秀樹杉松

祖父と孫、禾と木、松と杉

小泉 悠 著『ウクライナ戦争』(ちくま新書)を読む ~ 今、”必読の本”でしょう。

 

 

 ○私が読むのは、大体は”面白くて為になる本”ですが、時には難しくて為になる本 にも挑みます。3日ぐらい前でしたか、新聞の広告欄に載っていた新刊本

ウクライナ戦争』(小泉 悠著、ちくま新書) に気づき、早速購入。

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 ○本書は以下の構成からなっています。出たばかりの本なので、若干紹介させていただきます。

 

小泉悠 著『ウクライナ戦争』ちくま新書

 ○第1章 2021年春の軍事的危機 2021年1月~5月

 ○第2章 開戦前夜 2021年9月~2022年2月21日

 ○第3章「特別軍事作戦」2022年2月24日~7月

 ○第4章 転機を迎える第二次ロシア・ウクライナ戦争 2022年8月~

 ○第5章 この戦争をどう理解するか

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著者:小泉 悠氏のプロフィール(本書カバー)

           <新聞広告>
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著者の小泉悠氏は、本書「おわりに」(p.229)で「これまでの議論を総括するとともに、今後に関する若干の展望や、筆者の意見を述べてみたい」として、以下の三点が書かれています。

 

「古い戦争」としての第二次ロシア・ウクライナ戦争

 

 ○第一にこの戦争は極めて古典的な様相を呈する「古い戦争」である。……ハイテク技術の活用、情報戦や内通者の手引きに代表される非軍事的闘争手段が用いられていることはたしかであり、それらはそれぞれに大きな効果を発揮している。

 しかし、戦争全体の趨勢に大きな影響を及ぼしたのは、侵略に対するウクライナ国民の抗戦意志、兵力の動員能力、火力の多寡といった、より古典的な要素であった。………

 

逃れられない核の呪縛

 

 ○これに関する第二点として、核抑止は依然として大国の行動を強く縛っている、ということを今回の戦争は明確に示した。……核兵器が人類の破滅にさえ繋がりかねない破壊力を持ち、人類が暴力に対して脆弱な物理的存在である以上、その恐怖は究極の抑止力として機能する(してしまう)のである。………

 

主体的な議論の必要性

 

 ○第三にこの戦争は「どっちもどっち」と片づけられるものではない。………

この戦争の第一義的な責任はロシアにある。その動機は大国間のパワーバランスに対する懸念であったのかもしれないし、あるいはプーチン民族主義的な野望であったのかもしれないが、一方的な暴力行使に及んだ側であることには変わりはない。

 

 開戦時に引き起こされた多くの虐殺、拷問、性的暴行などについては述べるまでもないだろう

 

 ○この点を明確に踏まえることなしにただ戦闘が停止されればそれで「解決」になるという態度は否定されなければならない。……日本としてはこの戦争を我が事として捉え、大国の侵略が成功したという事例を残さないように努力すべきではないか。……

 

 軍事援助は難しいとしても、難民への生活支援、都市の再建、地雷除去など、できることは少なくないはずだ。

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ウクライナ戦争」を知り理解するために、恰好の本だと思います。それにとどまらず、「戦争」というものを考える上で、勉強になる貴重な本だと確信します。多くの人に読まれてほしいです。

 

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文と写真=Atelier秀樹

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『秀樹杉松』136巻4045号 2022.12.13/ hideki-sansho.hatenablog.com #1085