秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

今村翔吾さん(「直木賞」受賞)って、凄い作家ですね!~「羽州ぼろ鳶組」シリーズ中心に

 

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 ○「直木賞」受賞作家はいつも注目している。今村翔吾『火喰鳥』の新聞広告を見てすぐ書店へ。受賞作品ではないが、代表作の羽州ぼろ鳶組」シリーズ(全12巻)の最初の3冊を手に入れた。

『火喰鳥』羽州ぼろ鳶組 (ヒクイドリ

『夜哭烏』羽州ぼろ鳶組②(ヨナキガラス)

『九紋龍』羽州ぼろ鳶組③(クモンリュウ

 

 ○初めて目にする「火消」物語。奉書火消、大名火消(八丁火消、所所火消、方角火消)、常火消、町火消(いろは組).......知らないことばかりで面食らった。

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著者・今村翔吾 さん

 

 ○先ず著者の「今村翔吾」さんを取り上げたい。38歳の若さで、よくもこんな素晴らしい小説を書けたものだ! 当然のごとく直木賞を受賞した。38歳での直木賞受賞は若いと思われたので、最近68回(平成元年~令和4年)の直木賞受賞者の受賞時の年齢を調べてみた。結果は、以下の通り。

20代= 2名

30代= 18名

40代= 33名

50代= 20名

60代= 9名

 ○40代、50代が多く、30代は三番目。直感通り、「今村翔吾さんは若くして直木賞受賞」が証明されました。

 

今村翔吾

    ~「公式プロフィール www. ikushimakikaku.co.jp」より

 

1984京都府生まれ。小説家。書店経営者。滋賀県在住。生島企画室所属。

ダンスインストラクター、作曲家、守山市埋蔵文化財調査員を経て作家デビュー。

2016年「狐の城」で、第23回九州さが大衆文学賞大賞「笹沢佐保賞」を受賞。

2018年、デビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶』で、第7回歴史時代作家クラブ・文庫書き下ろし新人賞を受賞。

同年、「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞。「童神」は『童の神』と改題し単行本として刊行。第160回直木賞(2018年下半期)候補にもなった。

2020 『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、第8回野村胡堂文学賞受賞。『じんかん』で第163回直木三十五賞候補、第11回山田風太郎賞を受賞。

2021 羽州ぼろ鳶」シリーズ=第6回吉川英治文庫賞受賞。

2022 「塞王の楯」=第166回直木三十五賞(2021年下半期)受賞

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<編集メモ>

 

1)羽州ぼろ鳶組」シリーズ(全12巻)

 火喰鳥、夜哭烏、九紋龍、鬼煙管、菩薩花、夢胡蝶、狐花火、玉麒麟、双風神、黄金雛、龍大鳳(上)、龍大鳳(下)

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2) 主人公は「松永源吾」=出羽新庄藩の火消頭取。

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3) ”ぼろ鳶組” 

出羽新庄藩の火消は、藩の財政逼迫から揃いの刺子(消防服)がなく、襤褸(ボロ)を着て火事場に赴くため、羽州”ぼろ鳶”」と呼ばれた。しかし、府下でも有数の実力の火消しになったので、「ぼろ鳶」は愛称・尊称ともなった。

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4) 多彩な登場人物

一番組頭の「魁武蔵」、優れた剣士の「鳥越新之介」、博覧強記の知恵袋「加持星十郎」、人気軽業師で女好きの「彦屋」、怪力・元相撲取の「寅次郎」、源吾と同じくらいに仲間達を支えている、数字に強い源吾の妻の「深雪」、などが活躍

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5) 鳶と火消しja.m.wikipedia.orgより)

 

江戸時代の消火は延焼方向の家屋を解体して延焼を防止する破壊消防だったため、民間人のボランティアにより構成される町火消では、本来が建築労働者で家屋構造を熟知し、かつ掛矢や鳶口などの道具の扱いに習熟して素早い家屋解体が可能だった鳶の者が火消衆の主力を占めた。以後火消しは鳶と同義になり、歌舞伎などの江戸文化の題材とされ、鳶の間に独自の火消し文化が発達した。

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6) 解説者の高い評価と期待

 

『火喰鳥』の解説者・細谷正光氏(文芸評論家)

⚫︎ 日本人の強さが託された物語

注目すべき新人が登場した。作者の創作姿勢から、新人らしい気概が伝わってくる。作者のエピソードを創る才能が合わさり、強い説得力が生まれているのだ。

近年、デビューする新人も、即戦力になることを期待され、最初からレベルの高い作品を求められている。その期待に今村将吾は答えた高きハードルを鮮やかに飛び越えた作者が、どこまで翔んでいくのか。出発点となる本書から、リアルタイムで作家のの軌跡を追っていけるとは、こんなに嬉しいことはない。

 

『夜哭烏』の解説者・大矢博子氏(文芸評論家)

⚫︎ 道行く人に薦めたい、魂の物語

いやあ、面白い!読み終わってからもしばらく、興奮が収まらない。魅力的な謎で引っ張られ、手に汗握る展開に翻弄され、時折差し込まれるユーモアに笑い、クライマックスで泣かされ、エピローグでこの上なく癒された。人物と情報と物語とテーマが一体となって読者の胸を滾らせる

本書はキャラクターの魅力だけで読ませる作品ではない。火消しの職業小説としても秀逸なのだ。すごいぞ。本書を片手に家を出て、道行く人ひとりひとりに薦めて回りたい気分だ。

 

『九紋龍』の解説者・池上冬樹(文芸評論家)

⚫︎エンターテイメントの要諦を心得た素晴らしい新人作家

いやあ、一読して驚いた。こんなに達者な新人がいたとは知らなかった。しかも本書は、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(2017年3月)『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組(同7月)』に続く、シリーズの第三弾である。4ヶ月おきにコンスタントに、こんなに質の高い時代小説を送り出せるとは

今村将吾は信じられる。もっと読みたいし、作者がその期待を裏切ることは絶対ないのではないかと思う。

すばらしい新人作家だ。

 

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写真:Atelier秀樹

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『秀樹杉松』132巻3963号 2022.7.24/ hideki-sansho.hatenablog.com #1003