秀樹杉松

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鈴木旭『古代みちのく101の謎』を読む(10=完)~ ◉みちのくとは何かー古代の謎を凝縮するミステリーゾーン /  ◉本シリーズを書き終えて(秀樹杉松)

 

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『古代みちのく101の謎』(鈴木旭著)の読書メモシリーズも、いよいよ本号で終わりにさせていただきます。最終の第101章「みちのくとは何か」で本シリーズを閉じることにいたしました。

末尾には「本シリーズを書き終えて」(Atelier秀樹)を添えました。お読みいただければ、望外の幸せです。

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(本書の表紙と著者略歴)↑

 

101 みちのくとは何か ー古代の謎を凝縮するミステリーゾーン

 

 

1)いまも「みちのく」と呼ばれる東北日本の至る所に残された数々の謎は、少しも明らかになったとは言えない。疑問は膨らみ、ますます混乱が深まっていくばかり。それを解決するには、新しい視点からアプローチし、新しい手法で実体に迫る古代遺跡の調査を丹念に繰り返し、積み重ねていくほかない。そして、いずれの日にか、その全体像を明らかにする時が来るであろう。

 

2)いま言える事は、闇の中に沈んだまま、杳として知れない古代日本の成立事情を解き明かす数々のヒント東北日本には集中的に残されているということである。岩木山、恐山、岩手山鳥海山出羽三山、山寺、磐梯山などに残された「山岳信仰」は何を意味するのか。法理だけでは解明できない部分が多すぎる。

 

3)山岳信仰、巨石文化、岩石文様、ピラミッド ー「意味不明」のまま、放置されている謎は数限りなくある。そして、いずれも縄文文化と結びつくことが判明しているにも関わらず、ほとんど手付かずのままに放置されているのである。

 

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4)ようやく、黒又山ピラミッドの調査が進み、それが「半自然半人工の山」であることが判明した。しかも、一体だけが孤立して存在するのではなく、周囲の山々、大湯環状列石などを周辺施設として取り込み、広大な地域に広がるピラミッドコムプレックス(複合体)となっている様子が見えてきた。

 

5)ピラミッドとは、縄文時代(または続縄文時代)における古代山岳祭祀遺跡であり、祭祀中心の信仰社会をなす縄文社会にとって欠くことのできない中心施設になっていることが判明した。今まで縄文文化の所産として確定している土器・石器ばかりか、意味不明の土偶、石造仏、大湯環状列石などのストンーサークルを黒又山ピラミッドを中心にして見直していくと、少しずつ謎の部分が氷解していくのである。

 

6)牛歩の如く、亀の歩みの如く、ささやかな一歩に過ぎないが、着実に謎の解明は進行している。みちのく東北は古代の謎を集中的に体現するミステリー・ゾーンをなしている。だからこそ、逆に古代の謎を解くヒントとなるキーワードが豊富に用意されている。みちのく東北は現代日本の中で最も古代に近いところに位置していると言ってもよいのである。

 

7)その解明が進めば、必ず日本の原点を指し示してくれるはずである。

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『古代みちのく101の謎』(鈴木旭)を読む (1~10) を書き終えて / Atelier秀樹

 

1)東北出身の私は、鈴木旭氏の著作『みちのく101の謎』を興味深く読み、克明に読書メモを取りました。とても勉強になり、感動を覚えたので、その一部でもブログ<秀樹杉松>で公開し、東北出身者はもとより、多くの方々に読んでいただければと、10回シリーズにまとめました。この私の読書メモをきっかけに、名著『古代みちのく101の謎』(鈴木旭)をお読みいただければ幸甚です。

 

2)本書の書名のように、著者は「みちのくの謎」を101章にまとめてありますが、私はこの中の25章に限って本シリーで取り上げました。研究者ではないが、いっぱしの東北・みちのく出身者としての歴史への関心を持っています。そこで今回は、101の中から自分の関心が高い25(4分の1)を選んだ次第です。

 

3)本書の終章の見出しは、101 みちのくとは何か ー 古代の謎を凝縮するミステリーゾーン となっています。さらに文中で、以下のように指摘されています。

杳として知れない古代日本の成立事情を解き明かす数々のヒントが、東北日本には集中的に残されている」

「古代の謎を解くヒントとなるキーワードが豊富に用意されている。みちのく東北は現代日本の中で最も古代に近いところに位置していると言ってもよいのである」

 

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4)このように、私が本シリーズで取り上げなかった大きな謎も、幾つも書かれています。研究論稿ではないので、私の関心が高いものに絞って、本書の4分の1に焦点を当てました。これまで読んだり考えたりした以上に、東北日本の歴史の深さ、日本全体の古代史に占める広がりと重さを知りました。

 

 

5)子供の頃の思い出も絡み、(幼稚で月並みかもしれませんが)やはり、「キリストの墓」、「ナニャドヤラ」(盆踊り)、「義経北行伝説」などには、非常に強く惹かれます。場所的にも生まれ故郷から遠くないからでもあります。もしも自分が歴史学を専攻していたら、「俺もいっぱしのみちのく研究者になっていたかな?」

 

6)加えて「前九年の役」など国府軍(源氏)と戦った、陸奥国奥六郡を治めた俘囚長:安倍頼時と、その子安倍貞任・宗任兄弟などにも、当然に大きな関心を持っています。特に近年になって、<安倍晋太郎・晋三氏は安倍宗任の末裔>説が伝えられています。特に安倍晋三氏が「安倍宗任の末裔」だと公言し、先祖参拝(青森県の行動もあり、注目しています。

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7)紛争・戦争が絶えず、勝者と敗者の闘争が展開された。勝者は敗者の存在と記憶・記録を抹殺して、勝者の歴史を作り上げる。そういう面から考察すれば、蝦夷」と蔑まされた、みちのく・東北日本は“敗者の主役”で、<征夷>の対象とされてきた。

 

8)本書著者の鈴木哲氏は、表紙カバーの記載によると、山形県出身のようです。東北出身で歴史研究者の次の文章で本稿・本シリーズの締めとします。

「いまも「みちのく」と呼ばれる東北日本の至る所に残された数々の謎は、少しも明らかになったとは言えない。新しい視点からアプローチし、新しい手法で実体に迫る古代遺跡の調査を丹念に繰り返し、積み重ねていくほかない。そして、いずれの日にか、その全体像を明らかにする時が来るであろう 

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写真:Atelier 秀樹

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秀樹杉松』117巻3679号 2020.10.29/ hideki-sansho.hatenablog.com #719