乱離骨灰 らんりこっかい(ぱい)、立錐の余地 りっすいのよち、柳眉 りゅうび、綸子 りんず、輪郭 りんかく、流罪 るざい、流人 るにん、流浪 るろう、霊験 れいげん、蝋燭 ろうそく、狼狽 ろうばい、老爺 ろうや、陋屋 ろうや、呂律 ろれつ、論駁 ろんばく、蟠り わだかまり わだち、喚く わめく、草鞋 わらじ

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<写真> Atelier秀樹

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『秀樹杉松』126巻3860号 2021.12.7/ hideki-sansho.hatenablog.com #900